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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~四学年~
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13.奇跡








それから暫く探し回ってアルミラージを二体倒した私達は、マルコの課題であるしましまタビーという魔物を探していた。


「いないわね…」


「猫というだけあって、警戒心が強いのかな?」


「それをいうならウサギだって警戒心強いだろう」


探知魔法を展開しながら辺りを見渡すが、この近くに絶対に魔物がいる筈なのに姿をみることも出来ずに私達はずっと近辺を彷徨っていた。

他の場所を探してもいいだろうけれど、でもこの魔力反応がどうしても気になるのだ。


「どうしましょう…、他を探す?」


「ううーん、どうしようか…、マルコはどう?」


「もう少し探して、ダメなら他を当た………いた!!!!」


突然の大声に驚きながらも、指を差しターゲットを見つけたことを告げたマルコの指し示す場所を、私とエステルは振り向いた。

木の上部を指し示すマルコの指先を追うように視線を移動させると、木の枝に茶色と白の縞々模様の猫…といってはあまり可愛くない魔物がそこにいた。


「<バーリリー・デオー_水のバリア>」


私とエステル、そしてマルコに水の防御魔法を纏わせる。

そしてタビーが木から飛び降りた時、エステルが周囲の地面を軟化させた。


「ビギャッ!」


見た目と同じく可愛くない声を出したタビーは沼のようになった地面に取り込まれ、盛大に暴れた。

土魔法ってこんなことも出来るんだなと感心していると、パリンと何かが割れる音が聞こえ、私は自分の防御魔法を確認する。


(ちゃんと防御魔法が機能している…)


ちゃんと水の防御が張られていたため、横に並ぶエステルとマルコを確認しようと視線を向けると一気に血の気が下がる。

木の枝が振り上げられ、勢いよく二人へと衝突しそうになる光景をこの目でみたんだから。


「<マー・ディー・グラセー_氷壁>!」


咄嗟に魔法を発動させて私は何とか木の魔物、トレントとかいう魔物から二人を守ったが、元々の表情なのか吊り上げられたトレントの目尻にごくりと生唾を飲み込んだ。


「……成程。これが無法地帯ってわけね」


「…そういえばレロサーナが言っていたわね」


「うん。このこと言ってたんだと思うよ」


エリアAとBはこういう魔物がいなかったし、いたとしても簡単に対処出来ていたから大して気にも留めていなかった。


「トレントって火に弱いって聞くけど…」


マルコは風属性で、エステルは土属性、そして私は水属性だ。

どう考えてもトレントとは相性が悪い属性の集まりだ。


「相性が悪い属性に対するトレーニングでもしておけばよかったよ。私の防御魔法も物理攻撃に弱いからまたかけてもいいけどすぐ壊されちゃう。

防御力を魔法攻撃でばっかり確認してたから、物理攻撃で確認してなかった代償がここで来るとは思わなかった」


「そんな悠長な事言っている場合!?逃げるわよ!」


エステルが私の腕を引っ張り、一部の地面を戻した場所を渡って私達は逃げ出した。

マルコもしっかり後ろについてくる。


「ひゃ!追いかけてきたわ!!!」


ドスンドスンと、体格に似合わない巨体で私達を追いかけるトレント。

意外に距離が開かないのはトレントが素早いからなのだろうか。

私は走りながらマルコに顔を向ける。


「マルコ、アイツ中心で旋風起こせる?」


「つ、旋風!?」


「物は試し!山だって自然発火するときあるんだから」


「あーもー!わけわからんが出来る!」


「じゃあお願いね!…<セチェージ_乾燥><フロタント_浮遊>!」


「つ、<ツアビロン_旋風>!」


私は駆けていた足を止めると、トレントとトレント周囲の植物や落ち葉の水分を一気に抜いた。

全てから完全に抜けたか確認はできないが、通常の状態よりは確実に水分量が下がった状態にはなっているだろう。

色が変わった落ち葉を浮かせて、マルコの魔法に枯れ葉を浮かせて混ぜ入れる。


「ん?」


トレント中心に竜巻が起こり、トレントはバタバタと木の枝を動かすが、風の勢いでうまくいかないのかその場から動き出すことはないようだ。


(これはこれで逃げれるかも!?)


だって動けてないし!


「二人ともいくよ!」


「は!?倒すために魔法使ったんじゃないのかよ!?」


「物は試しって言ったでしょ!山火事だって滅多なことで自然発火しないんだから!」


そう。

山火事の主な原因は人為的な理由が殆どで、落雷や静電気による自然発火は滅多に発生しない。

私がそれを知っているのも、この前図書室にいった時に山火事と大きく書かれた新聞の見出しを見たからだ。


だから可能性が低かったとしても、なるべく確率を上げるために水分を抜き乾燥状態にさせて、そしてマルコに起こさせた旋風に落ち葉を混ぜ合わせただけで本当に火を起こせるとは思っていなかった。


「さ、サラ…!」


後方を走るエステルの呼びかけに振り返ると、更に後方に火の気が上がっていた。

足が自然に止まり、思わず立ち止まってその光景を見上げる。


「へ?まじで?」


「凄いわ!本当に火を起こせるだなんて!」


「わ、私もびっくりだよ」


すぐに戻りたい気持ちはあった為、様子を伺うようにトレントがいるであろう場所に戻ると、トレントは勢いをなくしただ勢いよく燃えていた。

しかもマルコの旋風は発動中の為、熱も炎も上空へと逃げていき、被害が広がっていなかったことに私とエステルは大きく安堵する。

苦い思い出となったあの惨劇を再び繰り返すことがなかったのだから。







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