休日ってサボりですか。
ちょっと書くのに苦労してしまった_(:3 」∠)_
「……〜〜つ務は休みだ」
「…ぅ…ん…」
(…誰か話してる…?)
伊織は布団の中でもぞもぞ身じろぎして布団から顔を出し、眼を擦りながら起き上る。瞼に当たる光がずいぶん明るい。口元を隠して欠伸し、んーっと声を出しながら伸びをした。
「起きたか。」
「ふぇっ!?」
掛けられた声に驚いて声がした方を向くと、ヴィルフリートが隣でクッションに凭れながらお茶を飲んでいる。伊織は瞬きを繰り返し、ヴィルフリートから視線を外すと部屋を見渡した。
(…僕の部屋じゃ…ない…)
昨夜の事はうっすらとしか覚えてない。むしろほとんど覚えてないと言った方がいいかもしれない。フランツィスカから飲み物を受け取って飲んだところまでは覚えている。その先があやふや。
明け方にすごく幸せな夢を見たような気がする。それも殆ど覚えてないけど、ヴィルフリートが額にキスしてくれたような。
ギギッと音のしそうなぎこちなさでヴィルフリートに視線を戻す。ヴィルフリートは人の悪い笑みを浮かべて伊織を見ていた。
「伊織は酒を飲まぬ方が良いな。いや、余と飲む以外は禁止としよう。」
「…ごめんなさい。」
今回は全面的に伊織が悪い。自分から添い寝しないと言っておいて、結局ヴィルフリートの部屋に突撃するなんて論外だ。ヴィルフリートの機嫌はすこぶる良さそうだけど。
「そういえばヴィルさん、執務は?」
「余は休みだ。」
「…皇帝陛下に休みなんてあるの?」
「無ければ作れば良い。」
ヴィルフリートが事無げにさらりと言う。伊織はそれでいいのか、と思いながらも懸命に口には出さないでおいた。ヴィルフリートがサイドテーブルにカップを置き、立ち上がった。
「城下に行こうと思うてな。」
「…?…誰が?誰と?」
ヴィルフリートは度々主語が抜ける。ギルベルトになら通じるだろうが伊織にはさっぱりわからない。伊織は首を傾げて、ヴィルフリートの返事を待った。
「余とイオリでだ。ギルベルトに服を用意するよう申し付けた。」
言い終わったと同時にノックが聞こえる。どうやらギルベルトが戻ってきたらしい。ヴィルフリートが入室を許可する。
ギルベルトとアニエッタが手に服を持って入ってきた。アニエッタは服以外にも化粧道具などを持っている。
「お待たせ致しました。イオリ様はここでお着替えください。陛下は隣で。」
ギルベルトがヴィルフリートを居室の方へ促して、扉を閉める。伊織がベッドから降りている間にアニエッタがどこからか持ってきた器に水を満たす。伊織は差し出してくれた器で顔を洗い、立ち上がる。
「市民が着ている服を、と申されましたので…お手伝いいたします。」
アニエッタがベッドに服を並べる。服はドイツの民族衣装のディアンドルの様なもので、短く胸元の刳ったブラウスと前で編上げる胴衣はスカートと繋がっている。色は黒にピンクの刺繍、ブラウスは白、エプロンは白に裾の方にピンクで刺繍されている。
伊織はいそいそと寝間着を脱いで手渡されたブラジャー型の下着をつけ、ブラウスを着て靴下を穿く。アニエッタに編上げの紐を緩めた状態で手渡され、袖を通すと胸を強調する様に腹部から胸部に締め上げられた。
「ア、アニー、胸…胸が!」
伊織が盛り上がった胸を中に仕舞込むように押す。その間にアニーがエプロンを巻いてリボンを結んだ。
「イオリ様、お諦め下さいませ。」
アニーは伊織が慌てるのを余所に微笑みながら伊織の髪を手早く後ろでゆるく結んだ。伊織は諦めて溜め息を吐き、アニエッタに促されて椅子に座った。アニエッタが伊織に化粧をしている時に寝室の扉が開き、ヴィルフリートが入って来た。
「ヴィルさん、僕が着替えてたらどうするの…」
「別にどうもせぬ。」
伊織が咎めるようにジトッとした目で言うと、ヴィルフリートは飄々とした態度で言い切った。ヴィルフリートがノックしないのはいつもの事なので伊織以外は誰も何も言わない。
ヴィルフリートの格好は、普通のシャツに黒のズボンを膝下まである編上げのブーツの中に入れている。腰には革のベルトに帯剣していて、映画などで見たことのある海賊のような格好だ。
「そういえば、どうやって行くの?」
伊織が準備を終えて立ち上がり、首を傾げて問い掛けるとヴィルフリートが伊織を抱き上げた。
「こうするのだ。」
言うと同時に周りが歪む。周りの景色が変わる前にギルベルトとアニエッタが頭を下げているのが見えた。伊織が驚いて目を閉じ、ヴィルフリートにしがみ付く。
「イオリ、着いたぞ」
ヴィルフリートに背中をぽんぽんと叩かれ、伊織は恐る恐る目を開ける。ヴィルフリートに下に降ろして貰い、きょろきょろと周囲を見る。2人の周囲は樹に囲まれており、向こうに家が立ち並んでいる。どうやら街外れらしい。
ヴィルフリートは伊織と自分に魔法をかけて、ヴィルフリートは茶髪に青い瞳、伊織は黒髪に緑の瞳に色を変えた。
「ほら、行くぞ」
ヴィルフリートに手を引かれてキョロキョロしながらも後をついていく。後ろを振り返ると少し遠くに外壁が見える。
帝都は外壁と内壁があり、内壁の中には城と神殿。内壁と外壁の間に街が広がっている。外壁の外には騎士学校と王立学院、見習い騎士の詰所があり、帝都周辺に魔物は殆どいない。農場や牧場なども外壁の外にある。城は高台に建っており、背後は崖で、下には湖が広がっている。内壁を出てすぐに転移門があるらしい。
ヴィルフリートが街中に入る前に大まかに説明してくれた。
「ヴィルさん、お腹空いた…」
「…まだ起きてから何も口にしていなかったな。」
どうやら市場あたりまで来たらしい。威勢のいい掛け声が聞こえてきて、路地を曲がった先には露店よりはしっかりした布の屋根のついた商店が立ち並んでいる。伊織は物珍しそうに余所見をしながら歩いていると、ヴィルフリートに肩を引き寄せられた。
「あまり余所見をしていると、物取りに狙われるぞ」
ヴィルフリートが伊織の耳元で注意した。伊織が頷いて、よそ見しないように気を付ける。
市場を抜けると大通りがあり、大通り沿いにはギルドや武器屋、宿屋などもあるらしい。
(すっごくファンタジーって感じ!)
伊織は内心興奮しながら自然とはぐれない様にヴィルフリートの腕を組んだ。なんとなく視線を感じる気がする。
(ヴィルさん、こんなにカッコいいもんねぇ…)
腕を組んでいることに恥ずかしくなりつつも、人通りが多いため離れずに広場に出た。広場では演奏や大道芸のような事をやっているらしく、活気がある。広場脇にある食堂からいい匂いがするので、そこに入る。
「食事を。…6人前ほど。それに食後に茶を2つと甘いものを1つ頼む。」
ヴィルフリートが店員に注文を言い、銀貨を1枚渡した。
この世界の鉄貨・銅貨・銀貨・金貨があり、銀貨1枚1000フィロ。銀貨1枚で1万円くらい。銀貨10枚で金貨1枚。月の平均月収は金貨1枚くらい。使うところを見るのは初めてだけど。
「釣りはいらぬ。」
(威厳がありすぎて、一般市民が似合わない…)
ヴィルフリートの普通に見えない態度にくすくすと笑いが漏れる。ブランチに払うには多すぎる。店員も皇帝とは思わないものの貴族だと思ったのか、低頭に厨房に入って行った。
「ヴィルさん、言葉遣い直さなくっちゃ。余とか普通言わないし。」
「それもそうか。…俺、で良いか。」
「普通はよい、とも言わないと思うよ」
伊織がヴィルフリートの言葉遣いを注意すると、ヴィルフリートは眉間に皺を寄せている。
料理が運ばれて来るまで暫く言葉遣いの練習をし、食事が始まってからもヴィルフリートが何か言う度、伊織が訂正する。
「食事はうまかったか。」
「うん。いつも食べてる様な上品なのもいいけど、こういう家庭料理って感じなのも好き」
食後のお茶をゆったり飲んでいると、店の外が騒がしい。ヴィルフリートが店員を呼び、何があったか尋ねる。どうやらならず者が広場で露店をしていた者にケチをつけているらしい。
「あいつら、ちょっと前に帝都に来た冒険者まがいなんです。いちゃもんつけて店荒らしてるらしくて。」
「そうか。騎士達は何をしているんだ?」
「逃げ足が早いみたいで捕まらないとか。」
ヴィルフリートは頷くと店員に礼を言い、席を立つ。広場の騒ぎは治まっており、冒険者まがいもいなくなっている。
ヴィルフリートもどうやら関わる気もないらしく、伊織にどこに行きたいか尋ねてくる。
「市場見たい!さっきは通っただけだし、フランが色んな領地や国から行商も来てるって言ってたし!」
「では行こう。」
ヴィルフリートは伊織の肩を抱き寄せて来た道を引き返す。市場に着いてからはゆっくり見て回る。
「…この石が魔石?透明なんだね」
「これに魔力を込めると自分の魔力の色がわかる。瞳に顕れる色は瞳の色に混ざるが、魔力の強い者は瞳にそのまま色が出る。」
3センチくらいの魔石を手に取り、ヴィルフリートが説明してくれる。伊織が感心して魔石をヴィルフリートの手から取る。
「これはいくらだ。」
「2000フィロですよ。」
「もらおう」
ヴィルフリートは店主に銀貨2枚を渡して、伊織に魔石を買ってくれた。伊織は貰った魔石を両手でぎゅっと握って、ヴィルフリートに笑顔でお礼を言った。
「おうおう、色男。可愛い嬢ちゃん連れてるじゃねぇか。」
「うひょー、こりゃ上玉だぜ。」
「嬢ちゃん、俺らと一緒に遊ばねぇ?たっぷり可愛がってやるぜ?」
体格のいい下劣な男達が伊織の腕を引いてヴィルフリートから離し、下品に笑いながら囲い込んで口々に言う。伊織は男達に囲い込まれた事より、ヴィルフリートの様子が心配になる。
「…死にたくなければ、その手を離すんだな。」
「おうおう、強がってんのか?」
「ヴィルさん。お、おち…落ち着いて!」
ヴィルフリートから醸し出される不穏な空気に、抵抗しながら伊織は声を掛ける。直後に男の一人が伊織のスカートを捲る。太腿が露わになり、男達が口笛を吹いた。
「いい身体してんじゃねぇか。」
「肌すべすべだぜ〜」
(ぎゃー汚い手で触んなあああ)
伊織の太腿が触られて、ヴィルフリートがキレた。伊織の腕を掴んでいた男以外は地に伏せていて、残った男の首筋には剣が当てられている。一瞬すぎて、伊織には何が起こったのか分からなかった。地に伏せたものも血が出ていないところを見ると一応は手加減したらしく、気絶してるだけの様だ。男が伊織を解放すると、ヴィルフリートが男の肩を掴んでじわじわと力を加える。
「ひぃ…いでででででで!は、離せ…離してくれ…下さい!」
「死なぬだけ、良かったと思うが良い。」
ゴキッと音と共に男の肩が外れた。男は痛みのあまり失神した様だ。誰かが騎士を呼んだらしく、人混みを掻き分けてこちらに走って来ているのが見える。
「イオリ、腕が赤くなっておるな。斬り捨てるべきだったか。」
ヴィルフリートが赤くなった伊織の腕を撫でる。伊織の腕には手形がついていた。背後で男達は縛り上げられている。
「御協力、感謝致します。最近この辺りを荒らし回ってたゴロツキでして。」
「…死なぬ程度に痛みつけておけ。」
ヴィルフリートはそれだけ言うと伊織の肩を抱いて踵を返し、路地に入った。後ろから騎士が声を掛けて来たが、無視して移動する。
暫く歩いて転移した場所まで戻り、伊織を抱き上げると再び転移して城のヴィルフリートの私室に戻った。
「消毒せねばな。」
ヴィルフリートがぽつりと呟いて、伊織をベッドに降ろし、自分と伊織に掛けていた魔法を解いた。ヴィルフリートは伊織のスカートを捲り上げて触れられた箇所に唇を這わす。
「ちょ、ちょ…ちょっとヴィルさん!やだ、やだってば!」
「すぐに終わる。じっとしておれ。」
「ひゃん!」
暴れる脚を押さえられて、ペロリと舐められた。仕上げとばかりに少し内側を吸われ、鬱血を付けられる。
どうやら消毒と言うのは終わりらしく、ヴィルフリートは伊織のスカートを戻して立ち上がり、魔道具でギルベルトを呼んでいる。
「ヴィルさんのバカ…」
伊織の呟きはヴィルフリートには届かなかった。
補足:誰でも魔力は持っていますが、大部分の人は魔道具で補わないと水を出したり、火をつけたりはできません。
転移魔法は膨大な魔力が必要なので、限られた人のみの魔法で、転移の魔道具も魔力消費が多いです。魔道具があるのとないのでは大違いですが、あっても大部分の人は使えない感じです。
そしてヴィルフリートさんの変態指数がどんどん上昇するΣ(-᷅_-᷄๑)




