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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
幼少期~学園前~
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5 夢のために




そして次の日から冒険者になることを心に決めた私はやる気に満ち溢れていた。


「お母さん!今日はお仕事お休みなんでしょ!?」


朝食の時間。

だけど今日のお父さんは朝早くに出かけてしまったのか、家の中に姿は見えなかった。

でもたまにあることだから気にせず、お母さんが作ってくれた朝食_パンケーキ、スクランブルエッグ、ソーセージがお皿に乗った料理_を口に含みながら尋ねる私に「食べ終わってから話しなさい」と注意しつつも答えてくれる。


「そうね、今日はお母さんお仕事はお休みよ。

なに?サラはお母さんのお手伝いをしてくれるの?」


「手伝ったら私がお父さんのいってた学校に通えるように教えてくれる?」


「いいわよ。余った時間はサラのお勉強に全部あてちゃう!」


「じゃあする!だから早くおわらそうね!」


私がお母さんに勉強を教えてくれるように頼む理由は、昨日お父さんに出された条件の為だった。

キュオーレ王国の最高峰と呼ばれるオーレ学園に入学すること。

そこで退学することなく、卒業を迎えること。

それが条件だった。


このオーレ学園という学校には平民だけではなく貴族の子供たちも志望するほどらしい。

なにせただの貴族だけではなく王族も通い、また将来性も確実だといわれているような学園だ。

といっても当時の私にはぶっちゃけよくわかってないが、とにかくこの学園は貴族と王族からかなりの支援金を集めているらしく、通う生徒は学費や給食費、使用する文具代や、寮生活費まで無料らしい。


なるほど人気なのがわかった。と私はうんうんと頷いた。

無料という言葉が嫌いな人はいないし、目を輝かせない人はいない。

だから、国中の子供たちが入学を希望すると認識を持った私は、かなり勉強を頑張らなくてはいけないということだけはわかった。


今までならお父さんの仕事に着いて行っていた私は、この日を境に完全にやめると宣言したことで、お父さんはかなり寂しそうな顔をして朝出掛けたみたい。

すぐ「おやすみなさい」と部屋に戻ってしまった私は気付かなかったけれど、くすくすと笑うお母さんが何故笑っていたのかと不思議に思っていたくらいだ。


「じゃあサラにはベッドメイキングをしてもらいましょうか!」


「はーい!」


右手を天井に着くくらい高く上げて答えた私は、そのまま家族三人のベッドを綺麗にするべく走り出す。

布団をはがして、シーツの端を引っ張って皺を伸ばしてから、ベッドから落とした布団をかけなおす。

お父さんとお母さんのベッドは一つだけれど、その分大きいから皺を伸ばすのが少し大変、でも結構綺麗にできたと思う。


私はお母さんの元に行って次の指示を貰った。


濡れないように服を脱いで、沢山の泡でお風呂を掃除。

その後はお母さんが洗った洗濯物をお母さんと一緒に干して、そしてそのあとははぐれないように手をつないで食べ物が売っている店に向かう。


「あれ?サラ?お前今日はいかねーの?」


そんな時、お母さんと食材を買いに向かう途中声をかけられた。

振り向くと、マイクたちがいた。

きっとこれからおじさんのところにいくのだろう。


「いかなーい!私今日から忙しいの!」


ここ最近私もマイクたちと同じように頻繁におじさんの話を聞きに行っていたため、今こうしておじさんの元に行かずお母さんと一緒にいるのが不思議に思ったみたいだ。


おじさんの話はとても面白い。

山賊に襲われる町を救ったりは勿論だけど、強い魔物と戦うときなんて「すげー!」とか思わず言ってしまうくらい沢山の話を聞かせてくれる。

欲を言えば私だっておじさんの話を聞きに行きたい。

でもおじさんのような強くて凄い冒険者にもなりたいとも思っているのだ。

そのためにはお父さんの条件をクリアしなければならず、学園に入るために勉強を少しでもしなければいけないから、やっぱりおじさんのところに行くことは出来ない。


「ふーん、そっか。じゃあ行くときは教えろよな!

そん時はお前の席確保しといてやるから!」


そういって私とは逆の方向にかけていくマイク達に背を向けて、私はお母さんと共にお店に向かう。

食材を買って、ごはん支度を手伝って、そしてやっとお勉強タイムに入った。


文字の書き方、読み方、そして簡単な計算は既にギルドに預けられた時に教わっている。

お母さんにもお店でテストされたけど、間違えることもなく答えることが出来た。


「うーん…、最初は計算問題からと思ったんだけど、この分だといらないようね」


頭を悩ませるお母さんに私は尋ねる。


「ね、ね。学園ってどんな問題が出るの?」


私の疑問にお母さんは困ったように笑った。


「ごめんね、お母さんもわからないの。人族の学校には通ったことがないから…」


「ひとぞく?なにかちがうの?」


こてりと首を傾げた私にお母さんは目を瞬かせた。


「あ、そっか。サラにいってなかったわよね。よく聞いてね、この世界にはサラやお父さんのように人族以外の種族も存在するの。

…お母さんの耳を見てごらん」


緑色の髪の毛を耳にかけ、普段見ることのなかったお母さんの耳をじっくりと見る。


「ん~~~、すこしとがってる?」


「そう。お母さんはエルフっていう種族なの。

でもお母さんは人族の血が混ざっているから、他のエルフより人族に近いけれど、純血のエルフ族はお母さんよりも耳がとがってるから見るとすぐにわかるわ」


「へえ!そうなんだね!」


「他にもドワーフっていう小さい見た目だけど、物を作るのがとっても得意な種族がいたり、動物と人族をあわせたような獣人族だったり、沢山の種族がこの世界には存在しているのよ」


そういったお母さんに私はまだ見たことない人たちを想像して目を輝かせた。

そんな私にお母さんは苦笑してこう告げる。


「だけどお母さんがエルフだってこと、言っちゃだめよ?サラにだから話すんだからね」


そういうお母さんに私は首を傾げた。

なんで話しちゃいけないのかわからなかったからだ。


「どうして言っちゃいけないの?」


「お母さんも昔のことだから詳しく知らないのだけど、人族と他の種族は仲が良くないらしいの。

お母さんの耳も純粋なエルフに比べたら人族よりだし…、だからお母さんも周りにはエルフってこと言っていないのよ」


知っているのはお父さんくらいね。とお母さんが言う。


「仲悪いの?お母さんがエルフって知られたらこの町から追い出されちゃう?」


「追い出されるかはわからないけど、お母さんがいたエルフの里ではね、エルフは人族にあまりいい感情を持った人はいなかったの。

逆もそうなのかはわからないけど……でも、そうね。もしかしたら追い出されちゃうかもしれないわね」


「え!そんなのやだ!」


「だから内緒ね」


口元に人差し指をあて「シー」というお母さんに、私も真似て同じ仕草をする。


「ね、ね。お母さんのエルフ族って人族とはどう違うの?」


「エルフはね、人族よりも自然が大好きで、そして魔力量が高いことが一般的ね」


そう告げるお母さんの言葉に私は大切に育てている花壇を思い出す。

そういえばお母さんは綺麗なお花もそうだけど、そこらへんに生えている雑草も大切にしていた。


「まりょくりょう?ってなに?」


「魔法を使うことができる力のことよ。

魔法がどれぐらい使えるのかは魔力量によって決まるの。

だから魔力量が高いエルフは人族よりも魔法がとても得意なのよ」


「じゃあお母さんも!?」


「ん~~~~。お母さんは人族の血が入ってるからか、魔力量はお父さんと変わらないか少ないくらい、…かな?

でもね、お父さんよりは魔力の扱いが得意なのよ」


「わああ!お母さんすごい!!」


キラキラと輝く私を見て、「よし!」とお母さんは立ち上がった。





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