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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~四学年~
73/253

8.通常通り






「先生、この後はどうするんですか?」


今日はBクラスとの対戦が組み込まれていた為、私達はこの後の授業について質問した。

だって対戦相手たちは逃げるように去っていったし、試合だって一戦しかやらなかったから時間がだいぶ余っている。


先生はいつもの雰囲気に戻り、ニッと笑みを浮かべながら答える。


「もっちろん、今まで通り討伐授業だ!」


そう断言した先生は、始まる前からBクラスとの対戦は一戦だけですぐ終わると確信していたようだ。

じゃなければ魔物討伐を授業の続きとして行わないし、前もってエリアの確保もしないだろう。


しかも


「さあ!皆引け!」


と取り出した箱。


あれはいつものチーム分けを決める箱と同じように見えるが、ちょっと違う。

何故なら数が少ない。

一応先生の中で実力者同士を揃えることは認めていないから、私とレルリラが一緒になることはないし、サーやマルコ達が一緒になることもないように箱の中身は仕組まれているからチームを決めるときの箱は複数用意されている。

だけど先生が出したのは一つだけ。

となれば、あれは魔物討伐の課題決めかな?と思いながら、次々と生徒達が箱の中から一枚の紙をひいていく様子を見ていると、すぐに私の番となった。


私は箱の中から一枚だけ紙をひいて、中を開いてみるとそこには”スネーク”と書かれていた。


「スネーク?」


「ヘビ系の魔物だな。個体によって毒性を含んだ攻撃を仕掛けるものもいるとされている」


首を傾げた私にレルリラが答える。

アンタさっきまで近くにいなかったじゃない。いつの間に来たのよ。とツッコミを入れるのは適切ではない。

レルリラはいつもこうなのだから。


「毒かぁ…、攻撃を受けない様に気を付けなくちゃだね。

レルリラは何引いたの?」


「キラービー」


「蜂ね!しかもキラービーの蜂蜜って高級食材として有名じゃない!

取れたら食べさせてもらえたりするのかな!」


わくわくと胸を躍らせていると、レルリラが「好きか?」と尋ねてくる。


「ん?キラービーの蜂蜜をってこと?」


そう聞くとレルリラはコクリと頷いた。


「キラービーの蜂蜜は高級過ぎて食べたことないから好きかどうかに対して答えられないけど、蜂蜜自体は好きよ」


蜂蜜は料理やトッピングとかにも利用できるけれど、私の中での蜂蜜といえばお母さんが作ってくれた蜂蜜湯が印象強い。

お湯に蜂蜜を溶かしたものだけど、よくお母さんが「よく眠れるわよ」っていいながら作ってくれたんだ。


「じゃあ貰えたらやるよ」


「え?本当に?」


「ああ」


そういって頷くレルリラに私は自然と笑顔になる。

学園側が許可を出すとは限らないけれど、レルリラの気持ちが純粋に嬉しいからだ。

けど、ちょっと待って。

学園の用意している魔物って幻影でしょ?

この前討伐したタランチュラも倒したあと消えるようにいなくなってしまったし、きっとキラービーも同じはず。だったら蜂蜜だってないよね。


私はガクリと肩を落とした。


「皆引いたなー!

チームメンバーはここに示してるから、各自確認して出発する事!」


パンパンと手を叩いて皆の意識を集めた先生の頭上には、三から四人のチームをいくつか示されていた。

その中から自分の名前を見つけ、そして今回チームを組むクラスメイトを確認しようと、私はレルリラとの話をやめて先生の頭上に集中する。


「えっと、私は……」


「サラは私と一緒よ」


そして現れたのは、マリア・シティシスとリム・セファルド。

セファルドは雷属性で私とは属性が違うし、そもそも男爵とはいえ貴族で、しかも男性だから話す機会もそんなないからあまり喋ったことはないけれど、マリアとは属性が違っていても話す機会が多かった。というより、マリアからよく私に話しかけてくれるのだ。


風属性のマリアと、雷属性のセファルド、そして水属性の私が今回のチームメンバー。


メンバーも揃ったことだしと、先生の元に行くとそのままエリアAに飛ばされた私達は互いにお題の魔物を見せ合う。

最初はチームで課題一つだったのが、今ではそれぞれ課題の魔物を割り当てられ、その魔物をチームで討伐するという流れになっているから、最低でも魔物三体以上倒さなければならない。


「サラのはスネークが課題なのね。私はスコーピオンよ」


「俺はリザードだ」


ヘビにトカゲにサソリと、バラバラの課題にため息をついてしまう。

倒すのはいいけれど、見つけるまでが意外と大変なのだ。

最初は出没しやすい場所を教えてくれていたが、今では「探知魔法使えるだろ?」って感じでヒントもくれない。


「すまない、俺の魔力は多い方じゃなくて…」


「ああ、いいよ。私がするから。その代わり討伐の際にはたくさん動いてもらうからね」


そういうとセファルドはほっと安堵したように「ああ」とうっすら笑みを浮かべながら引き受けた。


探知の魔法は自分の魔力を広範囲に広げさせて他の魔力を感じ取る魔法だから、使った分の魔力が消費される。

魔力を温存しておきたい者には好かれない魔法なんだよね。

広げた魔力は回復しない限り増えないから、この後魔物と対峙することを考えたら余計に温存しておきたいと思うもの。


セファルドとマリアの代わりに探索魔法を展開させていると、マリアがおずおずといった様子で尋ねる。


「私サラに聞きたいとずっと思っていたのだけれど、どうしてそんなに魔力が多いの?」


「ん~、努力…かな?」


元々私は魔力が多い子供だったけど、正直学園に来てから考えが変わった。

平民よりも貴族の方が保持している魔力量が多いと聞いたことはあったがその通りだったのだ。

だから入学当初の私の魔力量は皆と然程変わらなかったが、自分でも多いなと思い始めたのはここ最近のこと。


体力づくりが最初にあったレルリラとのトレーニングは、私の体力がそれなりにつくと魔法をメインで鍛えだした。

つまり、毎日倒れる程に魔力を使いまくる生活を送ってから、私の元々持っていた魔力の総量が徐々に増え、今では広いエリアA全体に探索魔法を広げられるほどに増えたのだと思っている。

だから努力だと私は答えたのだ。


「あ、魔力を増やしたいなら、一緒にレルリラのトレーニングする?私は仲間が増えるのは歓迎だけど」


「え、遠慮しておくわ…!」


ブンブンと首を振るマリア。

レルリラのトレーニングって皆にどんなイメージを持たれているのかと苦笑していると、セファルドは少し考えるように顔をしかめていた。

私は思わず期待した。

これは…と思いドキドキしながら私はセファルドに尋ねる。


「…もしかして興味ある?」


「少し…」


その言葉に私は浮かれ、セファルドの手をがしっと掴む。


「じゃあ一緒にやろう!レルリラには私から言うから!」


仲間が出来た喜びでいっぱいだけど、ちゃんとするべきことはしている。

私は浮かれながら探知した魔力の方へと指さした。

まだ立体的に探知できない為に、そこに課題の魔物がいるとは限らないけれど、しらみつぶしのように見ていかないとわからないからね。






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