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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶と石榴石
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箱の中身は…

次で4章は終わりでしょうか?←聞くな

ここで終わらせた方が霧がいい気がする気がしないでもないんですが、5章は伊織ちゃんのお披露目編ですからね。少しだけ補足としておきたいのですよね。

あとニコラウスさんとライヒアルトさんの後見人コンビが大人気なので、もうちょっと登場させて欲しいと言う声に応えて(*´ω`*)

「……オリ様、イオリ様…。イオリ様。」


「…う、ぅん…?」


フランツィスカに揺り起こされて、伊織は身体を起こす。フランツィスカがホッとした様に床に座り込んた。

部屋にはニコラウスとライヒアルト、ギルベルトが戻ってきており、伊織が目覚めた事に胸を撫で下ろす。


「イオリ様も目覚めないのかと…私、気が気ではありませんでしたわ。」


「…うん、ごめんね。…箱、開ける方法が解ったんだ。ナイフ…持ってきて。」


「ナイフとは、穏やかではないですね。何に使うんですか?」


ギルベルトが座り込んだフランツィスカに手を貸しながら、訝しげに問い掛ける。

伊織はヴィルフリート横に座り直して、手を握った。触れた手は冷たい。


「いいから、ナイフを…」


「これで良ければ、お使いください。」


フランツィスカが隠していたナイフを伊織に差し出し、伊織はナイフを受け取ってごくりと生唾を飲み込む。

ヴィルフリートの手を離し、受け取ったナイフで自分の親指を少し傷つける。続いてヴィルフリートの親指にも少し傷を付けて、ブレスレットに血を付けた。

周りが息を呑んで見守る中、伊織は傷の付いた指を箱に押し付ける。箱は淡い金に、ブレスレットは銀に輝く。

伊織はブレスレットの鍵を箱の鍵穴に入れ、ゆっくりと回す。先程開かなかった鍵が回り、かちり、と小さな音を立てて鍵が開いた。

恐る恐る箱を開くと、中からオルゴールの様なメロディーが聴こえてくる。


「…何も…入ってない…?」


箱を開ききって中を確認するが、箱の中には何もない。メロディーがただ聴こえるだけで、オルゴールの仕掛けなどもなかった。

何かが入っていると思っていた伊織は肩を落とす。


(ヴィルさんが起きなかったら…)


不安ばかりが頭に浮かび、祈る様に指を組んでヴィルフリートをじっと見つめる。どれほど待ってもヴィルフリートの反応はなく、伊織の顔が歪んだ。

見かねたライヒアルトが伊織とヴィルフリートの指に付いた小さな傷を治し、伊織の肩を軽く叩く。


「このままこうしている訳にもいきませんのぅ。今日のところはもうお休みになられては如何ですかな?随分心労が重なっている事でしょうぞ。明日一番にまた来ます。」


「…そうだな、イオリも疲れただろう。眠れなくても、少し休め。」


「…はい。…ここで寝てもいい?」


伊織が小さな問い掛けに、後見人の2人が渋い顔をする。ニコラウスに至ってはあからさまに拗ねた様子で頬を膨らませていて、ギルベルトに呆れた目で見られていた。どう見ても大人のする表情ではない。

ライヒアルトは小さく溜め息を吐いて伊織に向かって頷くが、ニコラウスは許可する気がないらしく手で大きくバツを作っている。


「嫁入り前だ!断固として反対!パパは認めんぞおおおおぉぉ!!」


「…今更かと思うのですが…。」


「そうだの…」


伊織の顔がどんどん曇っていくのを見て、ライヒアルトとギルベルトが実力行使に出る。ニコラウスは両側からがっしりと掴まれ、引きずられる様にして部屋を出ていった。


「イオリ様、入浴の準備を致しますね。」


「…ありがとう。」


人がいなくなった事で、部屋が静寂に包まれる。伊織は目覚めないヴィルフリートから目を離さず、そんな伊織をフランツィスカが労し気に見詰めた。

ギルベルトが戻ってきて、フランツィスカに目配せして浴室の方に向かう。浴室の方から出てきたギルベルトと入れ替わりに、フランツィスカが部屋を出ていった。

どうやら伊織が一人にならない様に配慮しているらしく、フランツィスカはエリーゼを連れて伊織の着替えを持って戻って来た。


「イオリ様、準備が出来ましたよ。」


「…うん。」


すっかり意気消沈している伊織をフランツィスカが浴室に連れて行く。

伊織はなすがままに入浴を済ませ、ヴィルフリートのところに戻って来る。ヴィルフリートはまだ目が覚めていなかった。

伊織はベッドに置きっぱなしになっていた箱とブレスレットをサイドテーブルに置く。なんとなく箱は開けっ放しに、その中にブレスレットを入れる。

メロディは絶えず流れていて、存在感のある音なのに不思議と気にならなかった。

フランツィスカが伊織に飲み物を差し出し、伊織は素直にそれを飲む。思いの外喉が渇いていて、一気に飲み干す。空になったグラスをフランツィスカに返した。


「…では、イオリ様。私共は下がります。何かあればすぐにお呼び下さい。」


「うん。おやすみ…」


「おやすみなさいませ。」


ギルベルトとフランツィスカが頭を下げて部屋を出ていく。伊織はヴィルフリートの横に身体をすべり込ませ、力なくベッドに横たわった腕に自分の腕を絡ませる。抱き寄せた腕は、先程よりほんのりと温かい気がして、ギュッと抱き込んだ。


「…早く、起きて…。ヴィル…ヴィルフリート…」


動かない身体に頬を寄せ、小さく呟いて瞳を閉じた。



----------------------------------------------------------------



抱き抱えていた腕を強く引かれ、伊織は驚いて目を覚ました。どうやら少し眠っていたようだが、部屋はまだ暗く、月もまだ高くにある。

伊織はヴィルフリートに視線を向け、そして固まる。

伊織の首にはナイフが当てられ、ヴィルフリートが馬乗りになって鋭い視線でこちらを見ていた。


「…女、お前は誰だ?何故、我の隣で寝ている。それよりも、ここは何処だ。」


「…ヴィ、ヴィルさ…「何故、我の名前を知っている。」


今までに見られた事のないような鋭く冷たい視線を向けられ、伊織の身体が震える。声を出そうとする度に歯がカチカチと、不快な音が鳴る。


「答えろ。ここは何処だ。何故、我の名前を知っている。」


「…ぁ、こ、ここは…ゔぇるでぃくらん…じょう…」


極度の恐怖と緊張に、伊織の瞳からは涙が溢れてくる。

目の前にいるのは、ヴィルフリートの筈なのに、これは誰なのか。


「…女…、イレーネを知らぬか。我と先程まで…先程まで?」


ヴィルフリートの様子が変わり、頭を押さえてふら付く。ナイフはベッドの下に投げ落とされ、伊織の上からも転がる様に退いた。


「そうだ、我はイレーネをこの手で…」


ヴィルフリートは頭を押さえて呻き、伊織は起き上がってヴィルフリートに手を伸ばす。伊織の手はヴィルフリートによって(はた)かれ、部屋に乾いた音が響く。

ヴィルフリートがハッとして伊織を見たが、伊織は涙を堪えて(はた)かれて赤くなった自分の手を擦った。


(…ヴィルさんじゃ…ない?…けど、生きててくれただけで、良かった…)


「…イレーネ?…ではないか…。イレーネは銀の髪に赤い瞳をしていた。…それにしても、どうしてこうも雰囲気が似ているのだ…?」


伊織の中に別の誰かを探しているヴィルフリートの瞳に、伊織は耐え切れずに顔を背ける。胸がずきずきとひどく傷む。


「…人を呼んできます。ちゃんと説明をしますから…」


「待て。」


ベッドを降りようとした伊織の腕をヴィルフリートが掴み、そして困った顔で伊織を見た。伊織は初めて見る顔に、戸惑いと少しの喜びを感じる。こんな顔、見た事がなかった。


「離して、下さい…。人を呼んで来ますから…」


「何となくだが、お前を離したくない。」


ヴィルフリートの言葉に伊織の瞳から涙が止めどなく流れ、慌てて俯いて隠す。伊織の腕が引かれ、ヴィルフリートの胸元に抱き込まれる。伊織は抵抗する事もする気も起きず、ただ身を任せた。

ヴィルフリートの手が伊織の背中を撫でる。その感触が伊織がずっと望んだモノで、伊織はヴィルフリートに縋り付いて泣いた。


「…イオリ、か…」


耳元で呟かれた伊織を示す音に、伊織は勢いよく顔を上げる。ヴィルフリートの瞳はまっすぐに伊織を見ていて、伊織は何度も頷いた。

ヴィルフリートの手が伊織の頬に添えられ、親指で優しく涙を拭う。


「イオリは、すぐに泣く。出会った時から、変わらぬな…」


ヴィルフリートの唇が伊織の目元に寄せられ、涙を吸い取られる。涙の痕を辿る様に下にずらされ、唇がそっと重なった。


「…イオリ…イレーネ…、余の、我の名は?」


「…ヴィルさん…、ヴィル!」


至近距離で囁くように問い掛けられ、伊織はヴィルフリートの首に腕を回す。

伊織の答えにヴィルフリートが満足気に頷き、再び唇が重なった。





ヴィルフリートさんの記憶も完全に戻りましたー。ワーパチパチ。(* 'д'ノノ゛☆パチパチパチ

本当はひっぱっちゃって、伊織ちゃんの上に跨ってるところで切ろうか悩んだんですが、文字数少なくなるからどこかに追加で付け足すのもなんかなーって思って今の形になりました(゜Д゜;)

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