お願い….ここにいさせて。
結菜「今日は、家に帰りなさい・・・私がご両親に連絡するわ・・・」
結菜はまっすぐな眼差しでまどかを見つめた。まどかは食卓の椅子に腰かけたまま、俯いている。
結菜「相変わらずね。恭二どうして連れて帰ってくるのよ。まずは親に連絡すべきでしょ。
親の気持ちがわからないの?」
恭二「泣いていたんだよ。目の前で......すごく悲しそうな顔で・・・そんな子をほおっておけるかよ。」
結菜「だからって・・・・」
夫婦の言い合いが熱を帯びる中、蓮はマイペースにまどかに話しかけた。
蓮「YOUTUBE。しまじろうがいい」
まどかは返事をしない。聞こえてないわけではない。
ただ反応できないのだ。目の前で繰り広げられる言い争い。
その騒がしさの中で、まどかの心は次第に沈んでいった。
---「わたし・・ここにいてもいいの」
「あなたはここにいるべきじゃない」「ここは白石家じゃない」
「親の期待の答えないと」「優等生でいないと」
まどかの心の中に様々な声が渦巻く、まどかは思わず両手で頭を抱え、耳を塞いだ。
心の中で何かが崩れそうになる。必死で立て直そうとした。
「もう少し....もう少しで.....本当の私に届きそうなの.....」
蓮「まどかおねえちゃん!!YOUTUBE!!しまじろうがいい!!」
はっとして顔を上げたまどか、引きつりながら笑顔を作り、リモコンを手に取る。
まどか「ああ。しまじろうね。わかったわ。」
リモコンを操作し、動画を再生する。しまじろうの平和な家庭の映像が動画に流れるが
それとは真逆の光景が広がっていた。
まどかのポケットの中でスマートフォンが震えた。彼女は画面を覗き込む。
-----父からの着信。夫婦喧嘩が収まる気配がない。
まどか(・・・でるしかないのかな・・・・)
意を決して通話ボタンをタップした。
まどか「......もしもし。」
まどかは静かな声に恭二と結菜の口論が止まる。蓮はYOTUBEでしまじろうを見続けていた。
父「まどかか!!位置情報で今の場所が分かったぞ!!
今は予備校の時間じゃないのか!!勉強はどうした!!」
怒号が耳を打つ。
父「なぜ帰宅しない!!学費も払っている、家も養っている。お母さんも連絡して......
連絡が取れず困っていたんだ。」
父の言葉はまどかを追い詰めた。頭が重くなり、俯く。そして涙が頬を伝う。」
そのとき----
恭二がまどかの手からスマホを取り上げ、自分の耳に当てた。
恭二「もしもし。俺ですけど。」
父「誰だね・・・君は?」
恭二「金髪宇宙人恭二でーす。」
まどかは涙を拭き少し笑った。
父「ふざけるな!何者だ君は!働いているのか!」
恭二「働いていまーす。金髪で、専業主夫。4歳の息子の子育てと家事に全力っすけど、なにか?」
父「つまり無職だな!!娘を連れて帰るなんて良識がないのか!!」
恭二の中の何かが切れた。
恭二「いい加減にしろ!まどかが自分から来たんだよ!涙を流して!悲しそうな顔で!
そんな子ほおっておけるわけないだろ!!」
怒号が家中に響き渡った。
結菜「大声を出さないでよ。隣にも聞こえる!」
恭二「うるせえ、今大事なところなんだよ!」
結菜はあきれた顔をしたが、まどかの心にはぬくもりが灯った。
まどか(....あったかい......)
父「わけわからん!自分からきたなんて!」
恭二「だったらきけよ!彼女の心がどれだけ縮こまってるか!娘に向き合っていたのか!あんた!」
感情がこもった声。まどかはそれを全身で受け止めた。
恭二「親なら子供とちゃんと向き合えーーーっ!!」
まどか「ああ。ほんとのぬくもりってこれだ」
結菜「もういい加減にして。毎回その後片づけるの私なのよ。電話を貸しなさい。」
恭二「わかったよ......」
結菜「お父さんですね?この度は申し訳ありません。まどかさんは今から家に帰るように伝えます。
あとはこちらに来る際は、事前に連絡を入れるように指導します。」
プロの対応だった。父の怒りも徐々に収まり、通話は終了した。
結菜「だから、まどか。今度からちゃんと連絡してね。」
まどか「......はい。ご迷惑おかけしました。」
怒られると思っていた。でも結菜は近づき、まどかの頭を撫でた。
結菜「家にいづらかったんだよね。よく頑張ってたね。つらくなったらいつでも家に来ていいんだよ。」
まどか「......ありがとうございます。」
結菜「でも恭二。あんたのぶつかり方はいつも極端すぎるのよ。」
恭二「へっ。うるせえな。」
その夜4人で食卓を囲んだ。職場の愚痴、恭二の宇宙語、笑顔と混乱の食卓。
まどか(・・・こんなに楽しい食卓・・・・初めて)
気づけば笑みを浮かべていた。
帰り際玄関で靴を履くまどか。
恭二「また来いよ。」
蓮「またねー。まどかおねえちゃん。」
結菜「いつでも歓迎だからね。」
まどか「本当にありがとうございます。また来ます。」
そしてドアを開けたそのときーーーー
まどか「恭二......さん」
恭二「ん?」
まどか「連絡先・・・交換していい?」
恭二「ああ。いいぜ。えーとLINEのQRコード.....あれ?どうやってやるんだっけ?」
まどかは笑ってしまった。
まどか「今はAir Dropで簡単に交換できるのよ。」
恭二「まじで!!」
まどかは慣れた手つきで連絡先を交換した。
まどか「......これで交換完了」
恭二「おう。ありがとな。」
まどか「じゃあ・・・また。」
電車の中、スマホにメッセージを打つ。
『今日はいろいろありがとうございました。一緒に食事できて楽しかったです。
また今度よければ一緒にご飯食べさせてください。』
送信を迷っていたその瞬間電車が揺れ、送信されてしまう。
まどか「・・・・おくっちゃった・・・・・・」
既読にならないトーク画面を何度も見つめる。
駅についた。ホームをおりながら、再びスマホを見つめる。
『既読』の表示。
まどか(ありがとう。恭二)
まどかの足取りはどこか軽やかだった。
【歩きスマホと推し活、そして....恋】
蓮「あっ。まどかおねえちゃん?」
まどか「なに?蓮君?」
蓮「だめだよ。電車であんなことしちゃあ」
まどか「え?(もしかして恭二にLINE送ったことバレて・・・)」
蓮「電車降りるときにスマホ見ながら降りたらダメだよ。先生言ってた・・・」
まどか「へ?そっち?ああ。ごめんなさい。今度から気を付けるね。蓮君」
結菜「そっちって何?」
恭二・まどか「(ぎくっ・・・!!)」
恭二「結菜またJupiter Beatがこのドラマに出るっていってたぞ!!。「Whisper」だって。主演が一ノ瀬 涼らしいぞ!!」
結菜「どれどれーーわぁーーやっぱり一ノ瀬涼かっこいいーー。ドームツアーの抽選当たらないかなぁー。」
恭二・まどか(たすかった。)
まどか「皆さんも歩きスマホには注意しましょう。私も今度からしないようにするねっ。」




