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彩眼の次男は兄夫婦の史実を暴露したい!~リア充爆発しろ、婚姻録~  作者: まるちーるだ
一章 雪の戦場、捕らわれの姫君 ~これってラブコメですか兄上!?~

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四十一節 幽霊屋敷4


なんなんですか、あのクソ不味そうなユッケは!

いっそ、綾人さん呼んで焼きハンバーグに変えてください!

どうせ消し炭のひき肉になりますから、食べたいとは思いませんけどね!!


なんて現実逃避をしたい気分で解析しつつ、周りを見渡しました。


「兄上左」


「適当になっていますよ、昌澄!」


「光さん、右」


「遅い!!」


「千歳さん……あ、下」


「サボっていません!?」


何ですか、この数の暴力。


そう言いつつも、この『蝕毒』たちが私たちを狙う『餌』のようなものがあると思い、解析を続ける。

三人が切り続けるが、切っても、切っても『蝕毒』は切りつけた触手を飲みこんで再生していく。


「核を『突け』ませんか?」


「さっきから狙うけど、最初だけだね。アレ、確実に核の位置をずらすように『学習』している」


兄上の言葉に、数を減らすのは無理だと考えて、とにかく解析に集中する。相手に気づかれているなら、もう魔力を押さえる必要ないと、大々的に解析魔法を展開する。


足元に明らかに『何か』があります。


水が流れ続けている床に手をついて下を解析します。


空洞……。


次に、この『緑の水』……『培養液』らしきものを解析する。


どうやら、カラクリはこの『培養液』のようです。

『蝕毒』がこの水を求めて、我々に近づいている。


この水は大量の魔力を含んでいる。


更に、この培養液と私たち自身の魔力を求めている。


下の空洞を更に解析。

……土しか感じられない。

でも空洞は、ある。


「光さん!この床、ぶち抜けませんか!?」


思い立ったことを言えば、彼女はニッと笑う。


「この『蝕毒』の触手攻撃を避けながら床ぶち抜けとか、どんな無謀なお願いですかっ!やりますけどね!」


そう言った瞬間、光さんは一気に周りの『蝕毒』を薙いだ。


一瞬にして吹き飛ばされた『蝕毒』。その隙に光さんが床の、石造りの床に剣を突き刺した。


その瞬間、ぴきぴきっとヒビが一気に走っていく。


「皆さん、落ちるので、受け身を取ってくださいね!」


「「「はっ!!?」」」


私の言葉に、三人の声が揃いました。

ですが、その瞬間には、足元が綺麗に崩れ去っていきます。


綺麗に抜けたその穴から、私、兄上、光さん、千歳さんと順番に落ちて行きました。


ついでに『蝕毒』も落ちてきますが、予想通りと言いますか、あの『培養液』から離れた瞬間、『ギィギッ……』と小さな断末魔のような音を立てて消えてきます。


「やはり、あの『培養液』が命綱でしたか……身体を維持するために魔力をあるものを狙い続けたみたいですね」


そう言いながら、落ちる寸前に、結界魔法を展開して、兄上、光さん、千歳さんとキャッチしていきます。


と、言っても流石兄上ですね。

結界魔法の上で普通に着地していました。


「さて、兄上にお願いなのですが、あの『培養液』を全部水で薄められませんか?」


結界魔法で唯一立っていた兄上を見ます。


「ええ、やりますけど。光さんと千歳には謝った方が良いですよ」


そう言いながら、兄上は水魔法の魔法陣を展開させます。


兄に言われ見た先で――

結界魔法の上に片膝で着地して、剣を結界魔法に突き立てている光さんと、

完全に着地失敗してうつ伏せ状態の千歳さんが、悔しそうに結界魔法を叩いているのが目に入っていきます。


二人の視線がこちらに向きました。


「『昌澄副団長』……報連相って聞いたことあります?」


光さんはニコッと笑いながらそう言われました。笑顔なのですが、目が笑っておりませんね。なんなら青筋、立っていませんかね?


「えっと、すみません」


「せめて、落ちた瞬間に説明していただきたかったですね?」


ニコリと笑う光さんの目の中はブリザードですね。

ついでに、結界魔法の上でうつ伏せ状態で結界を叩く千歳さんがジッとこちらを見てきます。


あ、あの、その猫が獲物を狙うような目、辞めていただきたいです。


何というか、メンタルに来ます、本当に。


「す、すみませんでした!」


「おかげで、変装魔法、解けてしまいました」


呆れたように、水浸しになった光さんは自分の髪の色を確認しておりました。

確かに、色が黒に戻っております。


「昌澄くんの思考が優先になったの、久しぶりだ。まあ、助かったけどね」


呆れたように千歳さんの声が響きました。

起き上がって立ち上がった千歳さんも水浸しです。


あ、光さんも水浸しですね。


「久しぶりとは?」


光さんが千歳さんにそう話し掛けます。


「いや、昌澄くんって基本的に自分で考えて実践する感じなんだけどね、ときどき思考が先走って今回みたいな事、やらかしちゃうんだよね」


「へえ」


「もう、士官学校時代は酷かったんだよ!」


「魔物の生態系でも壊したのか?」


千歳さんと光さんがなんか女子会のノリとでもいうのでしょうか?急に距離が近くなったように感じます。


気のせいですかね?


「生態系壊すどころか絶滅させたんだよ」


「……やりそうなのが何とも」


あの、お二方……なんでしょうか、その何とも言えない憐れむような目は?


「とりあえず、分かったのはあの四兄弟で一番ヤバいのは『昌澄副団長』ってことだな」


「間違いないよ!昌澄くんって『普通』とか良く言うけど、あの中では一番ヤバい!」


「今日一日で、私は三時間語れそうだ」


光さん?急に何を言い出すのですか?あと、そのジー――という眼を辞めていただけますでしょうか?


「その昌澄くんと士官学校時代からの知り合いの私、一週間は語れるよ!」


あの、千歳さん。地味に『知り合い』っていうワードに傷付きます。

あと、ちゃっかり水浸しの光さんとご自分に風魔法で乾かすのですね。


私をちらりと見て『乾かす?』とジェスチャーで聞いてきましたが、魔力を残していただきたいので首を左右に振りました。


その代わりに水魔法で、服に纏わりついた水を集めます。水を手に集めて、そして地面に落とせば、二人が何故か長いため息を吐かれました。


「あれ、水魔法だよな?」


光さんが呆れた顔で私を見てきました。


「分かる。アレを凄いと思わないのが凄い」


千歳さんが呆れたようにそんなことを言って来ました。


「兄上も教えたら出来ましたよ?」


誤解なきように言いますが、同じことを兄上も出来ますからね??

弟たちは教えた時に服を破裂させましたが……。

ただ、何故か千歳さんも光さんも呆れた顔が、寧ろゲンナリする顔になってしまいました。


「うん、終わったよ」


私たちの会話を聞いていたのか、苦笑した兄上が結界魔法の上から声を掛けてきました。


「あと、誤解なきように言っておくけど、出来ると考え付くは違うからね?」


そう言いながら兄上も、私と同じように服から水分を取り出して、地面に落とします。


ただ、光さんと千歳さんは何故かウンウンと首を縦に振って納得しているのでした。



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