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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~二学年~
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3 逆らってはいけない先生



魔法で割れた鉢を直した私は、急いで次に使う教室に向かう。

魔力がかなり減り、少し頭痛がしなくもないが、一年間早起きして体力づくりの為に走り込んできた成果か、なんとか授業開始前に辿り着くことが出来た。

席順は教室を移動しても変わることがない為、私は真っ直ぐ自分の席に向かう途中、鉢を割ってしまった女の子に呼び止められる。


「あの、ありがとう…」


頬を赤く染めて私にお礼を告げる女の子の姿に、やっぱりいい子なんだなと感じた。


「ううん、平気。大丈夫だよ」


ニコリと笑って女の子に答えると、その子はホッと息をついた。

もうすぐ授業が始まる為、私はそのまま女の子の横を通り過ぎて、自分の席に着く。


「…?」


ふと視線を感じたが、周りを確認しても誰とも目が合わなかった為、私は気にすることはやめて前を向くと同時に部屋の扉が開く。


「はじめまして、私はアルノ・リスカール。

今日からこの時間は皆さんにポーション作成の方法を教えていきます」


緑色の長い髪の毛を後ろに結び、清潔感のある白い白衣を羽織った男性は、優し気な面持ちで私達に頭を軽く下げる。

そして担任の先生と同じく指でちょいちょいとチョークを動かした。


「まずポーションには種類があります。一般的に疲労を回復するポーションに、魔力を回復させるマジックポーション。

毒や麻痺、闇状態等を回復させる毒消しがあります。

ちなみに毒消しにはさらに種類がありますが、今回説明は控えさせていただきます」


では、さっそく一般的なポーション作成に移りましょう、と生成作業に移った。


(ポーション作りは習ってなかったんだよね)


私はウキウキしながら背筋を伸ばす。


お父さんが「過去に作ってみたことはある」と話していたが、「飲めたもんじゃない」「買った方がマシ」という感想を持っていたみたいで、私に教えることは出来ないと頑固として拒否していたからだ。

その代わり、薬草について教えてくれた。


まず疲労を回復させるポーションに必要なポーション草。

ポーション草といっても、総称なだけで様々な名前の薬草がある。

だけど、基本的な見分け方はどれも一緒。

草の細い茎の部分が太く平べったいことが特徴だ。

さらに複数まとまって生えている為とても収穫しやすいが、薬草の種類によって魔力の通りが異なり効果も変わってくるから、ギルドに買取をお願いする場合は魔力が通りにくい薬草は捨てた方がいい値段にしかならないと教えられた。


次にマジックポーションに必要な魔癒草。

これもポーション草と同じように総称で種類があるが、見分け方は根が黒いこと。

そして紫色の花を咲かせる魔癒草が一番魔力の吸収がいいらしく、効果も値段も高いと言われている。


そして毒消しに使われる薬草はそれぞれである。

まず毒状態を回復させるポイズン草は一種類しかなく、茎に細かい棘がたくさんあり、黄色い花を咲かせる。

そして草と名前がついているが、実の部分が毒消しに必要なので間違えないように覚えることが大切だ。

一種類しかないといっても、雑草のように色んなところに生えている為、手に入れやすく流通が途切れることがない。


最後に麻痺状態を回復させるパラライズ草は、明るい黄緑色で茎や葉は細かくてふわふわしている。

また成人女性の腰ほどの背丈もあるから、これもわかりやすい。

ちなみにパラライズ草の根には薬草としての効果はないが、野菜で言うと玉ねぎのような味である。

そして普通においしいらしい。これはお母さんが言ってた。


まぁこんな感じでお父さんには色々と教えてもらったのだ。

ちなみにお父さんが詳しい理由は冒険者で旅をしていたことがあるから。

ポーションの作成または薬草採取は、常時クエストとしていつでも受注可能だからこそ、どのギルドでも買取を行っており、旅の最中収穫しても問題はない。


「生成に入る前に一つ。

薬草は採取した直後の新鮮な植物を使用することを心がけてください。

また、土砂、ゴミ等を排除し、綺麗に水払いした後残った水分を速やかに取り除くことが基本です。

もし新鮮な状態の薬草を使わずに保存しておきたい場合は、先程お伝えした基本動作を行った後素早く乾燥させてください」


「先生」


「はい、なんですか?」


手を上げる生徒にリスカール先生は微笑んだ。


「乾燥は風属性の魔法ですわよね?風魔法を使っても乾燥には時間がかかりません?」


「乾燥と聞いて思いつくのは風属性魔法ですが、私は水属性を使って乾燥させています」


「水属性ですか?」


緑色の髪をしているリスカール先生はどうみても風属性だ。

その先生がわざわざ魔法玉を使って水属性の魔法を…、と驚く。


ちなみに魔法玉というのは、前にも伝えたかもしれないが他の属性魔法が使えるようになる魔道具だ。

小さな水晶玉や魔石、鉱石等に属性魔力が込められていて、その魔道具を通して魔法を使うと、自分の属性ではなくても属性魔法を使えるようになるという優れもの。

だけどとても高くて、普通の平民で日常生活の為に使用している人はほぼない。

だから平民は用途が決まっていて安価で手に入る魔道具を購入する。

お母さんが料理に使っているフライパンとかだね。


「はい。乾燥といえば風属性のイメージが強いですが、ここでは”素早く”が重要なんです。

水を操る水属性の魔法を使って、薬草から一気に水分を抜いてしまうのですよ」


それが一番早い乾燥方法なのです。と微笑む先生に、私はなるほどと思った。

私は水属性だけど、水属性の魔法といえば水を生み出すイメージしかなかったから、逆に水分を抜くのは思いつかなかった為先生の斬新な発想に舌を巻く。


「今回は生の薬草を使用します。

まず、手元の薬草を適当な大きさにちぎってください。

そのあと置いている乳鉢と乳棒を使ってすり潰します」


そして言われるままポーション草を手で千切り、乳鉢と乳棒で円を描くようにすり潰した。

入りきらないと思っていたポーション草はすり潰すにつれ小さくなり、全てが乳鉢に収まる。


「すり潰した後は水を混ぜてください」


目の前には既に適量の水が用意されている為、乳鉢に水を入れると、すり潰した葉がぷかぷかと浮かぶ。


「その後は葉のカスを取り除く為、なるべく細かい目の布でこします」


透明のボールに布をかぶせて、乳鉢の中身を注いだあと、手でギューッと絞る。

綺麗な緑色の液体が指の隙間から流れ、もうこれ以上でないかなと思うところで私はやめた。


「本来であればここで魔力を注ぐ前に、味付けをするのですが……。

今日はそのまま最後の工程に入りたいと思います。

まず、ポーションに使われる薬草には面白い性質があり、注ぐ魔力量で色が変わるのです」


「薬草の種類は関係ないんですか?」


「いいえ。関係はありますよ。一般的に知られているのは必要な魔力量ですが、出来上がってしまえば問題にはなりません。

ですが、低品質な薬草では最高品質のポーションが作れないという点が一番の問題点ですね。

今回私が用意した薬草は最高とは言えないものの、品質のいい薬草です」


手を降ろして前を向くように指示する先生に、私達は従った。

先生が掲げるフラスコの瓶に薄緑色の液体がゆらゆらと動いている。


「よく見ていてください」



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