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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶の導
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忘れモノはありませんか?

今回は甘さ控えめ(笑)

寝落ちて昨夜更新できず…orz


目が覚めると真っ白な空間に立っていた。いや、まだ夢を見ているのかもしれない。

昨夜はいつもと同じ通り寝た筈。ただ、寝る場所がヴィルフリートのベッドになっただけで。

それならここは何処なのだろう。不安を感じながら振り返る。やはり真っ白な空間が広がっているだけで、何もなかった。


__帰りたい?


何処からか声が聴こえて、伊織はびくりと肩を揺らして振り返った。振り返るとそこには艶やかな銀髪にヴィルフリートの魔力を使った時の様な真紅の瞳の女性が立っていた。伊織は女性の美しさに思わず見惚れる。


__帰りたい?


「…考えない訳じゃない…けど、ヴィルさんと離れたくない…離れちゃいけない気がして…」


再び問い掛けられて、何故か答えなければいけない様な気がした。伊織は戸惑いながらも返事を返す。


(…僕はこの女性(ひと)を…知っている…?)


__私の所為で、あの人は囚われてしまった…。


「誰の事をいっているの?僕はどうすればいいの…」


女性が哀しそうに瞳を伏せて、首を振る。伏せられた瞳からは綺麗な涙が一筋頬を伝った。


__あの人を愛する事を(おそ)れないで。私は愛する事を選択出来なかった…


女性は自嘲気味に笑い、伊織に向かい手を伸ばす。伊織はその手に自分の手を合わせた。女性が伊織の額に自分の額を付ける。


__愛しい子。…今度こそきっと大丈夫。


伊織は不安を隠さず、合わせられた手を握って至近距離の女性の瞳を見詰める。女性は小さく笑って伊織の手を握り返してくれる。くっついていた額をそっと離し、伊織に優しく微笑んで手を離す。


__運命は廻る。いずれ、全てを解る時が来るはず…


女性が伊織の頬を優しく撫でて、1歩後ろに下がった。伊織は縋るように女性に向かい手を伸ばすが、伸ばした手は空を切る。女性は光の粒となり、伊織の心臓あたりに消えていった。

そして伊織は立っていられないほどの急激な眠気を感じて、意識を手放した。



----------------------------------------------------------------




目覚めるとヴィルフリートの寝顔が目の前にあり、伊織はどきりとした。こうしてヴィルフリートの寝顔を見るのは初めてかもしれない。

夢を見た気がした。どんな夢か思い出そうとしても全然思い出せない。大切な事のような気がするのに、指の間から零れ落ちる水の様に、夢の記憶はなくなってしまった。

ヴィルフリートの寝顔を見詰める。何故かそれがとても切ない。そっと頬に手を伸ばすと、触れた直後に手を掴まれた。伊織が驚いて手を引くと掴まれた手はするりと抜ける。ヴィルフリートの紫の瞳が伊織を見ていた。


「眠れぬのか?」


「うぅん…何か夢を見た気がして…」


ヴィルフリートが伊織の頬に掛かる髪を払ってくれる。伊織はその手に手を添えて頬に摺り寄せる。どうしてこんなにも心がざわつくのか。解らない事が解らない。その事に焦燥を感じた。

添えていた手を離してヴィルフリートの胸に顔を寄せる。規則的に脈打つ穏やかな胸の鼓動が聴こえて安堵する。


「…もう少し眠った方が良い。」


ヴィルフリートに頭を撫でられて、頷いて目を閉じる。どうしてヴィルフリートの腕の中はこんなに安心するんだろうか。ヴィルフリートに額に口付けられ、頭を撫でられていると段々意識が薄れて行った。


あの後ぐっすり朝まで眠り、着替えも朝食も済ませて、騎士試験を見る為に騎士訓練所に来ていた。今日も非番の騎士が見学している。ヴィルフリートに促されて上座にある椅子に座る。


「試験を受けに来た中で一定の実力がある者は、新設する女性騎士団に所属が決まっている。ここにいる者はその中からの選りすぐりだ。」


「そうなんだ。って女性騎士団新設するの!?」


伊織が驚きの声を上げると、ヴィルフリートが頷いた。


「言っていなかったか。」


目の前に5人の女性騎士が並んだのが見え、伊織が正面に視線を戻す。女性達は騎士の礼を取った。伊織の後ろにいたカルラも正面に回り、同じように礼を取った。


「ここにいる者で総当たり戦を行う。成績に関係はない。余が見て余が選ぶ。」


ヴィルフリートが簡潔に言い、脇にいるバルトロメウスに顎をしゃくって合図した。バルトロメウスが前に出て、対戦表のパネルを出す。


「カルラ・ヴァイス。其方に負ける事は許されぬ。」


中央に歩いて行くカルラにヴィルフリートが声を掛ける。カルラは振り返って深々と頭を下げた。


「みんな頑張ってね!」



試合が始まる前に伊織が大きな声を出して応援した。



----------------------------------------------------------------



結果はカルラは全勝で、他の者は視察には全員同行することになった。


「カルラ・ヴァイス。クラウディア・クロイツ。リア・ブルクミュラー。前へ。」


「はっ!」


3人とも同時に返事をし、前に出て跪いて頭を下げる。ヴィルフリートが伊織に立つように促し、騎士の前に出た。


「本日より、イオリの専属騎士に任命する。…ギルベルト、剣を。」


ヴィルフリートはギルベルトから剣を受け取り、伊織に渡す。伊織は剣を受け取って困惑顏でヴィルフリートの顔を見る。


「余の言う通りに。剣の平で右から肩を3回。精霊と我が名において、我汝を騎士とす。我が剣となり盾となり我に永劫の忠誠を。鞘に戻して差し出す。」


伊織は言われた通りに渡された剣を鞘から抜き、カルラの肩に右左右と3回剣を置いて、緊張しながら口を開く。


「せ、精霊と我が名において、我、汝を騎士とす。わ…我が剣となり、盾となり…我に永劫の忠誠を。」


「精霊と我が名において、永劫の忠誠を誓います。我が身死すまで御身と共に。」


伊織は剣を鞘に戻して横を向けて差し出し、カルラが両手を頭上に掲げて恭しく剣を受け取り誓いを口にした。伊織は他の2人にも同じように同じ誓いを施した。

伊織は身体の力を抜き、ほっと息を吐いた。


「本来なら神殿もしくは城でするんだが、イオリの立場上仕方あるまい。」


「緊張した!これで試験は終わり?」


伊織は顔をぱたぱたと扇いでヴィルフリートを見上げる。ヴィルフリートは頷いて伊織の頬を撫でる。


「余は執務がある。…伊織は新しく騎士になった者と話をすれば良かろう。」


ヴィルフリートはそれだけ言うと身を翻し、早歩きに騎士修練場を出て行った。相当忙しいのを半日無理して抜けていたようだ。視察までに終わらせなければいけない事があると言っていたから、時間も残り少ない。


「じゃ、いこっかー!僕の部屋でお昼でもしながら自己紹介しよ!アニーもフランもたまには付き合ってよ。女子会?」


伸びをしながら出口に向かって歩き、くるりと後ろを振り返って伊織が言うと、アニエッタもフランツィスカも苦笑いした。専属に指名された女性騎士達はぽかんとしている。

伊織は軽い足取りで部屋に向かった。



----------------------------------------------------------------



「じゃあ、全員一人ずつ自己紹介してね!名前と歳と…んー、得意な事と前職とか?」


伊織が話を振るとソファに座っていた騎士が立ち上がり頭を下げる。目配せしていたので左から自己紹介することになったのだろう。


「リタ・ブルクミュラーです。この間24歳になりました。結界魔法が得意で、元冒険者です。」


リタは長い栗色の髪を三つ編みし、薄い緑の瞳の可愛らしい感じの女性だ。当然伊織より背は高いが、こちらの世界の人の中では小さいかもしれない。

次の騎士が立ち上がる。カルラだ。全員自己紹介するように言ったので、もちろんカルラも含まれている。


「カルラ・ヴァイスという。歳は23。風と炎の精霊の適性がある。…前職は護衛をしていた。」


カルラは紺の髪に赤茶の瞳をしている。髪を切った事により、男装の麗人というような見た目だ。

カルラと入れ替わりにその隣の騎士が立ち上がる。


(…この世界って美形多いよね…)


「クラウディア・クロイツでございますわ。歳はもう少しで18になります。弓と水の魔法が得意です。治癒魔法も少し使えますわ。前職はありませんが父が騎士です。」


「クラウディア様は伯爵家の御令嬢です。」


アニエッタが補足として教えてくれる。クラウディアは首を振って否定する。

クラウディアは蜂蜜色の髪に、濃い碧の瞳をしている。髪はサイドにアップして邪魔にならない様に後ろでまとめている。


「同じ主を持つ以上爵位は関係ありませんし、敬称もいりませんわ。」


クラウディアが悪戯っぽく笑ってウインクした。見た目や話し方とは違い、ずいぶん気さくな性格のようだ。

伊織は笑いながら頷いて次を促す。


「私達もですか?」


「僕はアニーとフランを知ってるけど、まだ他の人とは自己紹介してないし?」


首を傾げるフランに伊織が同じ方向に首を傾けて言い切る。フランが顔を戻して立ち上がった。


「フランツィスカ・カロッサですわ。年齢は18。特技は…掃除かしら。前職はないですわ。」


フランツィスカが軽く頭を下げて、見渡して微笑む。隣のアニーにバトンタッチとばかりに手を合わせた。どうやらフランツィスカの家業は秘密らしく、フランツィスカは伊織に目配せした。


「アニエッタ・ブルームでございます。年齢は21歳で、紅茶を淹れる事と魔法も含め護衛術を嗜んでおりますわ。前職はありません。」


アニエッタも軽く頭を下げて、ソファに座る。伊織はお茶を一口飲んで立ち上がる。


「篠原…あ、今は、伊織・ディーゲルマンだった!年は17歳。たぶんもうちょっとで18になるよ。特技は…んー、料理とか。あ、治癒魔法の適性があった!前職は…学生?」


にっこり笑って自己紹介し、ソファに座って再度お茶を飲む。微妙に緊張したらしく、喉が渇いている。


「何か質問とかない?」


「失礼ですが…イオリ様は…17歳と言うのは本当でしょうか。13、4程にしか…」


歯切れの悪いリタの質問に伊織が頬を膨らます。自分が童顔なのは分かっているが、面と向かって言われると流石にムッとする。


「あら、こう見えてイオリ様は凄いんですのよ」


フランツィスカが含み笑いで伊織の胸を見る。その視線を追って皆に胸を見られて、伊織は両手で胸を隠した。


「ちょ、どこ見てんの!」


微かに頬を染めて、そっぽを向く。リタが平謝りして来て、伊織はちらりとリタを見て小さく笑って許す。笑われたリタはホッとした様に苦笑いした。危惧していたカルラについての事は、聞かれなかった。カルラにさりげなく聞くと、どうやら試験が始まる前に説明があった様で、他言無用とされてるみたい。

その後和やかに食事をしながら、交代で休みを取ると言う話に始まり、どこの雑貨がかわいい、どこのスイーツがおいしいなどガールズトークで盛り上がった。その間に食事も終わり、そのままお茶になだれ込んだ。伊織はいまいち入りきれずに聞き専だったが。


(女の子ってこう言う時のパワーすごいなぁ…自分ももう女なのに、ついていける気がしない…!)


「あら、もう夕方ですわね。今日はもうこれくらいにして視察の旅装を準備しなければ。」


「そういえば、イオリ様の街娘姿見たかったですわ…」


旅装、と聞いてフランツィスカが思い出した様に言う。


「大丈夫ですわよ。イオリ様は視察の間に街に出る約束をしていたでしょう?」


「それもそうですわね!イオリ様の街娘姿は是非とも写真コレクションに加えなくっちゃ!」


「え!いつの間にそんなコレクション作ってるの!?僕聞いてないんだけど!」


フランツィスカの発言に聞き捨てならないと伊織が声を上げる。フランツィスカとアニエッタは妙な迫力のある笑みを浮かべて伊織に取り合ってくれない。こうなっては伊織が何と言っても無駄なので、すごすごと諦めた。

騎士のカルラ、クラウディア、リタとは解散して、視察の際の服を選ぶ。伊織は立ってマネキンになるだけで、アニエッタとフランツィスカがああでもないこうでもないと熱心に選んでいる。そうしている間に、ヴィルフリートが迎えに来た。


「…夕食が終わったら執務に戻る。遅くなるから先に眠れ。」


食事をしているとヴィルフリートが伊織に切り出した。伊織は頷いて、ヴィルフリートを見る。少し疲れている様で、僅かだが眉間が寄っている。


「うん…ヴィルさんも忙しいと思うけど、頑張ってね。…それから無理はしないで。」


「分かっておる。余裕を持たせるだけだ。明日の夕刻には終わる。」


ヴィルフリートが伊織を安心させる様に微笑んで頷く。

食事を終えると食後のお茶もそこそこに行ってしまった。


「…大丈夫かなぁ。」


伊織はヴィルフリートの出て行った扉を見て呟く。少なくとも明日の夕方に終わると言ったのだから、その通りに終わるだろう。

伊織は心配しながらも、いつも通り入浴とマッサージをされて、ベッドに入った。


結局ヴィルフリートは夜中遅くまで戻って来なかった。少なくとも伊織が眠ってからだから、結構な時間だろう。

ヴィルフリートがいない為伊織の眠りも浅く、ヴィルフリートがベッドに入った時に一度起きた。でも額に口付けられ、抱き込まれるとすぐに眠りに落ちてしまい、何時かはわからなかったが。

朝は伊織と一緒に起きたが、朝食が終わるとまたすぐに行ってしまう。

そんなこんなで夕方になり、仕事を終えたヴィルフリートが伊織の部屋に来た。

座っていた伊織の膝に頭を乗せて寝転がる。伊織が寝転がっても余裕のあるソファはヴィルフリートには少し小さい様だ。


「お疲れ様。明日は何時に出発するの?」


「9刻だ。…少し休む。食事の用意が出来たら起こせ。」


ヴィルフリートはそのまま伊織の膝に頭を乗せて眠ってしまった。少し重いがその重みが心地よくて、伊織はヴィルフリートの髪を撫でながらはにかむ。


__遠い昔にもこんな事があった様な…。


脳裏に掠かすめた微かな記憶。瞬きの中に融け、意識に残らずに消える。


「…お疲れ様。」


とくりと脈打つ自分の心臓を無視して、もう一度小さく呟いた。

伏線張り巡らせすぎた所為でどこまで回収したかわからなくなってしまった…!

一から読み直すでござる。

うまく伏線を回収出来る技量と文才が欲しい…!(切実)

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