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彩眼の次男は兄夫婦の史実を暴露したい!~リア充爆発しろ、婚姻録~  作者: まるちーるだ
一章 雪の戦場、捕らわれの姫君 ~これってラブコメですか兄上!?~

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五節  秋里の姫と一条の姫

お姫様抱っこしてくれとは言わないが、お米様抱っこで秋里の当主に担がれる朝比奈の次男。そんな構図であれば見る人、見る人の視線が痛い。


ちょっと、一つ聞きたいんですけれども女性騎士たちが何故か私と綾人さん見て『キャー!?』って黄色い悲鳴が上がるんですかね?意味が分からないのですが?


しかも足早いですね、綾人さん。一つ年下の22歳成人男性をそう軽々担いで走るってマジで尊敬します。


と思いつつ、辿り着いたのは貴族牢。


破壊された扉は私の掛けた防衛用の魔法陣が見事に焼かれ、魔力が不安定になっていた。綾人さんが手をかざすとその火はプスプスっと音を立てて煙に変わり、私の気持ち悪さは一気に落ち着いた。


「ありがとうございます」


「その前にお前の兄ブチギレてんぞ」


綾人さんの言葉に、え?と思いながら地面に足を付けさせられれば、信じられない光景が広がっていた。


貴族牢とは言え、簡素な寝間着風の衣装であった光さん。その胸元が大きく破かれて、心もとない布を彼女は握りしめていた。


それよりも驚いたのは兄が馬乗りになって捕らえていた男だ。


第一騎士団の人間。あまり同等にされたくないが、私と同じ五家の次男。私と同じ年で、同じような境遇故、仲間意識を勝手に持たれているが、私は兄を補佐する気満々で、彼のように兄の代わりに当主になろうなど微塵も思わない。


寧ろ、面倒ごとでしかない当主は全力で兄に押し付ける所存だ。


「何を、なさっていましたか?」


兄の低い声が部屋に響いた。


よくよく見れば兄の手が彼の首を掴んでおり、それは気管を抑え込んでいる。手に見える青筋によってかなりの力が込められているのが分かるが、兄の笑顔はいつもの好青年のままだ。


ただ、知っている。

あの顔の兄はブチギレだ。

ちらっと隣を見たら綾人さんもヒクヒクっと口端を揺らしていた。


ええ、知っていますよ。士官学校時代に兄上をブチギレさせて、痛い目に合ったのを知っていますよ。しかもその話が一つ下の私たちの学年にまで広がって凄かったんですからね?


あ、兄上、喉の手を少しだけ緩めた。でも魔力流し込んで動けなくしている。地味に怖いな、と様子を伺っていた。


「そ、その女が誘ってきたんだ!」


「嘘ですね」


兄上、分かりますけど、即答で否定しないでください。あと、同級生殿、彩眼の前で嘘はすぐに分かりますよ。


兄が首を掴んでいる彼は真っ黒い靄に包まれた。どす黒く纏わりつくその黒が表すのは嘘。対する兄はにこやかな笑顔を浮かべながら醸し出した色は赤だった。


「嘘じゃない!その女がそんな恰好しているのが悪い!」


出たよ、同級生殿の十八番!天下の責任転嫁!


正直、このパターン何回も見た。そしてその度に同級生の私ではなく、兄が彩眼で確認するという苦い士官学校時代を思い出して遠い目をした。


「貴方も変わりませんね……」


兄の声は呆れたようなのに、にこやかな笑顔のまま手の甲に浮き上がる青筋が増える。


あの、兄上、それ、流石に死にます。息できなくて、泡吹いています。あの、兄上、兄上~?


「そ、それ以上は、その人が死にます!朝比奈卿!」


響いた声にハッとしたのは私だけではなく、隣の綾人さんもだった。声の主を見れば、よろよろっと立ち上がった彼女が胸元を握りしめたままなんとか立ち上がる。


「なんでその女がダメなんだよ!いつも捕虜は暴行されて返されるのに、こっちは何でやってはいけないんだ!」


緩んだ手のおかげで余裕が出来たのか、同級生殿はそう叫んだ。どうやら騒ぎを聞きつけた野次馬が増えつつあった。頭の痛そうな綾人さんが口を開いた。


「ウチの団の者が失礼した、朝比奈卿。」


「ええ、本当に失礼ですね。秋里卿。これが第一騎士団のやり方ですか?」


「いや、完全にそいつの独断だ」


綾人さんの断言に同級生殿の視線と色が絶望に染まった。もう一つ、違う視線が綾人さんに注がれた。


なんとか立ち上がった一条の姫が、その太陽眼を真ん丸にして綾人さんを見ていた。


『同じ、色』


声にはならなかったが、口が確実にそう動いた。


綾人さんがその視線に気が付いてニヤリと笑った。そのまま向けた手のひら。


瞬間、赤く、紅蓮の業火が彼女の周りを包んだ。


咄嗟に魔法を使おうとした彼女は手を上げた。

それはカチャリと白石の腕輪の音が鳴らすだけだった。


野次馬たちが目を伏せようとした。


誰もがその状態に目を丸くした。


秋里の当主が放った血統魔法の炎に包まれても、平然とする一条の姫。


困惑する顔の光さんはその炎を見て、そして顔を上げて綾人さんを見た。


「白石の腕輪をした状態で、俺の血統魔法の炎に焼かれない。つまるところ、君は俺の近しい血縁ということだ」


ニヤリと笑う綾人さんの言葉に誰もが息を呑んだ。


コツ、コツ、と靴の音が響き、炎の中で何とか立っている彼女に手を差し伸べた綾人さん。


「やあ、初めまして、『従妹殿』。俺の名前は秋里 綾人。どうやら君は俺の妹が探し続けた姉君らしい」


ニヤリと笑う綾人さん。やっぱりこの人も食えない御仁だと思わざるを得ない。なんだかんだで秋里の当主であって、第一騎士団の騎士団長を務める男。


野次馬が集まる中で、秋里の当主が秋里の業火を使って証明した。


冬の国の捕虜、一条 光は春の国でも尊ばれる血統の持ち主だと。


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