説明を求む!
絵ばっか描いてたら、ギリギリになってました(ll゜ω゜)
ヴィルフリートの服を握る手に力が入る。伊織が蒼褪めてヴィルフリートを振り返れば、ヴィルフリートは射殺さんばかりの視線で2人を見ていて、2人の顔色が伊織以上に蒼褪めていた。
「…ヴィ、ヴィルさん…こわ、こわい…よ…?」
伊織が握っていた服をそっと離し、視線を逸らす。ヴィルフリートの眉がピクリと動き、扉に入った直後から固まっていた2人から顔を背けた。
伊織の感じていた緊張が解け、イグナーツが進み出てテーブル脇に跪く。
「イオリ様、お辛いかもしれませんが暫し耐えて頂けませんか?」
「…う、うん。大丈夫。」
イグナーツに頷き、気を取り直して表情を引き締める。イグナーツがヴィルフリートと顔を見合わせ、イグナーツが立ち上がって壁際に下がる。
「まず、アニエッタ・ブルームとリタ・ブルクミュラーがなぜ怪我をしたかだが。そこの者達が成り変わる時に襲撃したからだ。」
「…っ!じゃ、じゃあ…どうしてその人達がここにいるんだよ?!」
伊織が息を呑んで、ヴィルフリートに食って掛かる。ヴィルフリートが伊織を宥める様に頭を優しく叩き、顎でしゃくってイグナーツに続きを促した。
「殺すには惜しい人材だったので。イオリ様を攫った黒幕を突き止めるのにも丁度良かったですしね。」
イグナーツが淡々と伊織に説明する。その顔は酷薄な笑みを浮かべており、伊織は背に悪寒が走った様な気がした。伊織の方を見たイグナーツは打って変わって優しげな表情で微笑み、今までの酷薄さは欠片もない。
「利用価値があるなら、使うべきでしょう?」
その優しげな表情のまま言い切るイグナーツが怖くなり、ギュッと拳を握るとヴィルフリートが溜め息を吐いて、いつも通り伊織を膝に乗せる。途端にニコラウスから大ブーイングが起こり、ヴィルフリートの視線に黙殺された。
伊織はヴィルフリートから伝わる熱に、ほっと肩の力を抜く。
「話を戻すぞ。…イオリの跡を追った時にその者達を見つけ、イグナーツが言う様に利用価値があった為、生かした。その後その者達を利用し、フランツィスカ・カロッサに変身魔法を掛けて黒幕を探ったと言う訳だ。」
「…見つかったの?」
「いいえ。国境を越えられましたので。父が跡を追っております。」
視界に入るニコラウスの不満げな顔は一様に無視され、誰も見向きしない。伊織は気になってちらちらと視線を向けるが、ヴィルフリートはどこ吹く風だ。
「…この者達は身の程を弁えないし、口は悪いですが、使い道は沢山あるんですよ?」
まるで道具のような言い方に、伊織の顔が曇る。攫われた事は怖いと思ったが、イグナーツの言う事には同意できなかった。
「…そんな、人をモノみたいに言わないで…僕、そういうの嫌だ…」
イグナーツがキョトンとして伊織を見、少ししてくすくす笑い出した。
「モノですよ。私もこの者達も。陛下やイオリ様などの尊き方々以外、使い捨ての駒で「イグナーツ、その辺りにしておけ。その様な考え方は、イオリには通じぬ。」
イグナーツの発言はヴィルフリートに遮られ、イグナーツは頭を下げた。ニコラウスから溜め息が聞こえ、そちらに視線を向ける。
「早く話を進めろよ。俺はイオリと遊びたいんだ!」
「ニコラウス、其方は黙っていろ。イオリはまだ用事があるのでな。其方1人帰っても良いのだぞ?」
「…続けますよ。…イオリ様が見つかりましたので、フランツィスカを連れ戻しましてな。現在はフランツィスカの姉のベアトリクスがイオリ様に変じております。」
ニコラウスとヴィルフリートの言い争いに顔を顰め、ギルベルトが続けた。壁際の2人に視線を向けると、唖然としている。
「…この人達の名前は?」
「右がラルフ・ドーレス、左がロルフ・ドーレスです。双子の裏仕事専門の何でも屋ですね。腕はいい方だと思いますよ。特にロルフの方は隠蔽魔法が一流です。ラルフの方は攻撃魔法が。ま、ラルフは短気なのが問題ですがね。」
「んだとっ!?やんの「黙れ、ラルフ。そう言う所を言われてるんだぜ。」
イグナーツの質問の答えにラルフが怒りだし、ロルフが宥める。確かにすごく短気な様だ。
「…現在、連絡待ちですので、イオリ様に報告する事は以上にございます。」
ギルベルトは呆れた表情を隠しもせず、伊織に向かって締め括る。迎えに座っているニコラウスは未だにヴィルフリートに文句を言っているようで、ヴィルフリートは完全に無視していた。もしかしたら防音結界を張っているかもしれない。
伊織がヴィルフリートの服を引くと、ヴィルフリートが伊織に視線を向ける。思った通り、瞳が真紅になっていた。
「終わったか。」
「うん。…ヴィルさん、アニーとリタの所に行きたい。連れて行って?」
伊織が小首を傾げてヴィルフリートを見上げる。ヴィルフリートが頷いて、伊織をそのまま抱き上げた。
「…ヴィルさん…自分で歩きたいんだけど…」
「たった今連れて行けと言ったではないか。」
「いあ、そういう意味じゃなくて…もういいや。」
方方から生暖かい目で見られて、伊織の心が折れる。流石にギルベルトとフランツィスカは慣れたモノで、平然と扉を開けた。
「…ハニービーの蜜が口から出そうだ。」
(…確かに…)
ヴィルフリートと伊織が退室した後にニコラウスがポツリと呟く。その言葉に全員が心の中で同意した。
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「…あれ?神殿ってこっちだっけ?」
「神殿へは固定の転移魔法陣がある。…誰でも使える物ではないが。歩くとなれば、距離があるのでな。」
ヴィルフリートの言う通り、泉までの距離も結構ある。その倍ならば、泉に行くにも部屋から20分程掛かる伊織では、歩くには遠い過ぎる。ヴィルフリートの足でも30分は掛かりそうだ。
ヴィルフリートは普段伊織の使わない通路をどんどん歩き、複雑な道順にも関わらず迷う事無く目的地に辿り着いた。入り口の騎士に挨拶して中に入る。何もない部屋の中央に転移魔法陣が描かれている。
「…無理、絶対迷子になる。」
「その内覚えれば良い。…ここへの道もだが、隠し通路の道順も覚えねば成らんのでな。」
ヴィルフリートの何気無く言った内容に慄く。こんな広大な敷地を持つ城の隠し通路なんて、覚えれる気がしない。
ヴィルフリートが魔法陣の真ん中に立ち、魔力を込める。魔法陣から紅い光が迸り、目が眩んだ。
「イオリ、着いたぞ。」
ヴィルフリートに声を掛けられ、目を開く。そこは先程までの部屋では無く、転移魔法陣の周りが水で囲われた場所にいた。ヴィルフリートが水の上を歩く。伊織が驚いて見てみると、見えない床がある様で水には足が着いていない。
「陛下、お待ちしておりました。」
転移魔法陣の部屋を出ると、金髪に青紫の瞳の男が立っていた。何処かで見た様な気がして、伊織の視線が男に釘付けになる。ヴィルフリートが伊織の様子に目を細めるが、伊織は気付かない。
「…私の顔に何か?」
「……何処かで見た様な…うーん…」
男性がヴィルフリートの視線に耐えきれなくなったのか、口を開いた。伊織が首を傾げ、尚も男を見詰める。
「…神官のヴォルフガング・ローゼンクランツでございます。以後お見知り置きを。」
「…ローゼンクランツ?って事は、ハイジの兄妹?」
「はい。アーデルハイトは双子の姉にございます。」
通りで似ている訳だ。伊織が納得して頷いていると、ヴィルフリートから溜め息が聞こえてきた。
「…イオリ、仕置だな。」
THE 行き当たりばったり☆




