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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~一学年~
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10 詠唱魔法の授業







先生が教卓の前に出て、ふうと息を吐き出した瞬間、先生の周りに黄色い魔力が浮かび上がる。

先生を中心に、円を描くように黄色く色づいているそれは先生の魔力によるものだとすぐにわかった。


これほどまでに魔力が具現化できるものなのかと、驚き以外の言葉が当てはまらない。

「え…」「すごい!」と声を漏らす生徒がいる中、私も思わず身を乗り出す程に驚いた。

魔力を具現化できるようになったといっても、それは魔法陣を描くための限定した行為。

つまり指先に魔力を浮かべたり、または魔法陣を魔力で可視化しただけの少量にとどまるものだ。


先生のように自身が持っている魔力の殆どを可視化したことなんてしたこともなかったし、今の私にそれが出来るかといわれたらきっと出来ないだろう。


「今先生の周りに先生の魔力が見えているだろう。

この魔力の中では魔法陣はいくらでも描ける。理由は簡単だ。

魔力をすぐに届けることができるからだ。

だが、そうでない場所には一筋縄ではいかない」


魔法陣は自分の魔力を操作して描くことが前提であるから、自分の魔力が及んでいない場所には難しいということだ。

ではどうするのだろうかと、ごくりと唾を飲み込み先生の言葉を待つ。


すると先生の周りにあった魔力は形を変えて、真っ直ぐ伸びた。

教卓から教室の端まで伸びているのだ。


「魔力が届かなければ魔力の形を変えて届けさせればいい。

もしくは……」


先生が目を細めると、真っ直ぐ伸びていた魔力の形は再び変わり、今度は一部の魔力が先生から離れ、その場に留まる。


「このように、自分の魔力を他の場所に送る。これこそイメージが必要な理由だ。

自分の魔力をどうのようにすれば届けさせることが出来るか、また見えない場所にどのように正確に魔力を送ることが出来るのか」


「せ、先生!つまりそのイメージと魔力操作が出来れば無詠唱魔法が出来るってことですか?!」


「そうともいえるな。だが、無詠唱魔法においてはこれを瞬時に行うことが前提にある。

近場での発動なら出来る者が多いかもしれないが、離れた場所に魔法を発動させる時はかなり難しい。

無詠唱魔法が少ないのも、これらのことが瞬時に出来る奴があまりいないというのが理由だな」


そう告げると先生は両手を一度叩いて、音を響き渡らせた。


「離れた場所への発動方法、そして無詠唱魔法の話をしたが、お前たちには先に詠唱魔法を取得してもらうぞ!

じゃあ、練習開始…と、その前に場所を移動しようか!」










そういってやってきたのは練習場だった。


練習場は学園内に複数か所あり、練習場Aは平たんな土の地面、練習場BはAより広めで且つ一部に芝生がある。

練習場CはAよりも狭いスペースだが室内にあり、練習場Dは広めの草原。

そして練習場EとGは森みたいな場所だと記憶している。

そのうちの練習場Aに私達はやってきた。


「じゃあ早速…いっても最初からどんな詠唱がいいのか、決められないだろうから先生から皆にプレゼントだ!」


先生の魔法で生徒一人一人に一枚のプリントが渡される。

宙に浮かぶ紙に手を伸ばして中身を見ると、先生が考えたのか詠唱魔法の言葉が並べられていた。

私はレロサーナとエステルと一緒に紙の内容を読み上げる。


「え~と、……明瞭たる光よ、闇夜を照らせ……?」


「今暫く、彼の者の目を眩ませよ?」


「聖なる光の鎧よ、全ての障害を退け、一つの傷をつけることなかれ……」


「……闇夜に意識を委ね、な、汝に安らぎを………与えたまえ………」


短すぎず、長すぎでもない言葉が確かに書かれているが、これは……


(((は、恥ずかしい!!!)))


一枚とは言えまだまだ続く詠唱の一覧に、読み上げるだけでどことなく居心地が悪く感じられた私達は紙から目を逸らした。

そうすると視界に入るのは他の生徒達。

早々に紙から目を離し、各々の詠唱を口に出して練習し始めているのが視界に入る。

近くにいたマルコ達も同様にしていたし、ズボンのポケットからは白い紙が見えていた。


(そうだよね。魔法を使っている人たちに囲まれて育ってきたんだもの、こんな恥ずかしい詠唱を唱えたいって思う人なかなかいないわ)


私は心の中で激しく納得しながらこっそりと紙を折りたたむ。

「どうだ?先生頑張って考えたんだぞ?」と照れるようにいっている先生には悪いが、思わず乾いた笑いが出てしまうのは無理もないことよね。


「わ、私達もやりましょうか…」


「そうだね!そうしよう!」


レロサーナが引き攣った顔でそういい、私はその提案に全力で同意する。

エステルも勢いよく頷くが、私が気付いた時にはその手にはもう先生から渡された紙はない。

いつの間にしまったのかわからないが、いい判断だ。


「サラは詠唱魔法も出来るの?」


「少しならね。学園に入る前にお母さんに魔法を教えてもらってたの」


「そうなのね、私の家は魔法より剣だったから、あまり教えてもらってないのよ…エステルは?」


「私は剣ではないけど…魔法はあまり教わってなかったわ」


「へー」


”ならなんで魔法科に?”という言葉は飲み込んだ。

人にはそれぞれ事情があるし、貴族ともなったら平民より複雑な事情もあるのだろう。

それに入学当初は魔法科と騎士科と別れているが、三年になると学科は更に増える。

経営科とサポート科だ。

きっと三年から選べる科に志望動機があったのだろうと考えて、私は二人に向き直った。


「じゃあ、私からやってみせるね。……<オブスカーライト_闇>」


私の手のひらの前に魔法陣が構築され、そして魔法陣サイズの闇の玉が現れる。

明るい場所だから、黒い玉がよく見えた。


「わぁ!凄いわ!」


「本当!さっきオブスカーライトって言ったわよね?それがサラの詠唱?」


「うん。あまり捻りすぎてもよくないし、わかりやすいかなと思って…」


先生の言う通り詠唱魔法を使う際、ソロなら言葉も気にしなくてもいいがチームプレイとなればそうもいかない。

一緒に行動するうえで味方が使う魔法を理解していなければ、逆に怪我をさせてしまうかもしれないからだ。

だから敢えて捻ることもせずに、私は単語を詠唱として使っている。

闇色の玉は、オブスカーライトのため、そのまま詠唱として使うことにしたのだ。


「私もやってみるわね。魔法陣は光の反対だから使う記号はこれね……<オブスカーライト_闇>………あら?」


魔法が発動しなかったことに対してレロサーナが首を傾げ、私をみる。


「ん~、…魔法陣はあってるみたいだから…たぶん魔力が足りなかったんだと思う」


「魔力?」


首を傾げるレロサーナに私は頷いた。

<ルミェ_光>の魔法とは違い、闇色の玉の魔法は普段の日常生活では使うことがあまりない。

授業でも魔法陣の知識として習っただけだから、レロサーナだって実際に発動したことはないはずだ。


「うん。今は日中で光の力の方が強いから、闇の魔法を使う時にはもう少し魔力を込めた方がいいと思うの」


「わかったわ。もう一度魔力量を増やしてやってみるわね」


そして再度<オブスカーライト_闇>と唱えたレロサーナの手のひらに、闇の玉が浮かんだ。

だが、ぶよぶよと安定しない玉の形にレロサーナが苦笑いを浮かべる。


「先生が魔法陣が基礎だっていう理由がわかったわ。

初めて使う魔法だと安定して発動できていないんだもの」


レロサーナの言葉に私は申し訳なさを感じた。

簡単な魔法陣だとはいっても初めてで、しかも詠唱魔法から扱う魔法は発動が不安定になり、最初の詠唱魔法として適さないとわかったからだ。

今度は、授業でもたくさん書いた魔法陣をやってみようと、思いながら次はエステルが挑戦する。


レロサーナの時をみているからか、多少のもたつきはあったがそれでも詠唱魔法を発動することが出来た。




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