表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/47

第四話 優しい竜のお姫様

――それは、まるで夢のような知らせだった。


募金開始からわずか一週間で、「竜保護と共生のための支援基金」は目標額の三倍を超える金額を記録した。


「竜は、我らと共にあるべき生き物だ」

「未来の子どもたちにも、竜の姿を残したい」

「勇者アルベルトが守るというなら、信じよう」


国内外から寄せられる声援と善意が、ドラゴの空を新たな希望で満たしていった。


そして――訓練所の上空に、無数の竜が、誇らしげに舞っていた。


その空を、ミッシェル・ガンエレファントは、そっと見上げていた。


「……こんなにも……早く、こんなにも多くの人が、竜を愛してくれるなんて……」


訓練場の片隅に立ち尽くし、彼女は肩を落とした。


涙ではなかった。ただ――自らの無知と、驕りを噛みしめていた。


「私は……すべてを背負おうとして、誰も信じなかった。誰にも頼らなかった。ただ、強くあらねばと、そればかり……」


そう呟いた声に、柔らかく風が揺れる。


「でも、その“強さ”があったから、俺はここに来られた」


振り返ると、そこには勇者アルベルトがいた。いつもの軽薄な笑みもなく、まっすぐな眼差しで彼女を見つめている。


「姫。お前がいたから、国は滅びなかった。お前が戦ったから、竜は守られた。その強さを、今は……他者と“分け合う”時だと思う」


ミッシェルの心に、温かい灯がともる。


それは、孤独に慣れすぎて忘れていた“誰かに寄りかかる勇気”。


彼女は歩み寄り、静かに言葉を紡いだ。


「勇者アルベルト、あなたのスカウト、正式に受けよう。私の力を、この国のため、そして未来のために使ってくれ」


風が止み、空が澄み渡る。


「この国を、竜の中立国とする。戦争も、復讐も、血の継承も終わりにする。これからは竜と共に生きる国として、後世へ繋ぐ」


その言葉は、まるで新しい時代の鐘の音だった。


さっちゃんが空を飛びながら叫んだ。


「竜の姫がついに本気を出したーッ! 闘いのない中立の国としてドラゴ、変わるわよーッ!」


空の竜たちが一斉に吠えた。咆哮は喜びの歌となって山々に響き渡った。


そして、アルベルトは静かに言った。


「この竜の国ドラゴは、優しい竜のお姫様にふさわしい未来を迎えるだろう」


ミッシェルは、ふと笑った。

それは誰も見たことのない、心からの笑顔だった。

挿絵(By みてみん)


竜の国ドラゴを永世中立国宣言をするミッシェル姫

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ