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Pandora  作者: アカイヒト
帝国堕天篇
36/39

第三十四話 〜次の審判〜

——ガタンッ!


酒場の扉が大きな音を立てて開いた。


店内で剣の手入れをしていたロロイは、咄嗟に顔を上げる。


そこに立っていたのは、ボロボロの姿で息を切らすマリザとパンだった。


「どうしたんですか!」


ロロイは慌てて駆け寄る。


厨房からはギヨームが、肩にインコを乗せたまま顔を出した。


「お二人がここまで傷つくとは……。《黒い羽根》の連中ですか?」


ギヨームの質問にパンは苦々しく息を吐き、椅子に腰を落とす。


「ええ。それも“六翼の使徒”が二人がかりで襲ってきましたよ。」


その言葉に、ロロイの背筋を冷たい汗が伝う。


(この二人が、ここまで……)


「《黒い羽根》、想像以上に手強いのですね……。」


パンは首を横に振った。


「いえ。《黒い羽根》そのものより、幹部である“六翼の使徒”。警戒すべきはあの六人でしょう。」


重い沈黙が落ちる。


ロロイの視線は、マリザへと向けられていた。


酒場へ戻ってきたというのに、どこか魂が抜け落ちているような、生気のない表情。


「マリザ様……大丈夫ですか?」


声をかけられ、マリザはゆっくりと顔を上げる。


「ええ……大丈夫よ。ごめんなさい。それより“六翼の使徒”のことね。」


その声音は、いつも通り冷静だった。


だが、パンの表情が違う。

彼はどこか痛ましげにマリザを見つめていた。

マリザはパンへは視線を向けずに話始める。


「一つ、気になることがあるの。」


マリザは淡々と続ける。


「今回襲ってきた二人は、六百年前に私が育てた弟子だった。」


ロロイは息を呑む。


(……それでここまでやられたのか。)


伝説でしか知らなかった“聖女マリザ“、

彼女の“過去”の重さを、初めて実感する。


「そして、帝国団長のロロイちゃんを捕らえたのは、副団長――“パトラン=ペロン”。間違いないわね?」


突然名を呼ばれ、ロロイは姿勢を正す。


「は、はい。間違いありません。彼女は副団長でした。平民出身の私を、快く思っていなかったようですが……。」


パンが小さく呟く。


「……出来すぎていますね。」


マリザが頷く。


「ええ。パンと合流する前のメンバーに対抗する人物が、“六翼の使徒”を構成している気がするの。」


酒場に、再び沈黙が落ちる。


ギヨームは空気を壊さぬよう、インコの嘴を押さえたまま固まっていた。


その時、ロロイがはっとする。


「では……次はリート殿とクリウスが標的に!?」


マリザとパンは目を合わせる。


「パン、私の予想では四人目の“六翼の使徒”は――」


言葉を遮るように、パンが低く答えた。


「分かっています。“彼”は常に時代の勝者へと身を置く男です。そしてリートと関わりが深く、確実にこの時代でも生き残っているでしょう、可能性は高い。」


ロロイは眉をひそめる。


(……誰のことだ?)


だが、その名は語られない。


パンは深く息を吐く、その目は遠くを見ていた。


「次の審判は、あなたのようです——リート……。」

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