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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶と石榴石
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なんか、トラブルばっかりな気がする。

ネタ回。

いやー、ほんとこんなにネタに走ったの初めてかもw

「ですが、全てはお売りする事は出来ません。他のお客様がお買いになれなくなりますので…全種類を1つずつでしたらお売りできますが…」


「美味しいと聞いたから買いに来てさしあげたと言うのに!1つではなく、あるもの全て出しなさい!」


こっそりと伊織が硝子ケースの方を見ると、13,4歳のストロベリーブロンドの髪の女の子が店主と思われる男性に向かって怒っている。

言っている内容が横暴過ぎて、いっそ清々しい。

ヴィルフリートは関わる気はないらしく、注文を聞きに来た女性店員にお茶を注文している。どちらかと言うと、店員の方が怒っている女の子が気になる様だ。


「イオリ、決まったか。」


(…マイペースだなぁ…)


「…んと、これとこれとこれと…これも…」


伊織はヴィルフリートに見倣って平常心を心掛け、店員にケーキを数個注文する。店員が注文を取り終え、厨房に行くのを横目で見ながらヴィルフリートに顔を寄せる。


「ねえ、ヴィルさん。放って置いていいの?」


「…仕方あるまい。実害が出ている訳ではないのでな…」


「…ものすっごく、迷惑してると思うけど…」


伊織が顔を顰めていると、店に新しく人が入って来たようで、さっきよりも騒ぎが酷くなる。現れたのは女の子と同じようなストロベリーブロンドの壮年の男性で、女の子と何やら話している。伊織がちらりとそちらに視線を向けると、店主らしき男性が顔を蒼白にしていた。


「そんな事、お受けする事が出来ません!自分は店を出す事が夢で、やっと叶ったんです。どうかお許しください!」


「何も店を潰すとは言ってないでしょう?私の邸で、毎日スイーツを作ってくれるだけでいいんですのよ?あぁ、でも…そうなるとこの店はいらないかしらね?」


「こらこら。止めなさい、グレーテル。彼が困っているだろう。」


止めている筈の男性の顔にもにやりと嫌な笑みが浮かんでいて、伊織の顔が更に歪む。

伊織達が気分悪くなりながら騒ぎを見ていると、奥から店員が来て申し訳なさそうに頭を下げた。


「誠に申し訳ありません。本日はもう何もお出しする事が出来ないのです。」


「…食べれないの?」


伊織がしょんぼりと顔を曇らせて、肩を落とす。店員の女性の顔色も悪く、先程から店主の方を心配そうに何度か見ている。店員が伊織達の席を離れていき、他の席にも頭を下げて回っていく。他の客も残念そうにしていたり、はたまた怒り出したりと、随分店が混乱してきた。


「…実害が出たな。…あの男、調査官のカミル・デーナーか…?」


ヴィルフリートが立ち上がり、硝子ケースの前に立つ男の方に向かう。伊織も慌てて後を追い、ヴィルフリートの服を掴んだ。


「ヴィルさん、何するの?…顔見知りなんでしょ?ばれちゃうよ?!」


「どうせもう帰るだけであろう。今ばれた所で、転移すれば済む話だ。」


「そうかもしれないけど…!」


伊織が止めに入るが、ヴィルフリートは聞く耳を持たない。そればかりか不要な貴族を排除できて好都合と、機嫌も悪くない様だ。

伊織は溜め息を吐いて、服を持つ手を放す。とりあえず様子を見る事にした。

グレーテルの視線が近付くヴィルフリートに向き、そして釘付けになる。その様子にカミルが気が付き、ヴィルフリートに視線を向けた。


「何だ、貴様は。この店はこれより貸切だ。出口はあっちだぞ。」


「出て行くのは貴様だ。この様な専横(せんおう)、赦されるとでも?」


男性が持っているステッキで出口を示すと、ヴィルフリートはそれを鼻で笑う。

カミルの顔が見る見るうちに赤くなり、ステッキを持つ手が怒りでふるふると震えている。


「貴様!私が誰だと解っておるのか!?」


「カミル・デーナー。解っていて言っている。」


ヴィルフリートの挑発に、カミルがステッキを振り上げる。近くのグレーテルから小さな悲鳴が上がり、伊織はハラハラと様子を見ていた。

ステッキは当たる事なく避けられ、避けた事で硝子ケースに当たってヒビが入る。衝撃音に客からも悲鳴が上がり、店主と店主の妻と思わしき女性店員は腕を取り合って蒼褪めた顔でヴィルフリートとカミルを見ている。


「…お、お父様。もういいですわ。帰りましょう?」


「…うるさい!」


「きゃあ!」


グレーテルがヴィルフリートをちらちらと顔を赤くして見ながら、カミルの腕を引く。カミルはグレーテルを振り払い、グレーテルはそのままの勢いでバランスを崩して転んでしまった。

ヴィルフリートがグレーテルを一瞥して、カミルを見て目を細める。


「カミル・デーナー。いい加減気付くがいい。貴様が邪魔だと。」


「…私に何という口を…!見る限り若い様だが、何処の誰だ!」


伊織がグレーテルが起き上がるのに手を貸し、大丈夫か聞いている間に、ますます険悪な雰囲気になっていた。ヴィルフリートが溜め息を吐いて、変化の魔法を解く。


「余の顔、見忘れたか?」


「…?貴様、何を言って……!?へ、陛下!?」


(あーあ、やっちゃった…どこぞの時代劇みたい…)


伊織が肩を竦めてヴィルフリートの腕を引く。ヴィルフリートが伊織を振り返り、口を尖らせて怒る伊織の髪を梳いた。


「そうじゃなくって!…これ、どうするの!?」


店内は騒然となって、店主と女性店員は腰が抜けた様に座り込んでいる。カミルとグレーテルは跪いているし、他の客も混乱しているようで跪いたり、腰を抜かしたりしていた。


「ふむ。帰るか?」


「…さすがにこのまま放って置くのはどうかと思うよ?」


「では騎士を呼ぶ。カミル・デーナー、貴様の近辺、しっかり洗い(ざら)い調べてくれる。店主、騎士を呼んでくるように。」


ヴィルフリートが店主に指示を出すと、店主は壊れた人形のように何度も首を振る。見かねた女性店員が立ち上がって、急いで店を出ていった。


「…えっと…皆さん、とりあえず落ち着いて…」


伊織がとりあえず混乱している客に声を掛けて見るが、声を掛けられた事に騒ぐばかりで収拾がつかない。伊織は思わずヴィルフリートをジトリとした目で見た。

ヴィルフリートはどこ吹く風で、近くの椅子に座って足を組んでいる。


「どうした、イオリ。甘味はまた今度買いに来させれば良かろう。」


すっかり口調もいつもの口調に戻っていて、伊織は肩を落とした。


(うーん…なんでこんなにトラブルばっかり起きるんだろ…。もしかして、トラブル体質?)


折角のお忍びが台無しになって、次はもう帝都では遊べないかもしれない。噂はどうしても流れるし、どんなに隠してもヴィルフリートは存在感が半端じゃない。

伊織が悩んでいると、ヴィルフリートに腕を引かれて抱き上げられた。足を崩したヴィルフリートの膝の上に横抱きに座らされ、店内から微かに黄色い悲鳴が上がる。


「何を悩んでいるのだ。」


「…ヴィルさんのそういう、人の目を気にしないところ。」


伊織がぶすっとしてヴィルフリートから顔を逸らす。宥める様に髪を梳かれた。

入り口から騎士が2人入ってきて、ヴィルフリートと伊織の姿にギョッとして跪く。


「挨拶は良い。後は任せた。余とイオリは帰るのでな。」


「はっ!…どうされたのですか?」


「店主に聞け。」


ヴィルフリートが伊織を抱いたまま立ち上がり、伊織の変化も解く。伊織は諦めた様に遠い目をして、引き攣った笑みを浮かべる。


「では戻るぞ。…神殿だったか?」


「…うん。お見舞い。じゃなくて!ヴィルさん!…あ、騎士の人達、面倒押し付けてごめんね!文句は近衛騎士団長のバルトロ


騎士に謝ってる途中で転移され、歪む景色にギュッと目を閉じる。

あの騎士の人達見たことあるな、と思いながら、目を開けた時は神殿だった。



某暴れまくった将軍より。

アレが言わせたかっただけ!!

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