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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~二学年~
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9 属性魔法②








「私はアラ・ヴィレディスラ。水属性よ。早速だけど、水属性について少しだけ説明するわね」


属性ごとに集まり、アラさんの後ろをついていくと、平原が広がっている練習場Dに辿り着く。

迷いのないアラさんの足取りに、もしかしてアラさんもこの学園に通っていたことがあるのかなと思うくらい真っ直ぐ辿り着いた。


そして練習場に着いた私達はキョロキョロとあたりを見渡す。

王国一の敷地を持つとは聞いてたけど、まるで芝生を手入れしているかのように均等に揃えられた平原だったのだ。しかも広い。学園にはこういう訓練の為の敷地がいくつもあるのか。

凄すぎる。


ちなみに水属性は私を含めて四人だ。

リク・シェイリンとナオ・メシュジ、そしてアコ・クルオーディと私。


アラさんはふふと笑った後に、両手を軽く合わせるように叩いて私達の注目を集めた。


「水属性を簡単に言うと、攻守に優れた万能型なの。例えば…」


何人かが頭を傾げる様子を見て、アラさんが何かを探すように見渡した後「見ていて」と告げる。


「<ラーンス・ディー・グラセー_氷槍>」


短く唱えた後、アラさんの周囲に魔法陣が浮かび上がり、遠く離れた木々に無数の氷の槍が貫いた。

私含めて、驚愕する。

アコは目を見開き、シェイリンとメシュジは大きく口を開けて呆けている。


「こんな感じに、水は形状変化させると氷になるし、氷になった水属性の攻撃力は格段にあがるわ」


「で、でも氷は火に当てると、すぐに溶けてしまいますわ」


我に返ったアコが質問するとアラさんはゆっくりと頷いた。

表情は笑みを崩していない。


「ええ、そうね。でもその場合、水だとどうかしら?

氷だと溶けてしまって攻撃力もなくなってしまうけれど、私たちは水属性なのだから水で攻撃してもいいと思うのよ」


「水で、ですか?」


「ええ。水はなにも飲んだり、水浴びするだけではないわ。

水は火を浴びると熱くなり熱湯になるけど、蒸発するのにも時間がかかるし、それに空気中にいくらでも”水”はあるもの。

だからこそ…<ラーメー・デオー_水刃>……このように、氷ではなく水で刃でも槍でも作って攻撃することも可能よ」


話途中で放たれた<ラーメー・デオー_水刃>で綺麗に真っ二つになった木に、私たちは息を飲む。


「…すごい」


「ええ、本当に…。でもこんな高度そうな魔法は私たちに出来るのかしら?」


「それに空気中って、水蒸気の事だよな?それがどうして関係するんだ?魔法で生み出しているのだから関係ないんじゃないか?」


支援魔法でも攻撃に利用できる魔法はいくつかあるけど、こんなに簡単に、そして攻撃力が高いアラさんの魔法を見て、少しだけ皆が不安に思ってしまうのも無理はなかった。

というか、アラさん本当にギルド職員?

冒険者の間違いじゃない?いや、昔はギルド長と一緒に冒険者をしていたみたいだけど、正直ここまで凄いとは思ってなかったから、本当にびっくりした。


「じゃあ一つ一つ質問に答えていくわね。まずは、貴女の質問。

最初に見せた<ラーンス・ディー・グラセー_氷槍>は確かに水から氷への形状変化というものが必要で、教えるのは少し先になると思うけれど、<ラーメー・デオー_水刃>は初級程度の魔法だから大丈夫よ」


その言葉に私も皆も、ほっとして、思わず肩や眉間に入れてしまっていた力が抜ける。


「次に貴方の質問。空気中の水の存在についてだけれど、属性魔法は元素が関係する魔法なの。

結構意識していない人が多いんだけど、この世を構築している元となる要素、それが元素というものは知ってるかしら?」


その質問に対してメシュジは頷いた。


「雷……昔は空と呼ばれていたのだけれど、空は世界を覆い、風は世界に流れを生み出し、土は世界を繋げる。

水は世界に潤いを与え、火は世界に温もりを届ける。

私達が使う属性魔法は、この世から与えられた奇跡とも呼べる魔法なの。

だからこの元素がある中での魔法は、自然と威力も強くなる」


「えっと……つまり空気中には水が含まれているから、水属性の魔法は強いということですか?」


「その通りよ」


「で、でもそしたら他の属性だってそうですよね?」


確かにそうだ。

雷の元といえる空は常に私達の上空にあるし、風は空気、土は大地に広がっている。

火は……よくわからないけれど、それでも水だけが強いわけではない。


「水は他の属性に比べて一番身近に存在していると私は思っているわ。例えば空気。空気の中には気体となった水蒸気として水が存在しているし、植物や大地の中にも存在する。

他の属性よりも一番身近で、一番多く存在しているからこそ、私は水属性が一番優れてると思っているの」


にこりと微笑むアラさんに私は思わず唾を飲み込んだ。


(………アラさんってこんなに凄い人なんだ)


勉強を教わっていた時は、大人だからたくさんのことを知っているのだなと思っていたけれど、初めて知った知識がいくつも出てきて驚いた。

それにアラさんは私の目標でもあるマーオ町の今のギルドマスターと同じパーティーを組んでいたと前に聞いた。

こんなにたくさんのことを知っていて、しかも簡単に魔法を発動するアラさんでも冒険者ランクはAランク。

Sランクって本当高い目標なんだと、ぐっと握る拳に力が入る。


「あの…!」


「はい。えっと、貴方は…」


「リク・シェイリンです!防御も水属性で出来るんですか?」


「シェイリンさんですね。ええ、出来るわ。わかりやすいように水の魔法でやるから…、ハールさん何でもいいので攻撃魔法をお願いできるかしら?」


「え、あ、はい!」


いきなりの指名に驚きつつも、他人行儀な話し方に少しだけ寂しく感じたが、今は先生と生徒の関係だ。

贔屓されていると思われても嫌だし、アラさんの心遣いに感謝しながら魔法を発動する。


「<エーグウィール_針>!」


選んだ魔法は支援魔法の一つ。

まだ属性魔法を習っていなかったというのもあるが、この魔法を選んだのは魔法陣が複雑ではないからだ。

ただどれほど魔力を込めて攻撃すればいいのかわからなかったから、針を太くさせるために”それなりの”魔力を注いだ。

そうすることで皆も魔法で生み出した針を見失うこともないだろうと、私達生徒から距離をとった先生に射出させる。


「<マー・デオー_水壁>」


アラさんの前方に分厚い水の壁が作られると、私が放った魔力の針が水の壁に威力を奪われそのまま停止する。


「ハールの攻撃が止まった!」


「すごいわ」


一応これでも学年のトップに入るけどアラさんに敵うほどの実力を身に着けてはないし、一学年の時はほぼほぼ机上勉強だったわけだから、”私の攻撃が止まった”とかなんか凄い買い被ってる言葉を聞くと、ちょっぴりむずむずする。

私は少し熱くなった顔をパタパタと手で仰いで顔の熱を冷ます。


「ふふ。属性魔法というけれど、実は簡単な魔法が多いのよ。

さっきのように基本となる支援魔法があれば、水属性を示す記号を魔法陣に追加するだけなのよ。

でもこれでわかったと思うけれど、先程のハールさんの攻撃に対し、支援魔法で塞ごうとした場合攻撃以上の魔力量が必要だけど、属性魔法で防ごうとした場合は支援魔法よりも効果が倍増し、支援魔法ではできなかったことが可能となるわ」


アラさんの言葉に私達は高揚した。

属性魔法という言葉から、特別なものだと思っていたからだ。


「でも支援魔法と違うところがあって、属性魔法の魔法陣には魔力量というものが必要ないの。

じゃあどうやって調整するかという話になるけれど、それは実際に注ぐ魔力量と具体的なイメージをもって可能となるわ」


「具体的なイメージとはどのようなものですか?」


「例えば先程私はハールさんの魔法を水壁の中で威力を殺したのだけど、その為に水自体の粘度をあげ、そして物質を絡めとるというイメージをもって行ったのものなの。

そうすることで相手の攻撃の威力を奪い、無力化できる。

この利便性の高さが属性魔法のすごいところで、この器用さが水属性よ。

では皆さん一か月間水属性の魔法を習得しましょうね」


にこりと微笑むアラさんに、私たちは声を揃えて返事をした。





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