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「駄目だよ、木下。あぁいう時は、隙を見せちゃ」

「うぅ、はい」


あれからさすがに図書館に入る事が出来なくて、少し離れた場所にある公園に来ていた。

端の方にある休憩スペースに座った途端、新谷くんに怒られる羽目になったしまったのだ。

確かに隙はあったかもしれないけどー

そこまで怒らなくても。

「それに、なんで裏にいたの。待ち合わせって表じゃなかったっけ?」

「う、あ、その……表の入り口です」

「だよな」

ふぅ、とため息をつく音。

思わず、肩を竦める。


「いつもの木下の強気は、どこに行ったのさ」

「強気? そんな事は……」

「あるね。図書委員になりたいが為のあのじゃんけん、凄い気迫がこもってた」

懐かしい話を……。

話しが逸れてきたことに少しほっとして、強張っていた体から力が抜けた。

「だって、私に風紀委員とか絶対無理だもの」

「だね。さっきみたいなのをあしらえないんじゃ、無理だよね」

納得なんだけど、はっきり言われるとイラッと来るのはなんででしょう。

「新谷くん。資料、いらないんだね」

「いりますいります、ごめんなさい」

不機嫌そうにぼそりと言い放てば、さっきまでの勢いはどこへやら両手を合わせて拝みこんでくる姿が可愛い。

ホントにいろんな面があって、見てて飽きないよなぁ。


私は思わず口元を緩めると、トートバッグごと新谷くんに本を渡した。

「新谷くんが図書室に返却しておいてね。じゃ、私はこれで」

そう言って立ち上がる。

あまり一緒にいるのも、なんかあれだし。

とりあえず休みの日に会えたから、それで良しとしよう。

そう思っていたのに。

「え? 何言ってんの、教えてくれるでしょ?」

「?」

立ち上がったまま首を傾げれば、伸びてきた新谷くんの手が肩に置かれて再び椅子へと逆戻り。

「え、ちょっ、あのっ」

教えるってどういう事?

内心焦ったまま新谷くんを見ていたら、さっさと持っていた鞄からレポート用紙を取り出すと筆記具まで並べ始めた。

「木下、この後用事ある?」

「ない、けど」

「じゃあいいじゃん、課題、教えて」

分からない所だけでいいからさ、そう続ける彼に意図的に仕方がないなぁという表情を浮かべて頷いた。


友達だから!

友達だから、分からない所を教えてって言われてるだけだから!



横目で盗み見れば、なんだか楽しそうに資料を見始める新谷くん。

……うん、一人で意識しててごめんなさいねっ。


内心悪態をつきながら嬉しい気持ちとないまぜな感情で、私はいつも鞄に入れている文庫本に目を落とした。

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