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Pandora  作者: アカイヒト
伝説再来篇
9/23

〜灯がともる場所〜

都の住人たちは朝の準備を始め、街には活気が戻りつつあった。

だが、その中には誰一人として、昨晩外で起こった一悶着のことを知らない。

リート、クリウス、マリザもまた帰路につき、いつもの酒場へと戻っていた。


「ここが拠点なの……?」

マリザが酒場を見上げ、少し驚いた表情を浮かべる。

無理もない。このボロボロの酒場が、千年前に世界を救った騎士団の拠点だなんて、到底信じられなかった。


「……はい。」

クリウスがしばらく黙った後、ようやく答える。


「酒が飲み放題だぞ!」

リートはあっという間に先ほどの悲しげな表情をどこかへ押しやり、明るい笑顔を取り戻していた。


「たっだいま!」

リートが酒場の扉を開けると、動きがピタリと止まる。


「なんだ、これ!?」

リートが声を上げると、クリウスも驚きの表情を浮かべた。

昨日まで蜘蛛の巣だらけだった内装が、今やピカピカの酒場に変わっている。

二人が呆然と立ち尽くしていると、奥から男の声が聞こえた。


「みなさん!お帰りなさいませ!」

厨房から現れたのは、見知らぬ男だった。

年齢は30代後半か、立派な口髭を生やし、肩にインコを乗せた白いエプロンを身につけている。


「あの……誰ですか?」

クリウスが思わず声をかける。


「私は、帝国から派遣されました。皆様のお手伝いをさせていただきます。ギヨームと申します。」

ギヨームと名乗った男は、インコと一緒に深々とお辞儀をした。

(協力者の一人か?)


「ということは、おっさんは今日からここのマスターだな!」

リートがにやりと笑い、続けて


「マスター!酒!」

と声を上げた。


「朝から酒ですか。」

ギヨームは微笑みながらも、すぐに酒瓶を手に取る。

後から入ってきたマリザが、ふっと口を開いた。


「あら、内装はなかなかいい感じじゃない。」

皆が適当な椅子に腰掛けると、ギヨームは再び口を開いた。


「この建物は3階建てですので、皆さんのお部屋も整頓しておきました。後でご確認ください。」

リートはそれを聞くと、ドタドタと音を立てて二階へ駆け上がった。

天井からは楽しげな声が響く。


「この部屋は俺のだ!」

クリウスとマリザは無視して、会話を続ける。


「《パンドラ》再結成のための協力者ですか?」

クリウスが尋ねる。

ギヨームはグラスを磨きながら答えた。


「はい、皆様のお力になれればと思い、ロロイ団長からお話をいただきました。」

クリウスはふと、ロロイ団長のことを思い出す。

時に厳しく、時に優しく、誰からも慕われる人物だった。

このカオスな人達の中に人格者を投入してくれたことに、クリウスの団長への好感度が一層深まる。


「これからよろしくお願いね、マスター。」

マリザが微笑みながら言う。


「それで、クリウスちゃん。」

マリザが視線をクリウスに戻し、少し真剣な口調で続けた。


「パン捜索の話の前に、リートに稽古をつけてもらった方がいいんじゃない?」

その言葉に、クリウスはハッとした。

先ほどの戦いで、足手まといになってしまった自分を思い出す。


「……私も、そう思っていました。」

再び天井からリートの声が響く。


「ベッド、ふかふかだぁぁぁ!」

クリウスはマリザに尋ねる。


「——マリザ様から稽古を付けてもらうことはできないのでしょうか?」

マリザはにっこりと笑う。


「私が教えられるのは魔法のことだけよ。あなたはまだ固有魔法もないようだし、リートに剣を習った方がいいと思うけど?」

その言葉が終わると、二階からリートが降りてきた。


「クリウス!ベッド凄いぞ!」

マリザはリートに視線を移し、軽く口を開いた。


「リート、ちょっと話があるんだけど。」

マリザが椅子を指差し、リートはゆっくりと腰を下ろした。


「なんだ?」


「クリウスちゃんに稽古をつけてもらえないかしら?」

その瞬間、リートの目が輝いた。


「つまり、クリウス君、君は俺の弟子になりたいというわけだ!」

クリウスは苦笑いを浮かべながら答えた。


「実に不本意ながらな。」


「実際、俺は今足手まといだ。だから強くしてくれ。頼む、師匠。」

リートは“師匠”と呼ばれることに、どこか嬉しそうな表情を浮かべた。


「よし、決まりだ!さっそく手合わせに行くぞ!」

リートが勢いよく酒場から飛び出す。

(こいつに教わって、本当に強くなれるのか……)

クリウスは疑問に思いながらも、リートの後を追いかけた。

ここまで見てくださった皆様、ありがとうございます。今後から、22〜23時ぐらいに投稿していこうと思います!

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