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彩眼の次男は巻き込まれる~感情が色で視える参謀騎士、今日も修羅場です~  作者: まるちーるだ
二章 冬の宮廷、家出の姫君 ~兄上、これって宮廷loveでしょうか?~ 

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十六節 反するものを繋ぐ


あれよ、あれよと連れ込まれたのは明らかに研究室のよう場所でした。


「満様~、慶人~、昌澄連れて来ちゃった~」


陸さんの明るい声に、黒い軍服に、白衣を纏った二人がこちらを向きました。

黒い髪に黄金色の瞳を持つ青年、満さんと、

黒い髪に青い瞳を持つ男性、慶人さん。


「いらっしゃい、ませ?」


少し驚いた顔の満さんの手には、何やら加工された魔石のようなものが握られておりました。


「相変わらず難しそうなことしているね~」


陸さんは気にした様子もなく、私を部屋の中に突っ込みました。

なんとなくですが、こういった研究室って機密がありそうで、出来れば見たくないのですが?

ええ、雑多に置かれる描き殴られた理論とか、どう見ても新しいことを試すために作っている魔法陣とか、ポーションを作るような薬剤器具とか、私何も見ておりませんからね!!


でも床が焦げでいるのは何でですかね!?


「まあ、難しいことではあるな」


慶人さんが苦笑いを浮かべて見せてきたのは、普通のチェーンでした。

黒と紺がまだらに混ざったような色のチェーン。

大きさとしてはアクセサリーに使う程度の小ぶりな物。



ただ――何か違和感があります。



思わずジッと眺めたところで、そのチェーンが魔力を帯びていることに気づきました。

そのチェーンは水の魔力と……この黒さは……。


「水と、闇の魔石?いや、魔石の加工品、ですか?」


思わず思ったことを言った瞬間、目の前の二人がピタッと止まりました。


「え?」


「なんで分かったんじゃ!?」


満さんの驚きの声と、慶人さんの驚愕の言葉に、私も驚いて目を丸くしてしまいました。


「な、なんでって、彩眼は魔力が見えますから」


一気に詰め寄ってきた大男二人に、流石の私も一歩後ろに退いてしまいました。

慶人さんが大男なのは分かっておりましたが、満さんも、結構身長高いですね?

私よりも10㎝は高そうです……190㎝後半代ですかね?


「彩眼!?そうじゃ、魔力が見えるんじゃった!」


「真贋判定だけじゃないんだ!」


「満様、なら魔力のバランスを見て貰えば出来るかもしれん!」


「まさに天の助け!」


え?えっ?えっ?


と、挙動不審になりながら陸さんに助けを求めようと振り返りました。


――が、もぬけの殻です。

あの方、この二人を私に押し付けて逃げましたね!?


ガシッと、手が掴まれました。


ひいいっ!?

デカい男2人に手を掴まれるの恐怖でしかないのですが!?

私が女なら叫んで逃げる案件ですよ!?


「ちょっと手伝って欲しいです、昌澄さん!」


「昌澄の彩眼が俺たちには必要じゃき!」


な、なんですか、この金色は……。

もう、絶対的な信頼と言いますか……多分、これは、私の『彩眼』に対する信頼ですね、分かりました。

というか、もはや憧れですね、この色は。


ただ、ガッチリ掴まれた手に、私の逃げ道がないことを悟りました。


陸さん……後で覚えておいてくださいね!!




まあ、少し落ち着いたところで、お二人から先ほどのチェーンを見せられました。

何故か、慶人さんが手に持ったままですが……。


「えっと、魔石のチェーンですか?」


「そう。これは俺の『一条の闇』と慶人さんの水魔法を組み合わせて作ったチェーン」


「人造魔石、みたいな感じですか?」


「そうそう!それをこうやって加工した感じ!」


そう言いながら満さんは器用に手のひらから黒い魔力を浮き上がらせて、まるで糸を編むように簡単にチェーンを作り上げていく。

そのチェーンは少しグレー掛かった色で、ふと、光さんの首に掛けた兄上の魔石を飾るチェーンを思い出した。


「なるほど……」


見様見まねで作ってみたところ、満さんのように一定の輪になりませんが、チェーンらしきものが出来ました。



「……凄いな」


慶人さんの呆れたような声と。


「やばっ、俺がこれ作れるようになったの二年は掛かったと思うんだけど?」


同じく呆れたような声の満さん。


ただし、二人とも、目が潰れそうなほどの金色でこちらを見てきます。


「いえ、上手く作れませんね」


「そう簡単にやれたら困る。我が国じゃ、人の魔力を使ってチェーンや金具を作る『技工士』ちゅう仕事もあるんじゃ。技術職じゃ」


技術職、と聞いて、文化の違いを感じましたが、慶人さんの言葉の『人の魔力』という言葉に引っ掛かりを覚えました。


「『技工士』?チェーンや金具を、なぜわざわざ人の魔力で作るのです?」


「そりゃ、家族に送るチェーンや金具を作れん人間も多くいるからな~」


「家族に送れない?」


私と慶人さんの言葉に、ハッとした顔をしたのは満さんでした。


「昌澄さんは我が国で『男が女に人造魔石を贈る』意味を知っていますか?」


満さんの言葉に、光さんと兄上がふと浮かびました。

そして、あの喜哉での別れの寸前に、光さんが言った言葉も。


「『男性が自分で作った魔石を、装飾して女性に渡すのは『求婚』を意味する』とは聞きました」


「もしかして、姉から?」


「ええ、光さんからです」


「なるほど……じゃあ逆は?」


「逆?」


そう言われて、光さんが兄上に黒い花の魔石を贈り返したのを思い出しました。


「『男性から魔石を受け取った女性が、今度は自分で作った魔石を返すと『求婚を受けます』との意味』だったかと?」


私の言葉に、満さんが少し表情を曇らせました。


「その先は……姉は言わなかったのですね」


満さんの言葉に少しの違和感がありました。

浮かび上がらせた色が曇天の空のようなグレー。

不服、でもどうしようもない八方塞がり、そんな感情でしょうか?


ただ――その感情の意味を、知りたくなりました。


「続きが、あるのですか?」


私は満さんをジッと見れば、彼の黄金の目は寂しさを浮かび上がらせました。

深い深海のような青色と共に。


「『婚約のあと、『家族』は送られた石を装飾するものを送る』。それが家族からの祝福の証になります」


満さんの言葉に、ハッと息を呑みました。

光さんのペンダント。

あの薄いグレーのようなチェーンは、彼、満さんが作ったものだと直感しました。


「婚姻を結ぶ2人が、危機にさらされた時、家族が作った魔石の装飾具が二人を助けるように祈りを込めて作られるんです」


「まあ、技工士は、そう言うのを作るのが苦手な人間の手助けをする職業じゃ」


満さんの言葉を、慶人さんが補足しました。

そこで、私は、自分で作った人造魔石を割ることで、自分の魔力が回復する現象を思い出しました。

その後、兄上にも協力してもらって、兄上の人造魔石を割れば、私も回復が出来ることに気が付きました。

つまりは、チェーンで、同じことが出来る。


……これ、使い方次第ではポーションの代わりになるのでは?

今はその考えは捨てましょう。

つい、騎士団基準で考えてしまうのは私の悪い癖です。


まあ、家族であれば、同じ魔法の素養を持っていることが一般的です。


チェーンが壊れれば、持ち主に家族の魔力が吸いこまれる。


正に、守るための『祈り』であると直感しました。


「なるほど。婚姻の時に家族から送るのですね……」


そう言いつつ、私もチェーンを作り続けてみました。

脳裏に浮かんでいたのは、兄上の持つ、黒い花形の魔石。


光さんが、兄上に贈ったあの魔石だ。

兄上に、あの魔石を飾るものを贈りたい。


……まあ、この話をすれば弟たちも面白がって手伝うでしょうし、父は多分、一番綺麗に作るでしょう。

母は――屋敷を壊さないように父に取り押さえて貰いましょう。倉敷の手も借りて。


我が家はなんだかんだ、兄上と光さんが結ばれるのに賛成ですからね。


「えっと、昌澄さん?なんていうか、作り過ぎじゃない?」


「え?満さんも先ほどからこのぐらい作られておりましたよね?」


「ああ、満様は魔力過多体質じゃき、いくら作っても問題ないが……普通の人間はそんなにわんさか作れん」


ちょっと心配そうな2人に、思わず笑いました。


「ご安心を。私も魔力過多体質で、魔力許容量はポーション七本ですから」


私の言葉を聞いた瞬間、慶人さんが「ななっ!?」っと絶句し、満さんは「七本!?」と嬉しそうに笑いました。

慶人さんがポソッと「普通、二本で酩酊するじゃろ」と言いましたが、ええ、許容量があるだけで、ポーションと相性が悪く、三本目で酩酊はしますよ。


「俺と同じぐらいだ!初めて会った!」


ん?あれ?また金色のキラキラがグレードアップしておりませんか?


「お主ら、人間か?」


ゲンナリした顔で、慶人さんがそう言いました。


「人間だと思っておりますが?」


「俺もだけどね?」


「無自覚な天才ほど厄介なものはないの」


はー、と呆れた慶人さんが私の手を止めさせました。


「まあ、そこまでにしとけ。それより、こっちを見て欲しいんじゃ」


そう言った慶人さんが見せてきたのは、先ほどのチェーン。

慶人さんが手を離した瞬間、それは元素から崩れ落ちたように消えていった。


「この通り、手を離すと消えてしまうんですよね、安定しないんです」


そう言われて、ふと疑問に思いました。


「何故、わざわざ混ぜるのですか?」


ちょっとした疑問なのですが、別々に二つ使えば問題ないのでは?と言おうとしたところで、満さんが少し恥ずかしそうに下を向き、慶人さんが「あー」と気まずそうに視線を横に流しました。


「まあ、俺は知っちょるが……」


そう言いつつ、慶人さんが気まずそうに満さんを見ます。


「だって……『闇』と『水』は姉さんの……」


ん?と疑問に思って満さんを見れば、耳が真っ赤ですね。

なんでしょう、弟たちがサプライズ失敗した時を思い出してしまいます。


「姉さんは『闇の魔法』で、姉さんに魔石をくれた人は『水の魔法』を使うじゃん。合わせたいって言うか……どうせなら……」


そこで、ハッとしてしまいました。

も、もしかして、満さんは、兄上と光さんの為に、二種の魔力を混ぜ込んだチェーンを作っているのでは!?


兄上と光さんの為に!?エモい!?エモすぎます!?

私そう言う恋愛話大好きです!?


うちの弟たちもこういう感じで照れるんすよね。そんでもって、兄上や私が喜ぶと、嬉しそうな顔で笑うのです。


「なるほど、光さんに喜んでもらいましょうね!私も兄上に贈りたいので、ぜひ協力させてください」


そう言って笑えば、満さんは連れて笑ってくださいました。


「さて、サクッと作りましょう!」


余りの切り替えの早さに、ちょっと驚いた様子ですが、嬉しそうな満さんと、苦笑いの慶人さん。

今、一瞬思ったのですが、慶人さんは水魔法を使えるのですね。


「早速ですが、もう一度、チェーンを作ってもらえますか?」


そう言ったところで、満さんと慶人さんは器用に魔力を糸のような形に変えて、クルクルと混ぜ込むように一本の糸に変える。

青と黒がクルリ、クルリ、と混ざって、そして輪を作る。


二人がそのまま進めたところで、30センチほどのチェーンが出来た。


「ここまでは出来るんじゃが……」


「手から離しちゃうとね……」


二人の手から離れた瞬間、そのチェーンはバラバラと崩れていく。

先程と同じ光景。


満さんも慶人さんも、残念そうな灰色を浮かべました。


「混ぜるバランスが悪いのかな……」


満さんの言葉に、思わず周りに浮かぶ魔力を見ます。

ふわふわと浮いている黒い魔力と青い魔力。


「魔力のバランスが悪いのが一つ」


そのまま見える魔力は黒い魔力が青の魔力を飲みこむ。

火で水が蒸発するのを見たことがあるが、それとも違う。

――存在そのものが『無くなっている』。


闇の魔力は、まるでその場の支配者のように全てを喰らい尽くす。


「多分ですが『闇の魔法』が『水の魔法』を打ち消しているのだと思います」


私の言葉に、満さんが紫……いや黒に近い色を浮かる。

絶望――その色に近いと思いました。

ただ、そんな満さんの頭をガシガシと撫でる慶人さんは優しい方だなと感心します。


魔力を糸のように伸ばして、混ぜてチェーンを作る。

面白いな、と思いつつ、また私はチェーンを作ってみました。

一つの魔力であれば、特に気にせず作れる。


二つの魔力は今見る限り相反する。

つまり同化させても意味がないということだ。


同化でない方法で混ぜ合わせるとしたら……連結?


輪と輪を重ねていく……。重ねる?


そこで、チェーンは輪と輪が連結された物体だと、気づきました。


「連結?……むしろ混ぜた所為で相反しているのなら、逆にチェーンの輪を交互にすれば、よろしい……の?」


ハッと顔を上げた瞬間、大男二人に詰め寄られるセカンド。


「「それだ(じゃ)――――!!」」


二人の声は、非常に綺麗に響きました。

二人からも溢れ出す金色が、目を潰してきそうなほど、鮮やかでした。



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