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決戦

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37.作戦会議

 数日後。


 エマは使用人総出で姿を整えられ、鏡の間に立っていた。


「……どうかしら?」


 エマが尋ねると、メリヤスが言った。


「素晴らしいです!どこからどう見ても聖女様です!」

「王様は、信じてくれるかしら……」


 メイが言う。


「エマ様はありとあらゆる聖女伝説を片っ端から頭に叩き込んだから、大丈夫でしょう」


 クロッシェが言う。


「聖女様と認められなかったら、困るのは王様の方ですっ」

「そ、そっか」


 エマは自らの両頬を叩いて気合を入れた。


「私は聖女、私は聖女……」

「さあ、エマ様。ユリウス様のお出ましですよ」


 扉を開け、ユリウスがやって来る。


 彼はしばしエマを眺め、力強く頷いた。


「うん。これなら間違いなく聖女様だ」


 お針子たちが胸を張って言う。


「聖女伝説から得た知識で作り上げた渾身のドレスです!自信作なのですよっ」

「でも多分、また変身したら破れるよ」

「あ、スペアがあります。ユリウス様、どうぞお持ちくださいませ」

「助かる」


 執事が、受け取ったドレスをカバンに押し込んだ。


「さあ、参りましょう」


 玄関扉を開けると、竜獄から貸し出された竜が待っていた。


 執事は荷物を竜に乗せる。


 ユリウスはエマを竜に乗せた。


「よし、行くぞ」


 竜の群れが、牧場を飛び出し王宮へと飛んで行く。


 空を見上げ、ジャンは言った。


「ユリウス様、エマ様……どうかご無事で」




 空を飛びながら、ユリウスとエマは話し合った。


「魔王を倒す方法は、ひとつではない。でも、一番可能性があるのはこの前ランベルトも交えて話し合った、あの方法なのよ」


 ユリウスは頷いた。


「だとすると、魔王を倒す方法を試せるチャンスは非常に少ない」

「だから、私の魔力を回復させるものをもっと集めて欲しいの」

「脱皮した箇所をしらみつぶしに探す必要があるな……少なくとも、あれには多量の魔力が宿っているようだからな」


 王宮が見えて来て、二人の顔がこわばった。


「エマ、設定を忘れるなよ」

「……分かってるわよ」


 竜の群れが王宮前の動物庭園へ流れ落ちて行く。




 既に庭園は、学者や竜騎士の竜でごった返していた。


 そこに颯爽と降り立ったエマは、すぐに周囲の注目の的となった。


 ユリウスは当然のように、まるで女王でもエスコートするかのようにうやうやしくエマに仕える。


 ひざまずいてエマの手を取る。エマはそれを当然のように受け入れ、彼と手を取り合って再び前を向く。


 騒ぎを聞きつけて、城内から兵士の目や顔が飛び出してくる。


 しばし間があって、衛兵をはべらせたコルネリウスがやって来た。


 彼が見たものは、青い髪、青い目、青っぽい鱗を持った、人ならざる種族だった。


 ユリウスは、王にひざまずく。


 一方のエマは、ひざまずかずに立っていた。


「……ユリウス。これは?」

「申し上げます。彼女が、かの魔王を倒す聖女でございます」


 少し場が冷えた。無理もない、王は自分より立場が上の者を作ってはならないのだから。


「……彼女が?」

「はい。魔王を封印する癒しの魔法を使えることを、私の方でも確認しました」


 コルネリウスは疑り深くエマの頭から爪先を眺めていたが、すぐに違和感を飲み込んでこう言った。


「ユリウスは信頼に値する。君が連れて来たということは──彼女が聖女であろうとなかろうと、魔王討伐の一手にはなるのだろう」


 エマは


(この王様は聖女の真偽より、ユリウスからの信頼を失わないことを大切にしたんだ)


と思った。その時の気分で行動しない、優先順位を分かっている賢い王であると感じた。


「中で話を聞こう。しかし、もし彼女が魔物だったり嘘をついているようなら──その場で処刑することも厭わない。ユリウス、それでいいな?」


 ユリウスは頷いた。エマは頷かず、ただ王を見ている。




 エマが通されたのは、小さな客間だった。そこで待つように、と衛兵に押し込められる。


 ユリウスが扉越しに言う。


「またお迎えに上がります、聖女様」


 エマは、しぼんだようにベッドに腰掛けた。慣れない演技を終え、緊張の糸が切れたのだ。


 ユリウスは別室へ通され、コルネリウスと向かい合った。


「ユリウス。いつも慎重な君にしては、随分と軽率な行動に出たな」


 ユリウスは申し開きせず、首を垂れ、じっとひざまずいた。


「彼女について、今ここで洗いざらい話せ」

「はい。まず、彼女は癒しの魔法が使えます。彼女は竜と人間の相の子で、竜人という種族なのだそうです。そんな人物が魔王復活のこのタイミングで現れたのは、聖女である可能性が高いと感じます。それに彼女は、魔王が出現する前にある予言をしていたのです」

「ほう、予言?どんな」

「はい。魔王復活の前日、誰も見たことがない火の大蛇が夢に出たと話してくれました。その朝、まさに言葉通りの魔物が空を飛んで行きました。聖女様は、それが魔王であると」


 コルネリウスは少し話を戻した。


「どこで聖女を発見した?」

「……ゴドレス谷です」

「この前、治癒魔法を使う竜が現れた場所だな」

「はい」

「その竜の出現と聖女の出現とは、何か関係があるのか?」

「はい。実は──あの不思議な竜が、聖女様だったのです。正確に言えば、聖女様の魔力が最大値まで回復している場合、竜になるようなのです」


 コルネリウスは、じっと考え込んだ。


「……当たらずとも遠からずか」

「?」

「ユリウス。この前君が帰った後、考古学者を集めて話をしたんだ。すると、驚きの文献が出て来た。聖女は人間ではなく、竜と人の間の子なのだと。隣国で、近年そういった伝承が彫られた遺跡が見つかったそうなのだ。その伝承と合致している」

「……」


 ユリウスは、心なしか沈んだ表情になった。


「そうですか。やはり……」

「ユリウスがわざわざ私を騙しに来るとも思えない。信憑性が高まったな」

「……」


 正直、ユリウスの中には、エマが聖女だと信じたくない気持ちもあったのだが。


(この世界のために、君を危険に晒す。すまない、エマ……)

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ブレイブ文庫様より
2025.11.25〜発売 !
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話のわかる王でよかった( ˘ω˘ )
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