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図書室を出た私は、教室へと向かっていた。
部活に入っていない新谷くんは、だいたい教室で数人と話していることが多い。
廊下にでも呼び寄せて、明日貸すことを伝えればいいか。
そんな事を考えながら、私は意識的に口端に力を込めた。
どうしても彼を思い出すとき、始業式の終わった後、教室での事を思い出してしまうのだ。
新谷くんは、身長が高い。
故に、弊害があるのだ。
本人は気を付けてるらしいけど、油断するとたまに頭をドア枠にぶつけてしまうらしい。
始業式の後、教室に入ろうとした新谷くんが頭をぶつけて皆で大笑いしてしまった。
一瞬、キョトンとした新谷くんは恥ずかしそうに顔を赤くさせた後、誤魔化すように笑って、クラスメイトとじゃれていた。
あれで、クラスの雰囲気が一気に和らいだと思ったのはきっと私だけじゃない。
それ以来、ずっと気になってる。
楽しそうに数人と一緒にいると思えば、たまにぼんやりと一人で窓の外を見ていたり。
明るくて強引そうだなって思う時もあれば、人見知りで少し引いた所で周囲を見てる時もある。
どんな新谷くんも、新谷くんらしいというか。
ふぅ、と一つ息を吐く。
気になるなら、明日会えてうれしいでしょって言われそうだけど。
そうじゃない。
気になる人だから、外で会いたくないのだ。
だって……
「制服で会うわけにいかないじゃない……」
思わず口にして、項垂れてしまう。
はっきり言って、私服に自信がない。
制服ならみんな一緒だけど、私服って……!
でも、古文の苦手な彼が資料もなしに課題を書けるとは思えない。
図書館で、係の人に聞いてくれればいいのに。
そう考えながらも、休日に会えるかもしれないという期待が感情を翻弄する。
あぁぁ、何乙女なことやってんのかしら、私!
そんな事を考えていたら、いつの間にか教室についていた。
思わず、ごくりとつばを飲み込む。
ななな、なんていう?
本貸してあげるから、明日学校に来てって?
うーわー、私何様?
ホントは図書館の方が近いけど、でもなんかそんなところで会うのも気恥ずかしいし。
どーしよ、やっぱやめよっかなぁ。
気になるヒトは気になる人の立ち位置で、決して仲いい人になっちゃいけないというかなんというか……!
「よし、やめよう」
そう決めると、私は勢いよく踵を返し……っ
「木下?」
決意したばかりの私は、開いたドアと駆けられた声に一瞬にして挫けた。




