出会い
あのシゴデキ佐川さんは…
「いらっしゃいませー」
「えーっとね、今日は唐揚げ弁当3つ、一つ大盛りで、後はー、トマトジュース1つ。」
「はーい、出来たら呼ぶから座って待っててね!」
「はーい。」
この子は定期的に深夜に弁当を買いに来ていた。
黒いフリルがついたゴシックな感じのブラウス、膝下位の中途半端な長さのズボン、黒いハイソックスに革靴…
髪は黒くてやや長め…
見た目は中学生位の細い子供だ。
「はい、お待たせ。これサービス、お子様弁当に付けてるブドウゼリーね」
「僕、イチゴが良い。」
「もー、オマケなのに我儘だなあ。はい、イチゴね」
「有難う、佐川さん。」
「いつもこんな遅い時間に来るけどお使い?」
「そう。僕、日の光に当たれないから夜中しか出歩けないの。ウチには食べ盛り1人と中年2人居てね。今日は徹夜だって言ってるから元気出そうなメニューにしたよ。」
「そう、ご両親もお仕事大変なんだね?お手伝いしてるんだね」
「ふふふ」
「おばちゃんも君位の娘が居たから心配だなあ。」
「僕はね、ミロって言うんだよ。」
「そう、ミロ君…でもこんな夜中に出歩くのご両親心配しない?」
「大丈夫だよ。僕、215歳だから。吸血鬼だから夜中しか出歩けないの。」
そう言ってその子はにいっと笑った口から牙が見えていた。
揶揄われたのだろうか?
しかしさっきチラッと見えた牙が気になる…
日に当たれないの言葉通り、アルビノみたいな白子とは違う。
日に全く当たってない白さだ。しかも男の子でこの年頃…色が白すぎる。
その子と入れ違いにサングラスを掛けたガラの悪い格好をした若い男の客が入って来た。
「生姜焼き定食、大盛り」
「はーい、出来たらお呼びしますんでそちらで座ってお待ちくださいー!」
深夜の弁当屋は比較的落ち着いている。
客も常連が多くさっきの子や今の男など、大体顔も覚えるしいつ頃来るか行動パターンも覚える。
「お疲れ様でしたー。」
明け方4時に交代のバイトが来たので仕事を終える。
「佐川さん、来週で辞めちゃうんですね…」
「はい、すみません…」
「深夜出来る人少ないから助かってたけど…また何時でも戻って来てね」
「はい、有難う御座います」
「そろそろかな…」
帰り道、小さな声で私は呟いていた。
他にも週3日、別の場所で家政婦として働いている。
そこはお金持ちのお宅で他にも家政婦や使用人が数人いて、それぞれ仕事を割り振っている。
私はそこでは主に食事を作っている。
○○○○○○○○○○
『大体目処が立って来ました。今週中には決行します。』
『宜しくお願いします』
その返信を確認して、ショートメッセージを消去した。
「グフっ!」
明かりが殆ど無い路地裏で男は鳩尾に一撃を食らって倒れ込んだ。
掛けていたサングラスは地面に落ちた。
その後、顔や体に蹴りを入れられてあちこちに痣が出来た。
その後、ナイフでメッタ刺しにされて、やがて息を引き取った。
「行きずりの相手と喧嘩の末の殺人…」
そう呟いた。
「佐川さん…強いんだね。」
その言葉に驚いて振り返ると
自称215歳の吸血鬼の少年がニィッと牙を見せて笑っていた。