血の契約
ミロ…手口が…
「ミロ君、私を警察に突き出す?」
深夜の公園でブランコのポールにもたれかかってミロ君と話していた。
「ふふふ」
ミロ君はブランコに乗って立ち漕ぎしていた。
「私はね、婦人警官だったんだあ。」
「へえ。」
「生活安全課のね、人身安全対策課ってね。ストーカーやDV被害の事件なんかを扱ってたの。」
「そう。」
「被害者や、その親御さんとも仕事で色々関わってたの。特に若い女の子の被害は辛くてね。私も娘が居たから。」
「そうなんだ。」
「その私の娘がね、15の時にストーカーされてね、犯人にレイプされたの」
「そう。」
「でね、最後は自殺しちゃった。私は仕事で扱ってた様な事件の被害者になってね、仕事に向き合うのが辛すぎて警察辞めちゃったんだ。」
「そっか。」
「でね、暫くは何も出来なかったんだけどね、昔扱った事件の被害者から連絡来てね」
「うん。」
「その被害者もレイプされててね、犯人は一度捕まったんだけどね、また出てきてたの。」
「そう。」
「怖いからどうしようって相談受けてね、ソイツの身辺を調べたの」
「うん。」
「そしたらまた別の人に手を出してたの。こう言う性犯罪って更生は中々しないんだよ。ある種病気だから。」
「そうなんだ。」
「だからね…その時初めてソイツを消したんだ。この世から。」
「ふうん」
「それがキッカケでね、人伝てにそう言う被害者や被害者遺族から依頼が来る様になったんだあ。」
「そっか。」
「今では法で裁ききれない奴を始末する殺し屋みたいな事してる。元警察の癖にね。あはは」
「でも、それで救われてる人も居るんだろうね。」
「どうだろうなあ。結局は自分が救われたいから同じ境遇の人の願いを聞いてるんだろうなあ。」
「佐川さんはそれで救われてるの?」
「分からない。救われた気になってるだけかもね。」
ここまで話し終えた時、ミロ君はブランコから降りて近づいて来た。
「じゃあね、この事警察に言わない代わりに僕に血を少しくれない?」
「おばちゃんの血を吸いつくして殺しちゃう?」
「ふふふ、舐める位でいいの。佐川さん良い人そうだし死ぬまでは吸わないから。」
「舐める位で足りるの?」
「うん。その代わり定期的に舐めさせてくれない?そうしたら警察に言わない。」
「いいよ。」
「交渉成立だね。じゃあ佐川さん、手首出して?」
「っ、」
動脈から少し離れた手首の内側に牙を立てて出てきた血を舐めた。
何だか夜の街灯に照らされた青白く細い少年が赤い舌を出して血を舐める光景は淫美だった。
「じゃあ、また来月の同じ日の同じ時間にここでね。来ないと警察に言っちゃうよ。ふふふ」
そう言って立ち去った。
多分私ならあの子をねじ伏せるのも簡単だったかも知れない。
しかし吸血鬼と言う話を信じたのか、別の理由か分からなかったけど、何故かそうする気になれなかった。




