母の日
花だよ。そう花だよ。
「綺麗な花には棘があるのさ。ふっ! そんな事、言われなくてもわかっているさ。僕も馬鹿じゃないんでね!」
「はぁ? アンタ何言ってんの?」
部屋に戻る途中、俺の横を通り過ぎようとした姉が、不思議そうに聞いてくる。しかも、顔を歪めて。
「まあ、凡人には理解出来ないね。今の僕に何を言っても無駄だよ。ノックを知らないお姉さん! では、アデュ!」
俺は振り向きもせずに、そう言って自分の部屋へと戻った。
「何あれ? 訳わかんない」
姉はそう呟いてキッチンまで行った。
「ねえ、お母さん。アイツ、また変なんだけど……」
「あぁ、あれ? 母の日のプレゼントに薔薇の花をくれたのよ。バカでしょ。カーネーションなのにね」
「で……、何でああなるの?」
「それはね、私に薔薇を差し出した時、棘で指、刺したみたいなの。だから」
「ふ〜ん。じゃ、いつもと変わらないのね。しょうもな〜い」
『名誉の負傷と言えんのか! くそ! バカにしやがって! ……ん? そう言えば、既にバカって言われてたな。なぁんだ、バカにされてないじゃん。じゃあ、いいっか!』
部屋でこっそり聞いていた俺は、そう思った。
う~ん。何かが引っ掛かる……。
いまいちキレがない(涙)