おはよう悠くん
朝早い学校で俺、神代悠はいつも通り自分の席で眠りについていた。
ーチャイムが鳴るー
「ふあぁ」
俺はあくびをしながら起きる。
そしてー
「おはよう悠くん」
温かな笑顔でこちらの顔を見ながらそう言う彼女は、俺の唯一の女友達である天月小夜だ。
「おわっ」
俺がそう驚いた反応を見せると、彼女はクスッと微笑んだ。
「いつものことじゃん」
確かにそうだ。毎日天月はこんなふうに声を掛けてくる。
人は何回も同じことをしたり、されたりすれば大抵のことには慣れる。
だがー
これだけはダメなんだ。
慣れるなんて無理な話だ。
自身の鼓動が高まっているのがわかる。俺はいつもこれで眠気が覚めているのだ。
天月は自他ともに認める優等生だ。クラスのみんなからの信頼も厚く、成績も優秀、なによりその美貌で男子からの人気が高い。長く美しい黒髪は彼女のチャームポイントだ。
対する俺は目立つことのない言うならば陰キャだ。しっかりとした手入れもしていないため、髪は目にかかっている。周囲から見ても陰キャのイメージにピッタリだろう。
もしかしたら俺のことが・・・なんて考えはもうないつもりだ。だが俺は彼女へ好意を抱いている。そんなことに気づいたのは意外にも結構最近の話だ。
今まで恋なんてしたことが無かった。現に一年前はこんなことになるなんて想像もしていなかった。友達すらまともにいなかったから。
俺は自分を落ち着かせ彼女に言う。
「おはよう...天月...」
彼女は顔をパァ!っと明るくして
「うんっ!」
と返事をかえした。