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Pandora  作者: アカイヒト
帝国堕天篇
26/33

第二十四話 〜作戦開始〜

「本当にこの作戦でいけるんだろうな……」


クリウスは、隣で黒いローブを深く被っているリートに声をかけた。


「だーいじょうぶだって。」


ニヤリと笑うリートを横目に、クリウスは大きくため息をついた。


――十分前。


クリウスたちは騎士団長ロロイの救出作戦を立てるため、拠点の酒場で会議を行っていた。


「彼がいるのは、騎士団宿舎の地下にある牢獄ね。」


マリザは真剣な表情で水晶を覗き込む。


「見張りは……“堕ちた騎士”が100名、教団員が50名ほど。それと宿舎にも強力な結界、ずいぶん厳重ね。」


「“《黒い羽根》には帝国一の男でも敵わなかった”ってことにしたいんでしょう。」


パンが口を挟む。


リートは腕を組み、考えるような顔で口を開いた。


「ロロイはだいぶ強かったんだけどな。そう簡単にやられるとは思えないんだが……」


「お前、団長に余裕で勝ってただろ。」


クリウスが尋ねる。


「いや、悪魔の力を使わなかったら、下手したら負けてたぞ。」


その言葉にマリザとパンは驚いた顔をした。


「千年前と比べて人類は弱くなってきてるのに、ロロイちゃんって子、やるじゃない。」


——クリウスはその言葉を聞いて、ほくそ笑む。


《パンドラ》の面々に団長を褒められて、クリウスはなぜか自分のことのように嬉しくなった。


「まあ、強行突破で行けるだろ。」


リートはニヤリと笑う。


「だめよ! 騙されてたり、催眠状態の者もいるかもしれないのよ!」


“聖女”のもっともな意見に、リートは再び考え込む。


「殺したらダメとなると……」


するとリートは勢いよく立ち上がり、ニヤリと笑った。


「いーこと思いついたぞ。」


一行はゾッとする。


「まともな案なのですか……?」


パンが苦笑しながら尋ねる。


リートはみんなに視線を向け、作戦を語り始めた。


――現在。


「こんなんで潜り込めるのかよ……」


クリウスとリートは、黒いローブで目元を隠しながら騎士団宿舎へと到達した。


「おう! どっからどう見ても仲間の教団員だろ!」


――リートの作戦とは、黒いローブで全身を隠し、悪魔信仰者になりすまして宿舎に潜入する、というものだった。


「まさか、パン様が許可するなんて……」


クリウスは心のどこかで、賢者であるパンならこの無謀な案に反対してくれると思っていた。だが――


「やってみますか。」


パンはあっさりとゴーサインを出した。


「マリザが俺たちが騒ぎを起こしている間に結界の解析。解析終了と同時に、パンが地下から潜入、完璧だな。」


リートは得意げに呟く。


その時――。


「お前たち! ここから先は重罪人ロロイ=カルベルトを収容している。近づくでない!」


“堕ちた騎士”の門兵が声を荒げた。


その顔を見て、クリウスは驚いた。


「ニコロ! 俺だよ、クリウスだよ!」


ニコロと呼ばれた男は警戒を解き、クリウスに声をかけた。


「クリウス! お前も“こちら側”に目覚めたか!」


それを見たリートが小声で尋ねる。


「お前、知り合いなのか?」


クリウスはニコロとリートを交互に見て、紹介する。


「俺の同期の男だ。年が近いからよく一緒に稽古してたんだよ。」


ニコロは懐かしそうに笑う。


「あの時は大変だったな。ロロイによくしごかれてたっけ。まあ、そのロロイも今じゃ……」


ニコロは歯を食いしばり、低い声を漏らす。


「国家転覆の重罪人だ。ついていく相手を間違ったようだ。」


クリウスが反論しようとした瞬間、リートが先に口を開いた。


「あぁ! あいつはダメだな。俺は新しく見習いになった……ジルだ! よろしくな!」


リートは手をかざす。


「そうか、よろしくなジル。」


ニコロは安心したように微笑む。


クリウスは怒りを抑えながら、話を合わせた。


「ニコロ、俺たち、ちょっと用事があってさ。通してくれないか?」


「その“用事”ってなんだ?」


疑いの目が向けられる。


「あぁ、俺たちまだ“契約”してないんだよ。」


リートが横からさらりと答えた。


(契約?)


クリウスの疑問をよそに、リートはにこり。


「そういうことか! さあ、早く行ってこい!」


ニコロは笑顔で道を開けた。


「お、おぉ! ありがとな!」


クリウスは意味もわからぬまま門をくぐる。


「なあ、“契約”ってなんだ?」


振り返ると、リートは真剣な表情で宙を睨んでいた。


「まさかな……」


リートが呟く。


「な、なあ。ここからどうするんだ?」


クリウスの問いに、リートはいつもの笑顔で振り返った。


「騒ぎを起こす。これしかないだろ。」


その手には――無数の長い筒が握られていた。

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