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彩眼の次男は兄夫婦の史実を暴露したい!~リア充爆発しろ、婚姻録~  作者: まるちーるだ
一章 雪の戦場、捕らわれの姫君 ~これってラブコメですか兄上!?~

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二十四節 事後処理と胃痛王子


本当に、大変な一週間でしたよ。


まさか王都であんな天災レベルの『魔獣』……『蝕毒』の暴走が起こると思いませんでした。


兄上、光さん、綾人さんは三人とも即座に転移魔法で救護院に担ぎ込まれ、

それぞれに治療となりました。

ボロボロ状態の三名に治癒士たちが言葉を失っておりました。


ポーションを五本も飲んだ兄上は魔力回路が焼ききれる寸前で、しばらくは魔法を使えないでしょう。

――兄上の回復は三日後でしたが。


魔力枯渇状態で、体中傷だらけで、しかも意識不明であった光さんは、治癒魔法士たち三人がかりで治癒されておりました。なんでも手の火傷がかなり酷いらしく、回復には時間が掛るそうです。

――光さんの回復も三日後でしたが。


全身打撲、魔力枯渇、ついでに切り傷の数は三人の中で随一。それでも意識を保っていた綾人さんは状況説明をしながら治療を受けておられました。しかし、体中の傷や怪我は小分けの治療となるほど複雑だったそうです。

――ええ、想像通り、綾人さんの回復も三日後でした。



化け物ですか?



なんて言いたくなるほど、三人とも順調な回復です。


ああ、余談ですが、動けない団長二人の代わりに、

第一騎士団は三席の千歳さんが、

第二騎士団は副団長の私が、忙しく王都の復旧を指示しておりました。


千歳さんも倒れられたので心配でしたが本人曰く

『魔力が戻れば問題ないよ』

と笑っておられました。

なので、魔力回復が促進される飴をお渡ししておきました。


嬉しそうに食べていただけたので、ちょっと癒されました。



余計な話はその辺にして、一週間で回復した第三王子殿下・昆明を含む、

『蝕毒の襲撃を含む王都同時多発襲撃事件』の関係者が揃った部屋を見た。


『蝕毒』に遭遇した六名が揃ったのはあの日以来初めてです。


ちらりと見た光さんの腕には新たな白石の腕輪が施錠されておりました。


意識のなかった最初の二日間は、本人の魔力を封じると危ういほどの重体でありましたが、意識を取り戻し、魔力が安定した三日目に、彼女と治療士、そして騎士総長の総意の元、白石の腕輪を再度、はめられたそうです。


光さん曰く

『私の能力は仲間ですら怖がりますし、当然の措置だと思いますよ?』

と、平然と笑われておりました。


あとついでに


『剣を勝手にお借りしてすみませんでした。』


と、言われましたが、活躍させていただいて本人(本剣?)も満足していることと思います。寧ろ、あの剣を初見で使いこなした光さんは本当に凄いと思います。


その光さんの手首の白石の腕輪から視線を動かし、部屋全体を見回す。


私と千歳さん、第三王子殿下である昆明が同じ席に。

反対側に兄上、光さん、綾人さんが同じ席に。


そしてその二席の目の前に立つのは、

宰相室の事務次官、騎士総長、そして第一王女殿下の天翔宮 朱子殿下だった。


部屋の空気は重い。

あれだけの天災を前にした直後でありながら、誰も無駄口は叩かない。


「まあ、そういう訳で事情聴取というか、事実確認をさせてもらう」


そう言ったのは騎士総長。

おおざっぱに言えば私たち騎士団の一番偉い方です。

バチクソ強い方です。



「では、説明させていただきます」



そう切り出たのは昆明。昆明は第三王子殿下であるので、事件で一番偉い人間となる。

――つまり、あの事件の時、最高責任者は第三王子殿下・慈光宮 昆明であった。


昆明の至極簡潔な説明。


・朝比奈邸に戻る途中に『時計塔爆破事件』を目撃

・慈光宮・瞬木両名により『時計塔爆破』を『回避』

・『大型魔獣』の王都召喚

・秋里・朝比奈清澄両名による討伐を試みるが失敗

・朝比奈昌澄の治癒魔法補助を受け慈光宮『大型魔獣』を隔離

・秋里・朝比奈清澄のみの討伐不可と判断し、捕虜であるが『一条光』の白石の腕輪の解除、戦力として投入

・慈光宮による解析結果から王立研究所から紛失中の『蝕毒』と同一個体と断定

・秋里・朝比奈清澄・『一条光』三名の連携により『蝕毒』の核を破壊


・爆風で飛散したと思われた『蝕毒』の生体反応を感知

・天翔宮『蝕毒』の残骸らしきものを討伐


以上。


「大まかは提出いただきました報告書通りですね。」


そう言ったのは宰相室の事務次官だった。

そして事務次官は鋭い目で昆明を見た。


「ただ、この報告書で気になる項目はただ一つ。

『一条光』の白石の腕輪の解除――これについてです」


部屋の温度が一瞬で数度下がった気がした。


やはり、そこか。と思いつつ昆明をちらりと見た。

浮かべる色は意外にも『赤』。

沸々と煮えたぎるマグマのようなその色に少し驚いた。


怒り。

しかも腸が煮えかえるような怒りだ。


「そこに――何の問題があるのでしょう?」


昆明の声が、数段低くなった。


「あるでしょう。何故、他の騎士団の到着を待たなかったのですか?捕虜を投入して、結果的には討伐しましたが、それこそ第三騎士団の精鋭を待つべきでしたでしょう」


事務次官の言葉に『赤』を出したのは昆明だけではない。


綾人さんも、兄上も、千歳さんも――多分、私自身も皆同じような色を出す。


ただ一人、光さんだけが澄んだ青を浮かび上がらせる。

『まあ、その反応が当然』とでも言いそうな顔だ。


「もし第三騎士団が来たとしても、『蝕毒』の餌になる未来しか見えねぇな」


はっきりとそう言い切ったのは綾人さんだった。


「私もそう思いますね。第三騎士団で『一条光』クラスの速さを持ち、核を露出させるほどの威力のある魔法を放てる騎士はどなたが居りますか?」


にこりと笑いながら兄上はそう言い切った。


「っ!あにっ、第三騎士団長なら可能だったろう!」


その瞬間、事務次官が浮かべた色は煮えたぎるような『赤』。

苛ついたような事務次官の言葉に、部屋の温度が数十度は下がった気がした。


その静寂をぶった切ったのは兄上だった。


「第三騎士団団長?我が母に負けるヒヨッコが『一条光』より早いと?我が母よりも早いのですよ、彼女は」


ニコリと笑顔を崩さない兄上がノンブレスで言いきりました。

その笑顔のまま隣に座られる光さんを見て、光さんは苦笑いを浮かべられました。


ええ、第三騎士団団長はコネ……失礼、ボンクラ二代目……失礼、えっと、ワガママぷー……失礼、脳筋です!

力で押し切ればいいという脳筋です!


来年度には弟のどちらかがその席は奪い取るでしょう。


まあ、それは置いておいて、第三騎士団団長が来たところで、アレは『蝕毒』の餌になったでしょうね。


ああ、思い出しましたが、事務次官殿は確か、あのボンクラの家のご兄弟でしたね。

身内を庇いたい気持ちは分かりますが、それにしても冷静さが足りません。


「は?……前第三騎士団団長より?」


兄上の言葉に一瞬にして浮かび上がらせた色も、顔も真っ青になった事務次官。

母上は兄上が第二騎士団の団長になった三年前までは騎士団団長を務めておりましたからね。

しかも辞めた理由が『こんな脳筋馬鹿どもを面倒見てられるか!』ってブチギレて、ですから。


まあ、母上はただで辞める人ではありません。

ええ、双子の鬼才(弟たち)を去年、第三騎士団にぶち込みました。


二人とも第二騎士団(兄上の所)に来たがっていたのですが、母には逆らえず。

……現在は第三騎士団の三席と四席に出世しました。

ええ、一年で。


「ええ、『白石の腕輪』をしたまま、母上から一本取っていましたよ?」


「ついでに言えば、第三騎士団でも、清澄の弟が両方来たら何とかなったかもしれねぇが、今、両方とも辺境だろ?あとは使えたもんじゃねぇな」


ニヤニヤっと笑う綾人さん、好い顔していますね。

ついでに兄上も楽しそうに笑っておられますね。

おっと、千歳さんもいい顔で笑っておられますね。


ええ、第三騎士団の団長殿は兄上と同級生……つまりは三人とは士官学校時代に同じ学年でした。


成績ですか?

最終的な主席は綾人さん、次席兄上、三席千歳さんで、第三騎士団の団長殿は確か四席でしたね。


連携などまるでできない、自分が強ければいいというあのお方は正直、使えないと思いますよ?


あと昆明、貴方は胃を抑えるのを辞めなさい。


「しょ、証拠がないだろう!だったら、第三騎士団の団長と『一条 光』を戦わせて証明して見ろ!」


事務次官殿……貴方何言っているんですか……。


多分、身内を馬鹿にされて黙っていられなかったのでしょう。

気持ちはわかりますが、このような半公の場において感情論で言っていい言葉ではありませんね。



と、思わず頭が痛くなるような気分で眉間を抑えてしまいました。


「えっと……つまり、その『第三騎士団の団長』に私が勝てば問題ないという事ですね?このままで」


カチャリ、と腕輪の鳴る音が響き、部屋から一切の雑音が消えた。


キョトンとした顔で、澄んだような青を浮かべられる光さんに、全員の視線が集まるのは仕方のないことだろう。


「あはははは!イイじゃないか!その案、賛成だ!」


シンっと静まり返った部屋に響き渡った声は第一王女殿下、朱子殿下のものだった。


「王女殿下!」


「いやはや、面白いじゃないか!ちなみに、先ほどからぼろ糞言われているけど、お前はどう思っているのだ?」


そう言った朱子殿下の言葉に反応したかのように戸が開いた。


その瞬間、全員の視線があちらこちらに向いた。

金色の髪と、青い目を持つムキムキマッチョ……。


昆明、お前は胃を抑えるな。


「ああ、いま紹介されていた第三騎士団の団長、吉川(きっかわ) 成哉(なりや)と申す。」


そう丁寧に挨拶する第三騎士団の団長の姿に、思わず私も、兄上たちも面食らってしまった。

言ったら失礼だが、こういう感じじゃなくて『あはははは!俺様最強!』みたいなタイプだったはずなのに?と疑問符が飛びまくっていた。


「王女殿下」


「なんだ?第三騎士団の団長」


「嫌味ですか?ついでに言えば、自分と『一条殿』が勝負したとして……瞬殺でしょうな」


あ、変わってないか……と言おうとした時だった。


「俺は一瞬で失神させられるでしょう。そのぐらい、力の差がございます」


この言葉を聞いた瞬間、昆明を含む我々は思ったでしょう。


『お前誰だ―――――――!!?』


と。



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