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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶と石榴石
68/94

罪。

ぬおおおお。

意味不明な代物になってしまった←

__イオリ…思い出して。


「何を思い出せばいいの?」


ソレ(・・)が伊織に言う。そこで伊織は思い出した。自分の幼い頃からずっと傍にいた、人ならざるモノじゃないか。

どうして自分は忘れていたんだろう。


__さあ、思い出したかな?


「どうしてここにいるの?…僕はどうなって…」


ソレ(・・)は丸く淡い光を放ったマリモの様な形状だった。色は七色に少しずつ変わっていく。

伊織は暗く、何もない空間を漂っていた。暗いのに、伊織やソレ(・・)ははっきりと見て取れる。


__あの鍵と箱は、私が作った特別製だからね。ある条件を満たさないと、開けられないんだ。


「箱…?条件…?…あ!ヴィルさんが…!ヴィルさんが死んじゃう!!」


顔色を無くした伊織の前にソレ(・・)がふよふよと浮かんできて、目の前でぴたりと止まった。

ソレ(・・)がゆっくりと形を変え、普段伊織が見ている精霊の姿になる。色は七色だったが。


__昔話をしよう。大丈夫、彼は死なないから。


「…昔話?」


__そう。私の罪の話。


ソレ(・・)はそう言って、手を叩く。

足元には床が出来、伊織の目の前に映像が広がる。


__遠い昔、とある神が生まれた。神は小さな世界を作った。生物も、あらゆる世界から少しずつ招いて住まわせた。



          ◇◆◇



神はその時、自分にできない事はないと思っていた。神にも役割が決まっていてね。その神の役割は創造と管理だったんだ。

当然の事、その世界で神に出来ない事はない。神は傲慢になった。生まれたばかりだったからね。

そしてその世界の生物に色んなモノを与えた。だが、与えられる事が当たり前になった事で、生物の方も傲慢になった。

生物は神を信仰する事を止め、すっかり表面上だけの信仰になった。

神は不貞腐れて、とある神殿に下りた。人間に姿を似せてね。その時は神の奇跡でも見せつけて、再び信仰心を取り戻そうと思ったんだ。神にとって信仰は力となるからね。

そこで一人の美しい少女に出会った。少女は落盤事故で父親がおらず、母親も働きすぎて病に掛かって亡くなってしまっていた。

神はその少女を不憫に思って、欲しいものはないか聞いたんだ。

少女は自分より、もっと苦しむ者がいるからその者達に聞いてほしいと言った。

そこで神は気が付いた。この世界では自分の恩恵を受けているのは、一部のモノだけ。大部分のモノは魔物に怯え、食糧不足に怯え、そして恩恵を受けている一部のモノに怯えているのだと。

神はひどく後悔した。そして少女に聞いたんだ。


『神が憎くはないか?』


少女は答えた。


『いいえ。私の様なモノは祈る方がいるだけで、救われるのです。』


その答えを聞いて、神は少女に祝福を与えた。その祝福は、少女の願いは神が何処にいても聞こえると言うものだった。

神は少女に対して不思議な感情を覚えた。でもその時はそれがどういうモノか、神自身にも解らなかったんだ。

そして神は恩恵を与える事を止め、皆にこう言った。


『私はもう十分、この世界に生きる者達に恩恵を与えてきた。肥沃な大地、管理された天、優れた知識。だが、お前達は傲慢になるばかり。もうこれ以上与える事はない。』


人々は神に言った。


『今更無責任だ。』


当たり前だよね。でも神はその言葉に怒り、それ以降何もしなかった。

そして、雨が続いたり、逆に干上がったり。働く事をすっかりやめていた人間は早々に音をあげた。

各地で略奪が頻発し、死者は増えていく。


『私はまた間違えたのか…。これは、私の罪だ。』


神は心を閉ざした。

その時には少女を見守る事が神の唯一の楽しみになっていた。

少女は各地で飢えた人を助け、怪我人を手当てした。少女は次第に聖女と呼ばれるようになった。

その事がとある王国の目に留まり、少女はその王城に呼ばれるんだ。

王は少女の美しさに一目で心を奪われ、王妃を蔑ろにして少女ばかりに気を掛けた。

王と王妃には娘が一人いた。娘は聡明で美しく、街に下りては人を助ける、民から慕われていた娘だった。

彼女には婚約者がいて、彼もまた民から慕われていた。

彼は隣国の皇子で、隣国では神からの恩恵が受けられなくなって早々に田畑を耕し、飢えた者も少なかった。

王国は彼の国に寄生するつもりで彼女との婚姻を望んだが、彼女と彼は愛し合っていた。神は彼女と彼の事も好きになった。そして近く婚姻する彼らの為に、紫の石と紅い石を与えた。内緒でね。

彼女は紫の石を腕輪に、彼は剣の飾りとした。

彼女はすぐに少女と仲良くなった。共通すると事もあったからね。

そして彼女は少女と王妃を気遣い、王を窘めた。


『お父様、お母様との時間をもっと取って下さいませ。あの子は私と同じ歳なのですよ。』


王はその言葉に反省したが、その時にはもう遅かった。

事件が起こった。

王妃によって少女は複数の男に凌辱され、そして殺された。

神は自分の愛する少女が殺され、怒り狂った。王国中に嵐が吹き荒れ、常闇が支配した。

神は初めて少女に対する気持ちが愛だと言う事に気が付いた。既に遅かったけれど。


『お前達は、私が愛した者を奪った。』


王は神の怒りを治める為に王妃と少女を凌辱した者を殺した。だが神の怒りは鎮まらず、王は責任を取って自らも自害した。それでも神の怒りは鎮まらない。

嵐は王国だけじゃなく彼の国にも及び、そして世界が少しずつ闇に包まれていった。


『私が神の怒りを鎮めます。貴方は、後の世界をお願いしますわ。私を貴方の手で(あや)めて下さいませ。』


『我には出来ない…。お前を殺める事など…。』


『ですがこれは、神から恩恵を受けた私達にだけ出来る事ですわ。世界の為です。御決断下さいませ。』


彼女は(したた)かだった。彼女の強い眼差しに、彼は頷くしかなかったんだ。

彼女の18の誕生日に、神にその命を捧げる事になった。


『私の身体、余す事無く神に捧げ下さいませ。』


ついに彼女の誕生日がやってきてしまった。その時には世界は見る影もなく、常闇に覆われていた。

彼女の身体には深々と神から与えられた飾りの付いた剣が刺さる。彼女の腕にもまた、神から与えられた石の付いた腕輪が着けられていた。

そして彼女の身体は小高い丘の上に、彼に抱えられて差し出される。


『神よ!これが貴殿の望んだ事だったのか!我は、貴殿が憎い!』


神にとってはそれは予想外の事だった。自分が怒り狂って我を忘れていた事も、その所為で彼に彼女を殺させてしまった事も。

神はまた後悔した。

神は彼女の血で泉を作り、彼女の灰を世界に撒き、彼女の骨を礎に彼の為に城を建てた。心臓は融けない氷で覆い、泉に沈めた。

そして彼女の持っていた腕輪を作り替えた。少しだけ形状を変えて。


『私はまた罪を犯してしまった。』


彼が亡くなった後、彼の持っていた剣を箱に作り替えた。


『いずれ必ず、彼と彼女を同じ時に出会わせてあげる。』


そして彼女と彼は幾度となく生まれ変わった。だがそれは同じ時ではなく、また同じ世界でもなかった。

神の役目は創造と管理。輪廻はまた別の神の管轄だった。

輪廻を担当する神に頼み込んだ。彼女と彼を同じ時に生きさせて欲しいとね。

でも目印になるモノがないから無理だと言われた。

神にとってその魂は記号でしかないからね。神は覚えていたけれど、輪廻の神にはわからなかった。

だから神は他の方法を考える事にした。

偶然でも同じ時に生まれたら、どちらかの世界に渡ればいいと。

彼はすぐに見つかった。奇しくも神の作った世界の、皇子としてね。

彼女の方はなかなか見つからなかった。けど彼が10歳になった時に、彼女は見つかった。別の世界でね。

でも彼女は男の子になっていた。しかも母親が、神の愛した少女の魂を持っていた。

神はその世界を管理する神に頼み込んだ。すると、家族が了承したらいいと返事が返って来た。

この世界では神には何の力もない。仕方なくもう一度管理する神に頼み込むと、その神はこう言った。


『夢になら好きに出入りしてもいい。』


神は頑張った。子供の家族の夢に何度も現れ、子供は元は女性だと言う事と、子供はいずれ他の世界に渡る事を説明し続けた。

次第に皆同じ夢を見ている事に気が付き、そして子供には人ならざるモノが見えている事に家族が納得し始めた。

そしてある時問い掛けられたんだ。


『あの子は、そちらに行った方が幸せになれるの?』


神には答えられなかった。だってこれは神の勝手だ。

確かに彼女と彼は再会を約束していたけれど、それが本当の望みだとは限らない。

神は答えを保留にした。

そして子供を少しだけ自分の世界に連れて行った。

時間軸は外れていたが、亡くなる前の彼に会い、そして神の作り替えた腕輪が子供に渡される。

結果的に世界の移動がそれで楽になったんだけどね。

これで神の愁いは無くなった。

神は家族に、子供は必ず幸せにすると誓った。



          ◆◇◆



__その子供が、イオリ。君なんだ。王女がイレーネで、そして皇子が…


「ヴィルヘルム…」


どうして自分は彼の名前を思い出せなかったのだろう。

こんなに胸が痛くなるほど、愛していたのに。


__魂は同じでも、同じにはならない。だからイレーネは心臓がイオリに渡る時に封印したんだね。


ソレ(・・)が哀しげな顔で微笑む。

ソレ(・・)が手を叩くと、床と映像は消えて再び宙に漂う。


__さて、箱を開ける方法を教えてあげないとね。私はある条件を付けた。剣を箱にした時にね。その条件が、箱には彼女の生まれ変わり、腕輪には彼の生まれ変わりの…体液を要すると。


「体液…?僕が箱に涙を零したみたいに…?」


ソレ(・・)が頷く。


__偶然だったけど、そう言う事だね。だから、彼の体液を腕輪に垂らせば箱は開けれるよ。血なら一滴でいい。


「血…。」


__さあ、お別れの時間だ。もう私に会う事はないかもしれない。でもいつでも見守っているからね。


ソレ(・・)が手を叩き、伊織の意識が薄れる。


(…最近こんなのばっかりな気がする…)


ソレ(・・)が微笑んでいるのを見ながら、伊織は意識を手離した。




とまぁ、ここで色んな伏線回収しました。

家族があっさり伊織ちゃんを見送った訳とかね。


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