ミロとお出かけ
「ミロ君、今日でお別れなんだ。」
「どうしたの?」
「私のね、依頼が終わったの。」
「へえ。」
「まあ、私が手を下す前にね、事故に遭って終了したって感じかな」
「そうなんだ。」
「まあ、最後の仕事で手を汚さなかったのは理沙がもう止めろって言ってるのかなって思った」
「ふうん。」
「柿安も結局自殺で終わったし。理沙が連れてってくれたのかな。あはは」
「そうなんだ。」
「私もね…理沙の所行こうかなって思ってるんだ」
「ふうん。じゃあこの先は辛い思いしてる人を放っておくんだね」
「…」
「じゃあさ、最後に僕に付き合ってよ」
「?」
「僕の行き付けの楽しい所。ふふふ」
「こんな時間に?」
「夜中しか動けない僕が行ける所だからね。」
「そう。まあ良いわ。行きましょう」
○○○○○○○○○○
ゴンゴンゴゴゴンゴンゴゴゴン
ミロ君が不思議なリズムでシャッターを叩いた。
「カギ開けた。横の扉から入れ」
そう声がしてミロ君が扉を開けた。
「さ、行こ。佐川さん。」
ミロ君と中に入った。
ここは商店街の雑貨屋だった。
多分昭和からある様な店構えだ。
たまにそう言う店を見かけるが、どうやって商売を成り立たせているのか常々不思議だった。
多分家賃も高そうなのに…
周りは綺麗なカフェや有名ファーストフード店や貴金属の買取などのチェーン店やマッサージ店やラーメン屋や…
元々地主で暇潰しにやってるような店なのかも知れない。
現に中に入って置いてある品物を見ると茶碗やマグカップや皿などいつの時代の物か分からないものが並んでいたり、吊り下げられてるキッチンマットに被せてあるビニールは埃で黒ずんでいたり、今どき使う人などいるのか分からないシュロ箒や熊手やら…
サンダルも昔で言う所の便所サンダルだ。
売る気を感じない…
そんな店内を進んで行き、奥のこれまた昭和な模様入りのガラス戸の前まで来た。
「おじい、友達連れて来たよ」
「ミロか、入れ」
そう言われてミロ君がガラス戸を引いた。
中には少し気難しいそうな老人がいた。
丸メガネで薄手の半纏を羽織り、頭にニット帽を被っていた。
「お前、名前は?」
「佐川と言います。」
「何出来る?」
「えっとねー、殴ったり蹴ったり刺したり?」
ミロ君が大雑把な事を言っている…
「なら、パワー型か。」
「あとねー何か射撃が凄いみたいだよ。友達とオリンピック代表競ったんだって。」
競ってはないけど…
「なら狙撃も出来るのか」
「あの…私は何の説明も無くミロ君に連れられて来たんですが…一体ここは何なんでしょうか?」
「チッ相変わらず適当だなあ。ミロ」
「何か難しいからおじいからお願い。」
「しょうがねえなあ」