8 属性魔法
さて、何度も言うが二学年となった私たちはついに属性魔法を学ぶことになる。
ちなみに属性魔法に関係ないが、私は無事に今まで仲良くなっていなかった子たちとも仲良くなることが出来た。
これは本当に嬉しい。
けど、まだ女子生徒は私しか制服着ていないんだよね。
なんでよ。
とにかく属性魔法は両親からも習ってなかったので、とても楽しみにしていた一つだ。
何故習っていなかったかというと両親と私は同じ魔法属性ではないからだ。
属性魔法は属性の魔力を持っていないとその属性の魔法を発動することが出来ない。
勿論お金を持っていれば、魔法玉を利用して属性魔法を使えるようにはなるが、平民にはハードルが高いのだ。勿論金銭的な意味で。
その為発動したこともない魔法を教えることは出来ないということで習っていなかったのだ。
「じゃあ皆に特殊な紙を渡すぞ」
先生が魔法で生徒全員に特殊な紙というものを配り、私は目の前に飛んできた宙に浮く紙を手に取った。
「この紙は特殊でな、紙に魔力を流すと属性がわかるようになっている」
先生の説明に思わず渡された紙を訝し気にみてしまった。
掌サイズのうすっぺらい紙がそんなに凄いのかと思ったからだ。
「風の属性なら紙が切れるし、火なら紙が燃える、水は紙が濡れるし、土なら紙が崩れる、雷は紙にシワが入ると言った感じだ。
実際に使ったほうがわかりやすいな」
そういった先生の手にある紙に、一瞬にしてシワが入る。
「このようにシワが入った先生は雷の属性だ」
じゃあ皆やってみてくれと、告げる言葉を合図に皆が紙に魔力を注ぎ始める。
私もと皆に続いて紙に魔力を注ぐと、すぐに紙が濡れた。
まぁ予想はしていたけれど…
「私は水の属性ね」
全ての人に当てはまるわけではないと思うが、人は属性の色を持つことが多い。
私のお父さんも雷属性だから髪の毛は金髪だし、風属性のお母さんは緑色、私も水色に近い…快晴の時のような空色の髪をしている。
ちなみに目は濃い青色だ。
教室内を見渡すと属性の色を持つ人が殆どで、反応した紙に驚いた様子もないから、みんなも自分の属性について検討はついていたと思う。
というより、自分の魔力を自覚する時自分の中に流れる属性の魔力を感じることが出来なければ、そもそも魔法を使えないしね。
これは生徒に把握させることが目的じゃなく、先生が間違いなく把握させるための行為なのだと思えた。
アイツは……とちらりと盗み見ると、半分の紙が燃えボロボロに焦げた紙と、綺麗に切り刻まれた紙が机の上に落ちていた。
私は思わず首を傾げる。
見るからに真っ赤な髪の毛をしているから、私と同じ水属性の可能性はないとわかっていた。
けど、同じ属性ならどっちが優れているのかわかりやすいのにと、少しだけ…ほんの少しだけ、違う属性だということに落胆する。
ちなみに二学年になって席替えが行われ、前の席だったレルリラは今は私の隣の席だ。
私の視線に気付いたコイツは、特に気に留めることもなく前を向く。
(腹立つコイツ!)
別になにか反応を期待していたわけじゃないけれど。
でも一年の時から一方的にだけど対抗意識を持っている身としては、こうも相手にされていない態度を取り続けられるとイラついてしまうのもしょうがない。
でも、どうしてレルリラの紙は半分だけが燃えたのだろうかと、私の疑問は解決しそうになかった。
「属性がわかったら、これからは属性ごとにわかれて授業をするんですか?」
「そうだな。先生は雷属性の魔法しか教えられないから、それぞれの属性の先生についてもらうっていう感じだな」
ということは、属性魔法はコイツとは別に学ぶのか。
ふーん。
差をつけるチャンス!と私はにやりと笑う。
「と、…来たみたいだな」
先生がなにかの気配を感じたのか扉に向かい開けると、そこには四人の大人がいた。
順に教室に入り、私達に向き合うように立つ四人に私は目を瞬かせた。
だって、そこには私の知っている人がいたからだ。
私は思わず声が漏れそうになり慌てて口を閉ざす。
「じゃぁ紹介するぞ。お前らから向かって右側から
火属性のナクヘキ・ビオウニー先生
風属性のリュー・サオメト先生
土属性のリク・シェイリン先生
水属性のアラ・ヴィレディスラ先生だ」
(やっぱり!!)
似ている人じゃない。本物だ。と私は思わず破顔した。
何故なら教壇の前に立つ先生方の一人、アラ・ヴィレディスラ先生はマーオ町にあるギルド職員の女性なのだ。
よく私に勉強を教えてくれたお姉さん的存在。
だから私はアラさんがいることが嬉しくて笑顔になる。
アラさんも私に気付いたのか、ニコリと微笑んでくれた。
(覚えてくれてた!)
私が冒険者になるって決めてから勉強の為にギルドにいくことがあったが、魔法を習い始めてからは次第に行く回数が減り、そして学園に入ると学園は全寮制でマーオ町に帰ることもなくなった。
だから、アラさんに会うのは本当に久しぶりだったのだ。
もしかして私の事忘れてしまっているかもしれないと思うくらい。
でもギルド職員って先生の仕事もしてるんだね。
……まさか、先生に転職、じゃないよね?
「では今日から各属性魔法を学ぶことにする。
一か月後、実戦形式での試合で習得状況をみるから、皆沢山教えてもらえよー」
一学年ではほぼ机上勉強だったこともあってか、体を動かす_魔法を使える_ことに皆が喜びの声を上げていた。
勿論私も嬉しい。
「先生、他の授業は行わないのですか?」
「ああ、授業自体はな。
四人の方を先生として紹介したが、中には騎士団やギルド関係者の方もいてな。皆に教えられる時間が限られているんだ。
だから属性魔法の時間は短期集中。この期間他の授業はしない方針だ」
『ギルド関係者?俺騎士団の人から教わりたい!』等といった先生に期待する声はもちろん、『おお!勉強しなくていいんだ!ラッキー!』等といった机上勉強が苦手な人たちからは、声が大きくはないが聞こえてくる。
「けど一年同様抜き打ちテストは行うから、予習しておけよ!」
そういってニヤつく先生の一言にみんなのテンションが一気に落ちる。
アンタら貴族だよね。
なにその平民みたいなノリ。
(けどギルド関係者ってことは、アラさんの転職の可能性も低いってことだよね)
とりあえず、よかった、と私は胸を撫でおろした。