表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~四学年~
98/253

33 解除魔法②






「先にサラからやるか?」


身体をレルリラに向けた私に、レルリラは尋ねる。

私はそんなレルリラに目をぱちくりとさせた。

いつもなら先にレルリラが行い、その後は私に指導するように魔法の練習をするからだ。


「いいの?」


「ああ、俺はやったことがあるからな」


そう告げたレルリラに私は一瞬言葉を失いかけたが、これがレルリラだと改める。

貴族は平民よりも学習環境が整っているのだ。

例え学園に通うのが十歳からで、こいつ一体何歳の時からどんな凄い教育を受けていたのよと疑問に思っても気にしてはいけないのだ。

そもそもそんなことを気にしていたらレルリラからの特訓なんて受ける気にもならないと思うしね。

それだけ私の心が広いということだ。

と自分で自分を納得させていると、レルリラが早速魔法を発動させようと動き出す。


「じゃあ、まずは簡単な魔方陣で……光の魔法を発動させる」


「ちょ、それを特定するのも大切なんじゃ…」


発動する魔法をご丁寧に教えられ、思わずレルリラを怪訝な顔で見てしまうが「魔法の発動スピードを遅らせるつもりはないからな」と告げられる。

無詠唱魔法のレルリラに追い付けるわけなくない?と思うが、やるしかないのだ。


よし!こい!と気合を入れた私に、レルリラの魔法でチカチカと光り出す。


「…くぅっ!」


「もう一度だ」


「……うぅ!」


「もう一度」


「……ぬぅ!!!」


「もう一度」


「だああ!無理!無理よ!!無詠唱魔法に追いつけるわけないじゃない!!」


探知魔法でレルリラの魔力を感じた場所に光の魔法の魔方陣を組み立てようとするが、一瞬で組み立て終えるレルリラの魔方陣は私の魔力が追い付く前に光を生み出す。

そもそも私が無詠唱で魔方陣を組み立てようとしていても、レルリラが私と同じく無詠唱で一瞬でその場に現れるように魔方陣を組み立てるのに追いつけるわけがないのだ。


「…どうやらサラは“描く”という意識のようだな」


通りで発動が少し遅いと思った。と続けるレルリラに私は「は?」と口を開く。


「解除魔法よりも魔法の発動についてが先だな。

勿論今日からのトレーニングも変更だ。サラ、お前の意識を変えなければ、例え無詠唱魔法を行えても発動が遅く、魔法陣が複雑なものの魔法は今後も発動できないで終わる可能性が高い」


意識?魔法の発動?

私はレルリラの言葉の意味がわからずに首を傾げた。


「え、いやまって。意味が分からない。

とりあえず…無詠唱魔法は無詠唱魔法でしょ?遅いとかあるの?」


「当たり前だ。詠唱魔法も早い遅いがあるように、無詠唱魔法にもある。

現にお前の魔方陣を観察していたが、コンマ秒で俺の魔方陣よりも遅く組み立てられている」


コンマ秒。

つまり一秒にも満たない早さをなんでこいつは見極められるのだろうか。

いや、それよりもレルリラはどうやって魔方陣を“描いているのだろう”と疑問に思う。

魔法陣から魔法を発動できること自体は変わらない筈なのだから。


「……レルリラはどうやって魔方陣をかいているのよ」


「“書いていない”。“写し出しているんだ”」


「は?」


そして目を丸くさせる私に、レルリラは次々と魔方陣を組み立ててみせる。

支援魔法の簡単な魔法や火属性魔法の複雑なやつ迄、一つ一つが一瞬で空中に浮かび上がる光景に私は徐々に口が開いていくのを感じた。

ちなみに魔力量の数値が刻まれていないから、魔法陣が浮かび上がるだけで魔法の発動自体はしない。


「お前は魔方陣は描くものと考えているのだろう。

魔方陣の範囲を示す丸を描き、その中に魔力量を示す数字、そして発動の元になる記号や文字を当てはめていく。

それを“頑張って”早くしようとしているから、簡単でシンプルな魔方陣しか無詠唱発動が出来ていないんだ」


「………」


その通りだった私は小さく頷いた。


「俺の発動方法は魔方陣を“写し出す”方法だ。

基本的に変化がある箇所は魔力量の数値だけ。それ以外は変化がない。覚えている魔方陣をそのまま“写して”表す。

このやり方なら複雑な魔方陣の無詠唱も容易に行えるようになるんだ」


「……」


私は改めてレルリラのことを凄いと感じた。

一年の時から感じていたことだけど、それと同時に悔しいとも感じる。

実力の差が全然縮まっていないからだ。


レルリラの知っていることや考えていること、私に足りないものをレルリラはなんの見返りもなく教えてくれているのに、私は自分勝手だから、レルリラとの差が縮まっていない事を実感し悔しさがこみ上げる。


「…サラ、どうした?」


思わず膝の上に置いていた手に力が入っていたことを、レルリラに声を掛けられたことで気付いた私は体から力を抜いた。


ダメダメ。

卑屈になってもなにも変わらない。

私の目標はただ一つ。

強くなって、お父さんやお母さんが安心できるような魔法使いになる。

そして私を、私のお父さんを助けてくれたおじさん…ギルドマスターのようなSランク冒険者になること。


その為には悪いところはどんどん直していく。

今までのやり方を否定されたとしても、それは私がもっと強くなるためのアドバイスなのだ。


人との、レルリラとの差を妬む理由も余裕も私にはない。

あるわけがないのだ。


素直に受け止めて、自分の糧にするのよ。


「……なんでもない。

で、その写し出すってやり方なら、私も色んな魔法を無詠唱で出来るようになるってことだよね?ならやる。今日から早速。ここでつまづいてるわけにはいかないもの」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ