第二話 地上での善行
「セクシャル!今日は“善いこと”をして、天界に帰る足がかりにしようよ!」
「もちろん、バイセル!天使は行動あるのみっ!」
ここは地上のとある小さな町。
元・天界の伝説的シスターコンビ「清き福音」こと、バイセルとセクシャルが、はりきっていた。
その様子を屋根の上からじーっと見守る者がいた。
赤いマントに金の髪。勇者アルベルトである。
「……大丈夫かな~あの子たち?」
その肩の上、ちょこんと座ったベビーサタンのさっちゃんが口を開いた。
「善行ごっこに決まってんでしょ。どうせまた大惨事起こすって」
最初のターゲットはお年寄り。
「おじいちゃん、荷物運んであげましょうか?」
「ほっほっ、ありが――」
バサッ!
バイセルが持ち上げた袋の底が破れ、みかんが大量に路上へ転がった!
「わーっ!ご、ごめんなさい!」
「みかん戦争開戦だわね」とセクシャルが拾いに走るも…車道に転がり出た一個を追って、転倒。
「アッッッブな!!」と叫ぶアルベルトに、さっちゃんが毒舌を放つ。
「…ほら見なさいよ、地上最速で天界帰行をそっこうで切符破り捨ててるコンビ」
次はゴミ拾いだ!
「見て!あそこに空き缶が!」「神の目は見逃さない!」
二人は空き缶目がけてダッシュするも、同時に拾おうとしてゴツン!
「痛ったーい!」
「目から星が…」
さっちゃん、ため息。
「善行で世界救う前に脳しんとうで自分たち昇天しそうね…」
その夜。
公園のブランコに座ってしょんぼりする二人。
「私たち、やっぱり天使失格かな…」
「善行って、こんなに難しいの?」
そのとき、横から声がした。
「まぁ、お手本を見せるのも悪くないなと思ってね」
振り返るとアルベルトがいた。
「あなたは……?」
「勇者アルベルト。この町で噂の“転落天使詐欺師シスター”を見に来たわけさ。けど今日一日見てて思った。君たち、根っこの部分は善そのものだってな」
さっちゃんもトコトコ歩いてきて、言う。
「でも、現実はきれいごとじゃ通らない。だから**“善いこと”ってのは戦略と根気と、ちょびっと運がいるのよ」
アルベルトは二人に向き直った。
「なぁ、俺と組まないか? 大きな善行を一緒にやろう。地上でも通用する“本物の善”を、形にしてみようぜ」
バイセルが言う。
「…でも、私たち失敗ばかりで…」
セクシャルも不安げ。
「天界でもドジだったし…」
さっちゃんがニヤリと笑う。
「ドジでも心があるなら、この勇者のバカ正義と組めば世界ぐらい救えるわよ」
アルベルトが手を差し出す。
「さぁ、堕ちた天使たち。次は“地上の星”になってみないか?」
二人は目を見合わせ、うなずいた。
「やってみる、私たちで」
「善を地上で咲かせてみせる!」
こうして、「清き福音」は再び地上で羽ばたく。
やがてくる戦いの前に、まずは
地上最大の悪い詐欺組織をブッ潰す、というアルベルトの“計画”が始動する。




