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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~二学年~
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22 買い物③




そしてマルコ達はどうしたのかと、別れた場所に戻ると丁度男連中も戻ってきたところだ。


「おいサラ。あっちに運動用にぴったりの店あったぜ!」


どうやら男女共に入りやすい店を探してくれていたらしい。

二人の様子をちらりと伺ってから、教えてくれた店へと向かうと確かに動きやすそうな服がたくさん並べてあった。


だけどさ…


「ねぇ、これって男性物じゃない?」


「そうだが?」


当然のように返すキアに私は愕然とした。


「そうだって…私は女よ。女」


「お前運動しやすい服探してたんだろ?男用でもいーだろ」


「まぁ、確かにそうだけど…」


キアの言葉通り、並んでいるお店を外から伺うと、女性物の服は今日エステルが貸してくれたようなお洒落な感じの服が多い印象だ。

逆に運動服にするようなシンプルなデザインは探す方が難しいほど。

だからキアの言葉通り、探しやすさを重視するなら男性物を選択した方が効率的という意見はもっともなのである。


「ほら、男性物って言っても小さいのもあるし、…子供服だけど。

サイズあうのがあるかもしれねーだろ。子供服だけど」


「子供服って二回も言ってるじゃんか。

ごめんね、レロサーナ、エステル」


ふざけてるのか本気なのかよくわからない男たちに、私はエステルとレロサーナに謝る。

せっかくお買い物に付き合ってくれているのに、時間を無駄にさせてしまったと思ったからだ。

二人だって見て回りたいだろうに、男性服を取り扱う店では楽しくないだろう。


「ううん。気にしないで。

こういうお店に来たのは初めてで、なんだか新鮮な感じで楽しいわ」


「ええ。ここからサラをお洒落にする服を探し出すのもやる気が出るわ」


私は二人のやさしさが多く込められた言葉に感動した。

こんな言葉きっと男連中は絶対に出てこないだろうと思いながら、友情を噛み締める。

ほら!アンタたちも見習いなさいよ!と三人に目を向けようとしたところに、レロサーナが服を手渡してきた。


「みて、この服なら可愛いんじゃないかしら?」


私の体に服をあてながらレロサーナがいう。

そしてサイズ感を確認したレロサーナは急に眼を光らせた。


「うん!少し改造すれば十分おしゃれになるわ!

大丈夫!改造は私に任せて!」


「え」


そういえばレロサーナって服にはこだわりが強かったわね。

なんでも実家では可愛いフリフリの服ばかりを与えられて、レロサーナ好みの服は許されなかったとか。

そんな時だった。


「いや、明るい色はダメだ。暗い色にしろ」


「え?」


差し出された服を取り上げ、代わりにいつも私が着ているような暗い色の服を押し付けてくるレルリラに私は目がきょとんとなった。

ちなみにサイズも少し大きめで、この先数年は着れそうな服だからチョイスはバッチリだ。

だけどレルリラの言動への驚きのほうが強くて、私は素直に服を受け取れないでいる。


「あ、あの…レルリラ様?何故明るい色はダメなのですか?」


「ハールは今でも太陽みたいに明るいのに、これ以上輝いたら困るだろ」


「は?」


今の「は?」は私だけど、私だけじゃない。

近くで服を選んでいたマルコとキア、サーも同じ反応を示した。


え?私が太陽みたいに明るい?

輝いている?


そして言葉の意味を理解していくとどんどん顔が熱くなる。

なんて恥ずかしくなるような言葉をいうんだこいつは!

当の本人は平然としているから、余計に私が!恥ずかしい!


「アハハハ!サラが太陽!?」


「レルリラって面白いのな!俺サラの事太陽とか輝いてるとか思ったことねー!」


「ハールはいつも輝いてるだろ」


「アハハハハハ!」


そんなやり取りをする男たちに、私の顔の熱は冷めなかった。

だからといってレロサーナから渡された服を選ばず、レルリラから渡された服を手に取って購入したのはレルリラが薦めてきたからではなくて、一番手にしやすい場所にあったからという理由である。

決してレルリラが薦めてきたからとかではない。


そんな感じで無事服を購入できた私達は店から出ようとしたところで、一組の客たちとぶつかる。

わっ、とぶつかった私の肩を抱きよせ、態勢を整えた私はレルリラにありがとうと礼をいう。

ちなみに何故か私の服なのにレルリラが持つというから、お言葉に甘えた結果、両手は身軽だ。


そしてお店を出た私はふと落とし物に気付いた。


「…ん?これって…」


とても見覚えのある手帳をみた私は思わず手を伸ばす。 

拾ってみるとやっぱり私も持っているオーレ学園の学生証で、中を開くと同学年の人のものだと分かった。

でも見たことがない顔だ。

と思いながら他の部分に目を通すと、所属は騎士科となっていたからすぐに納得した。

騎士科と魔法科の接点は全く無いからだ。


「サラ、どうしたの?」


「これたぶんさっきの人達が落としたやつだわ。渡してくるからちょっと待ってて」


「あ、サラっ」


皆の返答を聞く前に私は店に戻り、店内を見渡した。

そしてすぐに目当ての人を見つける。


学生証で顔を確認したことから、さっきぶつかった人たちの一人だということに気付いたからだ。

しかも私達と目的を同じにしているのなら、きっと学生証が見つからず困っている筈。

だから私は急いだのだ。


予想は的中して、ちょうどその人物は会計の真っ最中で困っている様子だった。

近寄るとまず思ったのは身長がとても高いということだ。

騎士科の人は一般人の人と体の構造が違うのだろうか。

学生証の人だけでなく、友達だろう周りの人も大きい。


「あの、そこに学生証落ちていましたよ」


「えっ」


急に話しかけられ驚きつつも、私の手に持っているのが学生証だとわかるととても安堵した様子に変わる。

なにかお礼をと言っていたけれど、こういうのは助け合いだと思うし、お会計も途中みたいだから私は「大丈夫です。今度は落とさないように気をつけてくださいね」と声をかけてとっとと店を出た。

皆を待たせてるしね。


「落とし主はいたの?」


「うん、ちょうど会計をしているところだった」


「グッドタイミングじゃん!」


「そいつサラに感謝してるな!」


「割引でけーからな!」


確かに割引は大きいと私もサーの言葉に頷いた。

そして買い物を終えた私は、マルコ達と別れ、レロサーナとエステル、そしてレルリラと共に寮へと帰宅した。





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