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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~三学年~
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12 呼び出し②





扇を閉じ私に向ける金髪縦ロール女性に、“本性ってなんじゃい”と心の中で突っ込んだ。

というかレルリラは一体何をしているんだ。

いつもより早く来いと手紙に書いておいたじゃないか。

そしてレルリラに好意を寄せている人から、呼び出しの手紙があったかもしれないから、手を貸してほしいとちゃんと理由をつけて書いたはずなのに、アイツ全然来ない。


「…先程から何をお話されているのかわかりませんが、手紙を送った以上用件はありますよね?学園は本日もありますので早く用件をお話した方がいいかと思いますよ」


早くしないと食堂が開くぞという意味で私は話す。

隠喩話法とか使いこなせる自信はないから、せめて遠回しに話すだけしてみた。

だけどそれがよかったのか、金髪縦ロール女性は悔し気な表情を見せる。


「……ッ、いいですわ。単刀直入にお伝えしましょう。貴女レルリラ様に馴れ馴れしくし過ぎですわ!平民だから自分の無価値に気付いていないようですが、レルリラ様に今後一切近づかないでいただきたい!」


「え?」


あれ、本当にレルリラが原因だったんだ。

そう思った私は思わず間抜けな声が出た。


そして金髪縦ロール女性は私の反応がお気に召さなかったらしい。

持っていた扇を握りプルプルと震えていた。

気のせいじゃなければ、ミシミシと悲鳴のような音が扇から聞こえてくる。

離してあげてー。


「立場もわからない下賤な者の癖に!!!私を馬鹿にしているの!!!?」


と金髪縦ロール女性は扇を振り上げた。


真剣な場に間抜けな反応をした私もいけない部分はあったかもしれないけど、でも決して彼女を馬鹿にしたわけじゃないのに。

そもそも下賤って何。

私が平民だから?平民が貴族に対してオドオドする様子もなく、ああも真っ向勝負的な態度を取ったことが気にくわないから?

でも先生たちも言っていたように、学園では全ての生徒が平等だ。

だからこそ平民の私にも先生は礼儀作法を身につけさせている。

授業の一環でもあるが、私がオーレ学園の生徒の一人だからだ。

そして礼儀作法の授業を受けた私は、平民は貴族に無条件にひれ伏さなければならないということを学んでいない。そんなこと教わってもいないのだ。


私は目を瞑った。

来るであろう衝撃に耐えるために歯を噛み締めて備えた。


だが待っても衝撃がくることはなく、それどころか困惑する金髪縦ロール女性の声を耳にして、目を開けて状況を確認した。


「……あ、……」


昨日の夜に手助けをお願いしていたレルリラがそこにいた。

扇を振り上げている彼女の手首を掴み、私へ振り落とされる前に止めてくれていたのだ。


私はほっと安堵した。

そしてやっと来たと思ったのだ。


彼女は自信の行為を止めた人物がレルリラだと気付くと急に態度を変え、表情を乙女に切り替えた。

私はその態度の急変に目を疑ったがレルリラが私を見ながら「知り合いか?」と尋ねる。

私はレルリラの言葉に目を点にして固まってしまった。


(こいつ、私の手紙見てないの?)


そう疑問に思ったが、もしレルリラが特訓後すぐに寝ていたのなら手紙に気付かなくてもしょうがないか。

私はどう反応して良いのか迷ったが、レルリラに見えない様『誤魔化しなさいよ』と必死で目で訴えてきた彼女を見て、どう返答するかを決めた。


「……ううん。同じクラスじゃないから知らない人なんだけど、でも頼みがあるんだって呼び出されたの」


「頼み?知らないのにか?」


「うん。でも彼女は私のこと知ってたの」


「??」


首を傾げるレルリラと、変なこと言ったら承知しないわよと凄い表情を向ける彼女に私は笑った。


「ほら、レルリラに私鍛えてもらってるでしょ?彼女そのことを知って、レルリラにトレーニングを付けてもらいたいって。でもレルリラは公爵家の人だから話しかけづらいようで、それで私にお願いするように話をつけてもらいたいっていってたのよ」


「……そうか」


鬼のような表情を浮かべていた彼女は私の言葉を聞いて目を輝かせた。

好意を抱いているレルリラに少しでも近づけると、そして私が仲人をしようとしてくれる。そう思ったのだろう。


「ちょうどこれから朝のトレーニングをやるでしょ?レルリラが問題ないなら彼女もどうかな?」


「………だが本人はそのつもりはないようだが?」


恐らくドレス姿の彼女の格好を見てそういっているのだろう。

私は慌てる金髪縦ロール女性の返答も聞かず「大丈夫」と答えた。


「私達のクラスの皆だってドレスのまま授業を受けているじゃない。彼女が何科の生徒かわからないけど大丈夫だよ。それにこの時間に頼んできたということは早朝のトレーニングから参加したいということだと思うし」


そうはいっても激しい運動が予想される授業のときは運動服に着替えてるけど。

それを知っているはずのレルリラはなにもいわず、「そうか」と答えた。


レルリラが彼女の手首から手を離す。

そして先を進むレルリラに彼女が追いかけるように続いた。

私はウキウキと心躍る彼女の後姿を眺めて息を吐き出した。


(そういえば、彼女の行動についてなにもいってなかったわね)


明らかに叩こうとする側とされる側のように見えていた筈だったが、レルリラは止めるだけ止めて、言及はしなかった。


知らない人の特訓の参加も快く、かはわからないけど承諾したし。


まぁでもいっか。

実際にレルリラの特訓に参加したことがあるマルコが、キツイキツイと弱音をいうくらいキツいと評判のトレーニングに彼女を参加させることが出来たのだから。


彼女はレルリラに近づくことが出来て、私は彼女にレルリラとの健全な関係を証明でき、そしてトレーニングに参加させることでちょっと痛い目に合わせられることが出来る。

あわよくば彼女から他に嫌がらせをしている人達に話してもらいたいという狙いもあるけど。


でもこれで問題解決の一歩を踏み出せたに違いないと、私は口端を上げて二人の後を追いかけた。




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