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決戦

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40.魔王のさなぎ

 一週間後。


 魔王がアルバレイズに接近して来た。


 ついに決戦の時が来た。


 エマは檻の中で籠を被り、魔王の皮をむしゃむしゃと食べた。


 途端に体はむくむくと大きくなり、エマは久方ぶりに飛竜へと変身する。


 頭に引っかかっている籠をひっこ抜くと、周囲から歓声が上がる。


 エマはユリウスの手によって檻から出された。


 ユリウスは最後にマントを羽織って、準備完了だ。


 コルネリウスが竜のエマに近づいて来る。


「これが、聖女の力か……」


 エマはもう話すことが出来ない。


「恥ずかしながら、私ひとりの力では国を救えない。聖女よ、頼んだぞ」


 帰るための竜が、エマの後ろをついてくる。


 その竜にはランベルトが乗っていた。


 ユリウスがランベルトに言う。


「いいか?帰りはお前たちが頼りだ。安全を心掛けてくれよ」

「任せろ!」


 ランベルトは安心させるためか、笑って見せた。


 いよいよ出発だ。


 エマはユリウスを乗せる。


 愛しい人。


(絶対に、魔王を倒す……!)


 エマは大空へ舞い上がった。




 空の高い位置にいたはずの魔王は、徐々に地上へ降りて来ていた。


 アルバレイズの谷には、既に王立軍が集って人払いをしている。


 住民が犠牲になる最悪の事態は避けられそうだ。


「エマ、準備はいいか?」


 エマはこくりと頷く。ユリウスとランベルトは急降下して行く。


 二匹の竜は魔王の尻尾を追ってアルバレイズの谷に飛び込んだ。


 ランベルトはそれを見届け、周囲を旋回する。


 魔王は谷底に入ると、体にまとっている炎を消した。


(あのデーモンの言うことは、本当だったんだ。魔王はここで脱皮する……!)


 エマは少しスピードをゆるめる。


 火が消え、皮を脱ぎ始めた瞬間が勝負だ。


「エマ」


 ユリウスが言う。


「変身が解けそうになったら叫んでくれ。ランベルトが助けに来てくれる」


 エマは頷き、少し旋回しながら魔王の様子を注視した。


 魔王は静かになり、わずかに「ペリペリ」と音をさせる。


 エマはその音に反応し、魔王に飛び掛かるようにしてその背に乗った。


 魔王は一瞬身じろぎをしたが、エマはその脱皮の裂け目に思い切り癒しのブレスを吹きかけた。


 裂け目が一瞬で閉じる。


 エマの癒しの魔法が魔王の脱皮するはずだった皮を強固にしていく。


(魔王を……この脱皮の皮に閉じ込める!)


 蛇は脱皮が上手く行かなければ死んでしまうという。


 ならばこの魔王も、脱皮出来なければ死ぬはずだ。


 エマの癒しの息が、魔王の隅々まで行き渡る。皮がどんどん強固になり、ついに魔王は皮の中で苦しみもがき、雄たけびを上げた。


「オオオオオオオオオオオオ!!」


 この世のものとは思えない咆哮が起き──魔王は動かなくなった。


 なおもエマはブレスを浴びせかける。背中でユリウスが言った。


「もう、いいんじゃないか?」


 しかしエマには気になることがあった。


 皮に閉じ込められ暴れ狂っていた魔王が、眠るように大人しくなったのだ。


 まるでこの時を待っていたかのように──あまりにも、安らかに眠っている。


(いいえ、まだ……!)


 かつての聖女の声が脳裏にこだまする。


〝魔王は癒しを求めている〟


(きっとこれが、この魔王の求めていた癒しなのよ)


 ユリウスも、魔王に目を凝らした。


 皮の中で癒され、動かなくなった魔王の姿を見る。


「ん……?」


 ユリウスは、あることに気づいた。


 皮の下で、魔王がぬるりと溶けて行く。


 魔王だったものが、溶けて新たに組織を入れ替えている。


 まるで別の〝何か〟になろうとするように。


「何だこれは……まるで、さなぎじゃないか」


 エマはふと、腑に落ちた。


(そうか。魔王はさなぎになりたかったんだ)


 きっと前の聖女は、そのことを知っていたのだ。


 だが魔王はそれを知らず、人を食べて成長を続けた。


 聖女がいなければ、変わらないで済む。だから魔王は前の聖女を食い殺した。


 けれど聖女は、魔王を変えたかった──


(うう……力が……)


 そこまで考えたはいいが、エマから力が抜けて行く。


(もう、だめ)


 エマは最後の力を振り絞って叫んだ。


「アンギャアアアアアアアア!!」


 エマの変身が解ける。ユリウスは咄嗟にエマを抱き止めた。


「エマ!」


 丸裸のエマを抱いたユリウスが、谷底へと落ちて行く。


「エマ……エマ……ずっと、そばにいるから」


 その声を聞きながら、エマは力尽き失神した。


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ブレイブ文庫様より
2025.11.25〜発売 !
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あわわわわ……!!
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