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Pandora  作者: アカイヒト
伝説再来篇
1/22

〜希望の灯火〜

新作です。中世ダークファンタジーで、悪魔と人類の戦いや千年前の騎士団パンドラの真相を描いていきます。

初投稿なので、読みやすさを意識しながら進めます。どうぞよろしくお願いします。

【プロローグ】


半月形をしたディアナ大陸。

その東方に位置する大国――聖アストリア帝国。


帝国の片隅にある小さな村では、夜になっても広場が明るかった。

一人の旅芸人が、炎の舞を披露していたからだ。


掌の炎は生き物のように揺れ、形を変え、夜空へ舞い上がる。

子ども達は声を失い、大人たちさえ見入っていた。


旅芸人は笑みを浮かべ、炎を天へと放る。

その瞳には旅の埃と、どこか遠い影が宿っていた。


――誰も知らない。


この夜こそが、千年の眠りから運命が再び動き出す夜であることを。


          ***


【第一話】〜希望の灯火〜


今日ここで死ぬ――そう思った。


目の前の怪物は嫌でも悟らせてくる。

鋭い眼光、岩のような身体、背には黒い翼。


昔話で聞いた、“悪魔”そのものだ。


(聖都に出て騎士団入りしたのに……見習いだけど)


クリウス=ヘールは乾いた笑いを漏らす。

三年前に村を飛び出し、聖都デラークで修行。

半年前にようやく《帝国騎士団見習い》となったばかりだ。


今日は久々の休暇。

村に帰ると、旅芸人の炎の芸で盛り上がっていた。


その最中――村外れで爆音が響いた。


駆けつけると悪魔が現れ、村人は逃げ出した。

あとは正式な騎士が来るのを待つだけ……だが。


「里帰りした途端にこれか」


悪魔が腕を振り下ろす。

視界が黒に染まる――はずだった。


何も起きない。


「え?」


目を開けると、旅芸人が前に立っていた。

さっき舞台で炎を操っていた、あの男だ。


男は当然の顔で言った。


「まだお駄賃もらってないんだよ!」


「な、何をしたんだ……?」

「蹴ったんだよ。」


……いや、悪魔を蹴って倒した?


会話が終わった瞬間、悪魔が地面を叩き砕く。

土煙――旅芸人は消えた。


「まったく、なんで今頃出てくるかねぇ」


背後に立っていた。

まるでそれが当然の位置であるかのように。


「少し下がってろ」


声の調子が変わり、男は腰を落とす。

刀が抜かれ、刃が囲炉裏火のように赤く揺らめく。


次の瞬間――炎が走った。


悪魔が一歩踏み込んだ、その身体が裂ける。

炎の筋を残し、真っ二つに。



「……なんだったんだ、今のは」


息を飲むクリウスの背後に旅芸人が立っていた。


「背後取るのが趣味なのか?」

「もしもの時の盾だな!」


本人だけが楽しげだ。


「お前……何者なんだ?」


男は口の端を上げる。


「旅芸人、リート=ジンだ。よろしくな。」


その名前で、胸の奥がざらりとした。

どこかで聞いた気がした。


「帝国騎士団だろ? でも弱いな、見習いだ……その模様、聖都の紋章だろ。当たりだな?」


なんて失礼な男だ。大当たりだが。


「だが普通の旅芸人は、あんな戦いはしない」

「俺は普通じゃない。」


リートは炎のような瞳で笑う。


「なんたって――伝説の騎士団パンドラの団員だからな。」


冗談だと思った。


……だが、リートの背で揺れる炎が、夜風に溶けて消えた。


ほんの一瞬だけ――

“伝説”が現実と重なった気がした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

なるべく頻繁に投稿していきます。

次回はリート=ジンの正体について詳しく書いていきます。どうぞよろしくお願いします!

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