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『世界を救った勇者アルベルト 夢の魔法を使ってハーレム性活始めました。伝説のサキュバス待ってろよ!』(真面目な恋愛小説)  作者: 虫松
第四部 元天界の堕天シスター

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第一話 ドジっ子なシスター天使

かつて天界に“清き福音”と呼ばれた伝説のシスターコンビがいた。


慈愛の天使バイセル。

癒しと美の天使セクシャル。


挿絵(By みてみん)


……だが今、彼女たちは地上でオレオレ詐欺電話をかけていた。


「はい、もしもし〜? あ、あの……わたし、あなたの孫ですぅ〜。はい〜、ちょっと困ってて〜お金を……え、名前? えーと、なんだっけ……」


バイセルは焦ってセクシャルに目配せした。

しかしセクシャルはガムをくちゃくちゃ噛みながら、自分の番組録画をスマホで確認していた。


「セクシャル! 名前! どうするの!」


「しらな〜い♡ 適当に“コウジ”とか言っとけば?」


「そんな適当な! うわっ、切られた……!」


プツン、と無情な音が鳴る。


「またダメだったのかよ、バイセルぅぅぅう!!」

詐欺グループのチンピラが怒声を上げた。


「なんで天使だった私が、こんな人に怒鳴られてんの……」

バイセルの目からは涙がこぼれ落ちた。


「うるさいうるさい! 次こそちゃんとやれ! セクシャル、お前も笑ってるだけじゃなくて手本見せろ!」


「うふふ♡ じゃあ私がやってみようかな〜?」


セクシャルは艶のある声で電話を取り、わざとらしく咳払いをした。


「おじいちゃん? わたしぃ〜、あのときスナックであったお孫ちゃんだよぉ♡ …えっ? え? 名前? ……そ、そんなぁ、ひど〜い♡ もう忘れたのぉ〜?えー娘はいない?あっ切れた。」


その場にいる誰もが思った。

こいつ、絶対詐欺に向いてない。


かつての天使たちが、なぜこんな泥にまみれた暮らしをしているのか。

それは、あまりにも“ドジで無力だった”からに他ならない。


天界では祈りを忘れ、ミサをすっぽかし、聖歌隊の衣装にコーヒーをこぼし、神の怒りに触れた。


「おまえたちは……まず社会勉強をして来い」

そうして天界から追放された。


「人間界って、もっと優しいかと思ったぁ……」


「詐欺って、悪いことだったのね……うふふ♡」


どこまでもズレている二人。

だが、そんな彼女たちの運命は、すでに変わろうとしていた。


ガラッ。


薄暗い詐欺事務所のドアが、無理やり蹴破られる。


「悪を成す者どもよ……その手を止めろ」


長身の男が逆光の中に立っていた。

その肩には小さな魔物ベビーサタン“さっちゃん”が乗っている。


「おぉ、いたいた。堕天シスターズ、発見だな。スカウト対象リストに載ってるな……名前は……バイセルと……セクシャル?」


勇者アルベルトは呆れたように眉をひそめた。


「まったく、なんて名前だよ」


だが次の瞬間、バイセルの涙に気づく。


「あ……」


その涙は、天界で流したものと同じだった。

何もできない自分を責める、無垢な祈りの欠片――


「バイセル、セクシャル。ここから……出よう」


勇者の手が差し伸べられる。


二人の天使が、善行を重ねてもう一度空を目指す物語が、今、始まろうとしていた。


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