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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~二学年~
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12 私の試合②




<マー_壁>。

支援魔法の一つで防御の魔法。


レルリラが発動した支援魔法に私は怒っているわけではない。

レルリラが氷で足元が動かせないのなら、もっている火属性魔法を使えばそれで解決するのにそれらしい気配は全くないのだ。


私はそれにすごく腹が立った。

そして同時に悲しくもあった。


一年の頃からレルリラを超えようと、張り合おうと、ずっと頑張ってきたのに。

相手にされてなくても、私は今までずっとずっとレルリラの存在を意識してきたのに。


なのに、なのに!

なんでコイツは”ちゃんと”私と戦わなの!?

私は、そんなにも価値がないの?!

レルリラにとって、私はライバルにもならないの?!

一年のころからずっと、ずっと私は……!


「戦って、いるだろう!」


理不尽に私から苛立ちをぶつけられているレルリラも訳がわからないだろう。

後から考えれば申し訳なく思うが、今の私にそんな余裕はなかった。

ただただレルリラにちゃんと向き合ってほしくて、たまらなかったのだ。


「戦ってない!!!アンタ、火属性だってもっているんでしょ!?なんで使わないのよ!!」


「ッ」


「火を使えば私の氷もすぐに融かせるのに!!すぐに終わるとか言ってるわりに手加減してるの!?

いつもアンタに勝てない私を見下してるの?!」


もう私は泣きそうだった。

そんな、ライバルだと思っていたコイツに結局のところ相手にもされてない事実を、自分の口から言いたくなかったのだ。


私は今度は拳で殴るのではなく、周りの氷を操ってレルリラに攻撃した。

相変わらず風魔法と支援魔法で対処するレルリラに、私は走り出す。


「ちゃんと!ちゃんと私と戦ってよ!!!」


一筋の涙が私の頬を伝った。

今思うと、授業中私はなにをこんなに感情的になっていたんだと思う。

だけどこの時、入学してからずっと追ってきた人に見向きもされない事が凄く悲しくて、なんとかしようと躍起になっていた。


そして、レルリラも動揺しているのか魔法が弱まり、発動していた魔法も不安定になる。


「<ツアビロン_旋風>!」


だがすぐに持ち直した。

そして私はレルリラに辿り着く前に、レルリラが発動した魔法に体を押し戻されたが寸でで踏みとどまる。


「レル、リラッ!」


「俺はこのクソみたいな力を使いたくないんだ!」


くそ!と感情を剥き出しにするレルリラの姿。

いつもは決してしない態度を見せるレルリラは、とても動揺しているようだった。


「<ベント・フォート_強風>!」


「ッ!<ゲル_氷結>!」


かぶせられた言葉の後最初と同じ強風の魔法を口にしたレルリラに対し、私は咄嗟に自身の背後に氷を発生させた。

これ以上コイツと物理的な差を開かせるわけにはいかなかった。


「クソって……クソな力って何よ!?意味がわからない!!魔法は!魔力は汚い力でも何でもない!」


「お前に何がわかるんだ!」


レルリラの言葉と共に風が強くなる。

正直、風が強すぎて目も明けるのがやっとだったし、私の属性魔法で冷やされた会場内での風の魔法は喉もそうだが、ピリピリと肌に痛みが走る。

そんな状況下、必死に開けた視界の先には泣きそうで…でも必死にこらえているような顔をしたレルリラが見えた気がした。


「……ッアンタの考えなんてわからない!!でも!私はレルリラが火属性を使っても汚いとか思わない!だってアンタは私の目標だから!

だからこそ全力で戦うレルリラと勝負したい!火属性と風属性、どっちも使うレルリラと全力を出して戦いたいの!!!」


その瞬間風が弱まった気がした。


「<空気よ凍って!そんで氷の刃になって>!」


詠唱はなんでもいい。

だから私はとりあえず思ったことを口に出しながら魔法陣を組み立てた。

いくらなんでも複数の魔法陣を組み立てるのは無理だから、複製の魔法も利用する。

魔力は食うけれど時間短縮にはもってこいの魔法だ。

そしてレルリラを囲むように無数の氷の刃が発生する。


「…ッ」


”氷”の刃に囲まれている状況は、レルリラにとってなんの障害にもならないだろう。

だってレルリラの”火”なら簡単に対処できるのだ。

それでも、火の魔法を使うこともしないレルリラに私は胸がつぶれそうな思いで苦しくてたまらなくなった。


私は、レルリラに訴えるように叫ぶ。


「レルリラ!…私は魔法を使うのが好き!私の夢どうこうとか関係なく!

だってお父さんもお母さんも、私が初めて魔法を使えた時とても喜んでくれたの!二人とも笑顔になって、自分のことのように嬉しそうに笑って、私はとても楽しくて嬉しかった!」


今でも初めて使えた時の両親の反応が鮮明に思い出せる。

ただの光の玉で簡単な支援魔法なのに、その日の晩御飯が豪勢になるほどに物凄く喜んでくれたのだ。


「レルリラは?!初めて魔法を使えたときどうだった?!楽しくなかった!?」


いつの間にか風はやんでいた。

氷に背中を預けていた私は、地面に降りて、氷の刃はそのままでレルリラに近づく。















「…魔法が楽しくないなら、何故ここにいるの?」






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