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彩眼の次男は兄夫婦の史実を暴露したい!~リア充爆発しろ、婚姻録~  作者: まるちーるだ
一章 雪の戦場、捕らわれの姫君 ~これってラブコメですか兄上!?~

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六十九節 反転攻勢3


まるで悪夢でも見ている気分です。


展開し、発動した魔法陣。


老化の魔法陣は、正しく動き続けている。


魔法陣の下、昆明の作った黄色い結界の檻。

昆明の結界魔法を補助するために、私も結界魔法を展開する。


その中でブクブクと膨れ上がっていた内臓のようなものが徐々に形を変えていく。

内臓のようなその形がドクッ、ドクッ、と脈打ちながらいくつかに分かれていく。

赤く光り輝く『核』をその肉が包み込み、見覚えのある形をかたどっていく。


ドクッ、ドクッ、と脈打つその形は――心臓。


作りあがった他の物体も、肺、消化器――脳。

どれも、治癒士ならば構造を知るべき内臓が模られていく。


その内臓を包み込むように、白いものが浮かび上がった。

脚、手、肋骨、骨盤――頭蓋骨。


まるで内臓を包み込むように出来上がった白。


そして今度は筋張った肉が更に包み込んでいく。


そのシルエットは――女性。


『いやああああああああ!』


どんどんと、叫び声が『女性』の声に近づいていく。

ただ、その模られていく形は徐々に小さくなっている。

大規模な魔法陣から、少しずつ、少しずつ、人間ほどの大きさに近づいてくる。


地面に這いつくばって、その物体はドクン、ドクンと脈打つように胸を大きく上下させる。


『やだああ!おねがい、いあああああ!』


響き続ける悲鳴に、兄上も、光さんも、澪さんも、剣を構えたまま動けずにいる。

三人は私と昆明を守るように前に居りますが、この状態からどうしていいか分からないのでしょう。

私も、多分昆明も、どうしていいか分からない。


まるで、女の人が叫びながら地面で転がり続ける様子を、ただひたすらに見せられている気分だ。


「泣いている……」


ポツリと呟いた声に全員の視線が向いた。


「お父様……が、たべ……」


小さな声。

カラン、っと剣が離された音が響いた。


剣を離したのは白い軍服を纏う――光さん。


光さんの目が虚ろになったように視点が合っていないのが見えた。

一筋、彼女の目から涙が頬を伝って、落ちた。

グッと、自分の胸を抑え込むように、体勢が崩れた。


『だすけてえええ!』


聞こえた悲鳴に呼応するように、光さんが歩み出そうとした。


「光さん!」


咄嗟に兄上が、光さんの腰に腕を回しました。

綺麗に腰に回された腕に、思わず拍手をしたくなるほど華麗な抱き止め方です。


「え?」


澪さん、あの、その、なんというか、『何しとんじゃワレェ!』みたいな顔辞めていただけないでしょうか?

緊急事態ですので。


「えっと?」


兄上に抱きしめられたところで、驚きすぎて彼女の金色の目がこれでもかと大きく見開かれております。


「光、今『蝕毒アレ』と共鳴しちゃったの!」


澪さんが焦るようにそう叫ばれました。

共鳴?と口にしようとしました。


『おどおおざああああん!』


『蝕毒』から出た悲鳴が、更に響き出した。

その絶叫は、女性の声にしか聞こえなくなってきた。

『蝕毒』は地面に這いつくばったままピクリとも動かなくなった。

ただ、何故かその姿が泣いて、肩を震わすようにしか見えない。


「っつ!」


光さんが『蝕毒』からの奇声に、頭を押さえて、頭が痛そうな苦悶の表情をされた。


「ちっ、こんな時に」


忌々しそうに光さんは前を見ました。

彼女は苦しそうな顔で、ジッと『蝕毒』を見ます。


ふと、『蝕毒』に色があるのに気が付きました。

彩眼で見える感情の色。


紫と黒。

そしてその黒の中を稲妻のように走る赤。


「あの人……人間っ!くそっ!」


ガクンっと膝から力が抜けたような光さんを、抱き止めたのは兄上で、そのまま兄上が光さんを座らせた。


「光!落ち着いて!魔力を循環させて!」


澪さんが焦るように光さんの手を取りました。

その瞬間、彼女は驚くように目を丸くしました。


「って、『白石の腕輪』!?やばい、私、魔力コントロール苦手なのよ!?」


『たべだぐなああああああああい』


「いやだ、おとうさん、食べたく、ないっ」


頭が痛いのか光さんは自分の髪を掴みます。本来の黒髪を、魔法で金色に変えたその髪をぎゅうっと掴んで、そして苦悶の顔を浮かべます。


「澪さん!?どういうことですか!?」


「えっと、光の血統魔法って、『負の感情』に共鳴しちゃうの!普段なら魔力循環を自分でしちゃうんだけど、多分、『白石の腕輪』で出来ないんだと思う!?」


「共鳴?」


「自分が誰か分からなくなるの!一番ヤバいのは、記憶を見ちゃうの!

死人の記憶を見ると精神が壊れることもあるの!

今ヤバいのは光が、『蝕毒』の記憶を今見ちゃっているっているかもしれないってこと!」


焦りながらも彼女は光さんの手を握って、魔力を流し込んでいるようです。


「あ、いや!やめって!」


叫び出した光さんは髪を掴む手から力が抜けて、目の色が濁ったように虚ろになっていく。


「光、違う、それは違う!

貴女は『一条 光』!私の妹よ!」


ぎゅうっと握った手をしっかりと掴む澪さん。


「ダメ、どうしよう」


手を強く握ったまま、震える澪さん。それでも魔力を流し続ける彼女の浮かべる色が黒くなりかけた。


「魔力を、循環させればよろしいのですか?」


澪さんの隣で屈んだ兄上が尋ねます。


「そうなんだけど!私は魔力人並み以下で、光に押し負けちゃうの!」


そう言いつつも、必死に魔力を押し込んでいる澪さん。

浮かべる色が不安を表す紫色が絶望の黒に変わる。

それでも魔力を何とか光さんに送ろうとしているのが見えます。


ハタっと、光さんの浮かべる色が、『蝕毒』と全く同じ色をしているのに気が付きました。


「前にも、ありましたね」


懐かしそうに、兄上が、呟きました。苦しそうに胸の服を掴む光さんを、兄上は地面……というか瓦礫の上に寝かせます。


「澪さん、すみませんが、一気に魔力を循環させるので、手を離していただけますか?」


「え?」


澪さんが驚きつつも、顔を上げました。


「一気に魔力を循環させます。混じり込んだ魔力を外に出せば問題ないってことですね?」


兄上の言葉に澪さんはコクリと頷かれました。

ゆっくりと手を離される澪さん。

私は咄嗟にですが、澪さんの目元を隠しました。


ええ、兄上がこれからすることが何となく想像がつくからです。


というよりも、彩眼で見ていれば、赤黒い魔力が光さんの中に混じり込んでいるのが見えます。


これを追い出すとなると、ソレしか方法はないでしょう。


「えっ!?」


唯一、驚いた声を上げたのは昆明でした。


それもそうです、兄上が光さんの口から魔力を一気に注ぎ込んだのですから。

ええ、手っ取り早く、確実な方法です。


「えっと、私、なんで目元隠されたのかな?」


澪さんが戸惑ったような声でそう尋ねて来られました。


「えっと、子供には早いです」


「私、君と同じ年、あと既婚だよ?」


「えーと……」


「ん?魔力がなんか……あ、ああ、あああ!?そういうこと!?え、ちょっ、え!?」


澪さん、魔力探知は出来るタイプなのですね。

多分感じてしまったのでしょう、光さんの身体に、兄上の魔力が満ちていく様子を。


私も一応、目を逸らして『蝕毒』を見つめます。


まるで泣いている女性。


でも『老化』を展開したはずの魔法で、何故『蝕毒』が人間の形になったのか。

元々、私たちが見ていたあの肉の塊のような『蝕毒』が人間を遺伝子改良されたものだとしたら?

あの姿が細胞分裂前の形で、『老化』させたことで人の形になったとしたら?


そう考えると『蝕毒』は人間から作られたもの?


でも、何故?


『お父さんを、食べたくない。お願い、私を、殺して』


静かに、でも確実に聞こえた声に息を呑みました。

私だけではなく、澪さんも、昆明も、同じく息を呑みます。


「ちょっ、清澄さんっ!もう大丈夫です!」


叫び声のような言葉にハッとして視線を向けます。澪さんに手をペチペチ叩かれるので、手を離しました。


真っ赤になってしまっている光さんと、ニコリといつもの顔で笑う兄上。


「すみません。手加減なしでしたが、大丈夫でしたか?」


「え、ええ。おかげさまでっ!」


真っ赤になった光さんは、自分の身体を守るように、

自らの腕で身体を抱き締めておりました。


「ああ、分かるわ~。

自分の魔力じゃない魔力が身体で満ちるとなんかむず痒いもんね」


と呆れた声で澪さんが言うのでした。



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