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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶の鍵
36/94

痛みには弱いです。

またひとつ伏線回収。

回収する伏線を作りすぎた感が…!


お気に入りが1,000件ですって!めちゃくちゃうれしいです(∩´∀`)∩ワーイ

皆様のおかげです、ありがとうございます!

ヴィルフリートは落ち込む伊織を宥めていたが、視察に行っていた間に溜まった執務をする為に渋々部屋を出て行った。

伊織も自分の部屋に戻り、何時もの様にソファに座る。箱をどう探すか悩むが、全くいい案は出ない。

そうしているうちに、下腹部がつきつきと鈍く痛み出した。今まで感じた事のない鈍く重い痛みに伊織の顔が青褪める。


「イオリ様、どうされましたか?お顔色が優れない様ですが…」


「…お腹、痛い…し、なんかダル…」


アニエッタが伊織の顔色の悪さに気が付き、心配そうに声を掛けてくる。伊織はお腹を抱えて、ソファの肘掛けに凭れ掛かった。


「…イオリ様、出血なさっていますわ!」


「…月のものですわね。湯殿に行きましょう。」


フランツィスカがドレスに滲む血液に気が付き声を上げると、アニエッタが冷静に伊織を抱え起こしてくれる。すぐにフランツィスカも反対側を支え、部屋に備えた浴室に向かう。

浴槽にお湯が張られ、伊織のドレスや下着が脱がされる。その間も伊織は痛みに脂汗を滲ませてぐったりしていた。


「イオリ様、準備が出来ましたのでどうぞお入り下さいな。すぐに楽になりますから。」


アニエッタに支えられて湯に浸かり、くたりと縁に凭れ掛かった。身体が温まると痛みが和らいでくる。柑橘の様な匂いが漂い、湯の色は薄い黄色に染まっている。


「薬湯ですわ。月のものによく効きますよ。」


お湯を掬った伊織にアニエッタが教えてくれた。フランツィスカは汚れ物の処理をしに行っているらしく、ここにはいない。

伊織が随分マシになった痛みにホッと息を付く。


「イオリ様、失礼ですが…月のものになるのは初めてなのでしょうか?今まで障りがありませんでしたので、イオリ様はてっきり不順なのかと思っていたのですが…」


「…うん。今までなったことない…」


(…ちょっと前まで男だったし…)


伊織が頷くとアニエッタは衣装部屋の方に行き、何かを手に戻ってきた。

伊織によく見える様に前に出すと、使い方を教えてくれる。


「下着に広げると、血液がこれに吸われます。血液が漏れる事も破ける事もありませんし、交換も1日1回でいいですわ。使用後も洗えば再び使えます。勝手に下着に固定されますので、ずれることもありませんわ。」


ジェルの様な球体を下着の上に乗せると、ジェルは勝手に下着に広がって薄い膜になった。思わぬ便利さに伊織が感心する。


「ちなみにこれが吸うのは血液だけですので、先ほどの汚れ物もこれを置くだけで綺麗に取れますよ。これの便利なところは乾いていても関係ない事ですわね。」


伊織の顔色が元の色に戻ったのを見て、アニエッタが微笑んだ。ドレスやソファを気にしていたのはお見通しらしく、さりげなく教えてくれる。

きっとこの様子ではヴィルフリートに心配させたくないと思っている事もばれているんだろう。


「ドレスはお茶を零したという事にしておきましょうね。陛下には7日程控えて頂く様、伝えておきますわ。」


やはりばれていた様で、アニエッタが悪戯っぽく笑って付け加える。伊織は頬を染めながらもアニエッタにお礼を言い、そのまましばらくお湯に入っていた。上がる頃には眠気を感じて、うとうとと舟を漕いでいた。


「イオリ様、お休みになられますか?…その前に障りの痛みに効く薬茶ですわ。少し苦いですが、一気にお飲み下さいませ。」


伊織の着替えを手伝いながらフランツィスカが尋ねてくる。伊織はこくんと頷いて、薬茶を受け取って一気に飲む。思ったより苦くなく、すっとする清涼感があり飲みやすい。


(…女の子って大変…うー、頭がぼーっとして眠い…)


目を擦りながらソファに座る。ソファは汚れなど元からなかったように、跡形もなく綺麗になっていた。ベッドに入る気にはなれず、肘掛けに凭れて目を閉じる。程なくして眠りの世界に落ちた。



----------------------------------------------------------------




__こちらの世界に、もう少しで定着しますわ。


伊織が目を開けるとイレーネが微笑んで、膝枕をしてくれていた。伊織が目覚めると顔に掛かる前髪を除けてくれる。


「イレーネ…箱、探せないかも…僕はお城の外に出られないし、どこにあるのかもわからないって…」


__イオリは鍵を持っているでしょう?鍵に尋ねればいいのです。


イレーネが首を傾げる。伊織はイレーネの言う事が解らず、イレーネを見上げた。イレーネが伊織の視線に意味深に笑う。


__あの人に子供の頃、貰ったでしょう?


「何の事?全くわからないんだけど…」


伊織が唸るとイレーネがくすくす笑い、伊織の腕に付いたブレスレットをなぞった。伊織が視線を向けると、確かに鍵型のモチーフが付いている。でもこれは、伊織がこちらに来る際に母に貰ったものだ。


「…これ、母さんに渡されたんだけど…」


__いいえ、イオリはこれを確かにあの人から貰ったはずよ。幼い頃にこちらに迷い込んだ貴方を、あの人が見つけた時に…


イレーネに言われて、過去の記憶が蘇る。哀しげに丘からの景色を見下ろすプラチナブロンドの髪にアメジストの瞳の壮年の男性。突如後ろに現れた伊織に驚く事もなく、力強い眼差しで見詰めてきた。何かを話した筈だけれど、そこまでは思い出せずにやきもきする。


__思い出したかしら?それは確かにあの人が貴方に渡したモノよ。


「あの人が初代皇帝…?」


確か帝国は、もうすぐで建国2000年だったはずだ。ヴィルフリートで50代目の皇帝だから、箱は単純計算で1000年以上前に失われた事になる。伊織はあまりの手掛かりのなさに思わず遠い目になる。


__イオリ、しっかりして頂戴な。鍵が箱の位置を教えてくれるわ…多分…


「イレーネも多分って言ってるじゃん!大体位置が掴めたとしても、どうやって手に入れるのさ!」


視線を逸らすイレーネに、伊織が起き上がって噛み付く。イレーネは引き攣った笑いを浮かべて、伊織と視線を合わそうとしない。


__あらイオリ、もう起きなければいけないわ。大丈夫、箱が壊れていなければきっと鍵が導いてくれる筈だから…。


「あ!イレーネ!逃げないでよ!!」


__頑張って。きっと大丈夫よ、愛しい子…


薄くなっていくイレーネに伊織が怒るも、イレーネは微笑みを浮かべて消えていく。光の粒になり、伊織の胸に消えていく時には伊織の意識もなくなっていた。



----------------------------------------------------------------



伊織がソファから身体を起こすとブランケットが掛けられ、身体を冷やさない様にされていた。時計を見れば、そろそろ夕方になる時間になっている。昼食を食べそびれ、小腹が空いている。


「イオリ様、お目覚めになられました?夕食前ですが、お茶を用意いたしましょうか。」


目が覚めた伊織にフランツィスカが話し掛けてくる。アニエッタは伊織の返事が分かっているのか、控えの部屋に入っていった。伊織はすぐに頷いて、伸びをした。

フランツィスカが身体の調子を聞いてくる。腰が重い感じのだるさはあるが、痛みはほとんどない。それから今までにない血が出る感覚と、たまに走るツキリとした僅かな痛みが気になる。フランツィスカに告げると苦笑いされた。


「そればっかりは仕方ありませんわ。私も不快に思いますが、どうしようもありませんもの。」


「そっか~。あぁ、朝みたいに痛いよりはマシだけど…」


伊織が肩を落としたところに、アニエッタがお茶と小さなサンドイッチと焼き菓子を持ってきてくれた。用意の早い所を見ると、伊織が起きる前から用意してくれていた様だ。お茶はハーブティーの様で、うっすらと緑色になっている。香りも爽やかで、青臭さはない。


「ブレンドのハーブティーですわ。鎮痛・鎮静、障りの不順改善や症状を軽くしてくれる効能がありますの。最近城下にお茶の専門店が出来て、そこで売られているんですよ。」


「へぇ。僕も行ってみたいなー。」


「陛下にお願いして見てはいかがです?私もイオリ様とショッピングしたいですわ!」


伊織の発言にフランツィスカが調子よく手を叩いて同意する。伊織はサンドイッチを口に入れて、もごもごと口を動かしながら頷いた。アニエッタが微妙に眉を顰めた。


「イオリ様、お行儀が宜しくありませんわ。フラン、調子に乗るものじゃありません。」


「はーい…」


アニエッタに窘められて伊織とフランツィスカの声がピッタリとハモり、思わず顔を見合わせてくすくすと笑う。アニエッタが溜め息を吐いて苦笑いした。

お茶を終わって時間を持て余し、編みぐるみを作る事にする。かぎ針を工房に作ってもらったので、最近の暇つぶしはもっぱら編み物だ。伊織の編みぐるみは城内の女の子に人気が高く、一部プレミアになっている事を伊織は知らない。というのも、伊織が散歩中に出会った下女の女の子に上げたり、料理長の娘に上げたりと不規則な上に数も少ないことから幸運の人形と呼ばれていたりする。

ちなみにアニエッタにはイヌ、フランツィスカにはウサギ、アーデルハイトにはネコの編みぐるみをあげた。


「んー。何つくろっかなー。」


毛糸を選びながら動物を思い浮かべる。そういえば騎士の3人にはあげていない事を思い当り、カルラにはドーベルマンっぽいイヌ、クラウディアにはペンギン、リアにはヒツジを編む事にした。大体1つ2時間前後で出来上がるので、夕食までに1つは出来そうだ。

カルラのイヌが完成して、クラウディアのペンギンを編んでいる時にヴィルフリートが入ってくる。テーブルの上の毛糸とあみぐるみを見て、眉を寄せた。


「…なんだこれは。」


「あみぐるみっていうの。かわいいでしょ?」


出来上がったイヌのあみぐるみを顔の横に寄せて首を傾げる。ヴィルフリートが難しい顔をしていて、伊織は不安気に見上げた。


「…ライヒアルトが言っていたのはこれの事か…。」


「何か言った?」


「いや、何でもない。」


ヴィルフリートが何かを呟くが、伊織にはヴィルフリートの呟きは聞こえなかった。伊織の首が逆方向に傾き、不思議そうにヴィルフリートを見ている。ヴィルフリートが首を振ったのを見て、伊織の頭に疑問符が浮かぶ。


「食事にしよう。…料理長が気合を入れて作っている様だが、何かあったのか?」


「…なんにもないよ?どうしたんだろ…」


伊織が首を振る視界の端に、フランツィスカが笑ってるのが見えた。まさかと思いフランツィスカを見ると、唇の前で人差し指を立て内緒の合図を作る。どうやら何かを言ったらしい。

伊織が余所見をして首を傾げていると、ヴィルフリートが伊織を抱き上げる。慌ててしがみ付いた。


「…着替えたのか。」


「うん。お茶こぼしちゃって…」


嘘が得意じゃない伊織は視線が泳がない様に気を付けながら頷く。ヴィルフリートは一瞬無言になると、そうか、と一言呟いて歩き出す。伊織は嘘がばれたんじゃないかと内心はらはらする。だが、ヴィルフリートから言及されることもなく食堂に着いた。

食事はとても豪華で、食べながら料理長を見るとにこにこと嬉しそうに笑っている。ますます訳が分からなくなって首を傾げると、ヴィルフリートが先に料理長に尋ねた。


「…一体、何なのだ。マルクス、如何言う事だ。」


「いえいえ、イオリ様がご懐妊できる身体だと判明致しましたのが嬉しくて…」


料理長の発言に伊織は喉を詰まらせて急いで飲み物を口に含む。ごほごほと噎せて涙目になりながら料理長を見る。料理長は未だににこにこと顔を綻ばせている。


「ほぅ…イオリ、どう言う事か余は聞いておらぬが。」


副音声に、なぜ料理長は知っているのに自分は知らない、と聞こえる。伊織が視線を逸らすが、ヴィルフリートの視線が痛い。思わず乾いた笑みが漏れた。


「あはは…今までなかったから、考えてなかったんだよねー…」


「…覚えておくが良い。」


(フランー!余計な事してー!)


壁際に立つフランツィスカを伊織が睨むと、フランツィスカはアニエッタに足を踏まれて苦悶していた。その姿を見て伊織の溜飲が少し下がる。にこにこ顔の料理長が目の前に豪華なパフェを置いてくれ、そちらに釘付けになった。ボリュームもすごいが飾りもすごい。


「…おいしそう。」


とりあえずヴィルフリートの発言や刺さる視線をまるっと無視して目の前のパフェを食べ進める。食べ終わった事には伊織の機嫌は直り、満足気に吐息を零した。

ヴィルフリートはそんな伊織に溜め息を吐いて、額を押さえた。

お茶も飲み終わって部屋に戻る。ソファに座ってさっそく尋問モードなヴィルフリートに現実逃避したくなった。


「で、何故余は知らぬのだ。」


「…あとで2人になってから伝えようと思って…」


伊織の苦し紛れの言い訳にヴィルフリートの眉が寄る。伊織はヴィルフリートの迫力に冷や汗を流しながら俯いて視線から逃れる。頭上でヴィルフリートの溜め息が吐く。伊織はいたたまれなく服を握った。


「…ごめんなさい。別に知らせるのが嫌だった訳じゃなくって…」


(…どうせばれるし…)


「そういう事を言ってるのではない。…余より先に別の男が知っていた事が気に食わないだけだ。」


ヴィルフリートの憮然とした声が聞こえて顔を上げる。微妙に顰められた顔が伊織を見下ろしていた。


(…ヴィルさんが、拗ねてる?)


意外過ぎて口元がにやけそうになる。ここで笑ったら確実に怒らせてしまう。伊織は笑うのを我慢してヴィルフリートの首元に抱き付いた。


「料理長には僕は言ってないよ。…ヴィルさんには僕の口から伝えたかったから…」


アニエッタから報せる心算だったのを棚に上げて、伊織がヴィルフリートを宥めに掛かる。ヴィルフリートの溜め息が再度聞こえて、背中を撫でられた。


「…次は仕置きするぞ。」


ヴィルフリートの宣言に内心焦りながら神妙に頷く。とりあえずフランツィスカにはアニエッタからお説教してもらおう、と思いながらヴィルフリートの頬に口付けた。

話が終わり、伊織は自分の部屋に戻ってゆっくり入浴する。朝はいった薬湯にリラックスして、またうとうとと眠気が訪れる。アニエッタが月経期は仕方がないと言っていたので、この眠気も症状の内の一つなんだろう。


「イオリ様、今日はお早めにお休みになられてはいかがですか?」


「うん。ヴィルさんの部屋行くー」


目を擦りながらナイトガウンを羽織り、ヴィルフリートの部屋に行く。ヴィルフリートは窓際で酒を飲んでいたが、微妙に髪が湿っている所を見ると風呂上りなのだろう。伊織の姿に目を細め、酒を窓枠に置いた。


「…眠いのか。」


「…うん、もう寝る…」


伊織が頷いて、布団に潜り込む。ヴィルフリートも酒を飲み干して、すぐに伊織の横に寝転がった。額に口付けられて、抱き寄せられる。


「…おやすみなさい。」


「あぁ。」


すぐに訪れた眠りに、伊織は意識を手離す。


(あ、箱の事伝えるの、忘れてた…)



こういう生理用品欲しい…


今更判明する料理長(マルクス)の名前(笑)

地味に登場回数多いから、何か参加させてあげようかな…

そして全く出てこないライヒアルトさん…ライヒアルトさんェ…


予約が8月になってて焦った…微妙に遅れました!

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