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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編②
218/253

17 魔国の森という場所






転移魔法陣はカルデラ町と同じように門の近くにあったため、私達はすぐに町を出て森へと向かった。

魔国と呼ばれる森は町から離れているために、それぞれ契約している霊獣を呼び出す。

私もフロンを呼び出すと背中に乗った。


特務隊の二人が先頭に立ちレルリラのお兄さん、第一王子、聖女様、レルリラそして私と並んで移動する。

ちなみに聖女様は魔力がないため霊獣との契約はできないことから第一王子と一緒に移動した。


そして小一時間程移動して着いた魔国と呼ばれる森の手前にやってきた私達は、移動してきた順番を大きく変えることなく森へと足を踏み入れる。

変化があるとすれば聖女様の左右をお兄さんと第一王子が守っていることぐらいだろう。


魔国は普通の森と然程変わらない。

違うところがあるとすれば人の手が行き届かない場所のために整備がされておらず、草木が伸び放題となっていて、歩きずらいというところだろう。

だけど長い間人の手が行き届かなくなった森は立木が混み合い、陽の光が差し込まなくなることから、木の成長や根の発達が阻害されると教えてもらったことがある。

それにも関わらず魔国の森は本当に人が手を加えていないのかと不思議に思うほど、太く成長した木々がそびえ立っていた。

それでもここが魔国だということを表しているように、木々にはおびただしいほどの爪痕や、不自然に凹んだ地面など魔物同士が衝突したかと推測できる後が至る場所に残っている。


私は首を傾げながら辺りを見渡していると、前を歩くレルリラが速度を落として私に話しかける。


「これはあまり気持ちがいい話ではないが…」


「うん?」


「この世の全ての生物には魔力がある。整備されない森は本来なら痩せた森になるのだが、成長するのに必要な魔力が十分だとこの森のように図太く育つんだ」


「そうなんだ?」


でもそれのどこが気持ちがいい話ではないのだろうと疑問に思っていると、レルリラは顔だけを私に向けて口を開いた。


「魔物の亡骸から魔力を吸い取っているということだ」


ほら、と指をさすレルリラの先を見ると地面から出るように木の根が見える。


「地面の中に根があると魔力が含まれた血だけが地面に染み渡るが、地面から根を出すことによって亡骸全てを取り込むことができるんだ」


「げ…」


「勿論すぐには無理だ。土の中にいる微生物たちの働き具合にもよるからな。長い年月を費やして血肉を分解し…」


「もういいって!」


私はレルリラの口を塞ごうとして手を伸ばす。

いくら動物や魔物を捌くことには抵抗なく出来るようになったとはいえ、自然の植物たちが死んだ魔物の体から養分となる魔力を取り込むところなんて想像したくない。


だけど伸ばした手はそのまま宙を彷徨った。

私は地面から出ている木の根に足を引っ掛けてしまったのだ。

転びそうになった私の体をフロンが受け止め、宙を彷徨っていた手をレルリラが掴む。


「大丈夫か?」


「う、うん、ありがとう…」


繋がれた手を内心ドキドキしながらもガン見しながらお礼を言うと、フロンがぐるるると唸る。

私は何故フロンが威嚇するのか不思議に思ったが、レルリラははぁと息を吐き出すと手を離した。


「助けようとしただけじゃないか」


『僕が助けただろ』


話ができないはずなのにフロンの言葉がわかっているのかレルリラは何も言わずに前を向く。

フロンは「けっ」と吐き捨てるように口にした。


『サラ!助けようとしたと言って、体に触れようとするオスは信用ならないからね!覚えておいて!』


「え、触れなきゃ助けられないんじゃ…」


『魔法があるでしょ!』


そういってズンズン前を行くフロンを私は追いかける。

さっきまで横に並ぶように歩いていたのに、フロンは何故か少しだけ私の前に出るように歩き始めた。

厳しい目つきで前を向くフロンに釣られるように私も前を見ると、先頭を歩く騎士の人が呆れた眼差しを向けているところだった。


(……あれ絶対悪態ついてるよ…)


まぁ、足元ちゃんと見てなかった私が悪いんだけどね。

今度はヘマしないように気をつけなきゃと気合を入れて、私は探知魔法を展開する。

前にはレルリラを初めとする実力者がいるから、私は後方に気をつけたほうがいいと後方側に広げる形で魔力を広げた。


日々のトレーニングの成果が少なからず発揮されているようで、草に隠れて見づらい地面の凹みも容易にわかるようになる。

なんだ、最初からこうすればよかったかも。

そしたら足元を引っ掛けるようなドジしなかったのに。

そう思いながら私はふと違和感に気づいた。


「……あれ…?」


___魔物がいない?


思わず口から出てしまっていたのか、私の声を聞き取ったフロンが『違うと思うよ』と否定する。


『もっと上にも広げてみて』


「上?」


『そう、今よりももっともっと高い場所』


私はフロンという通り魔力を頭上へと向ける。

今は二階建ての普通の家の屋根くらいまで魔力を広げているけど、それよりももっともっと高い場所まで広げるとおびただしいほどの数の反応を探知した。

十体や二十体なんて数じゃない。ここにいる私たちだけで聖女様を守りきれるか、わからないくらいの多くの魔物がいることに私は息を呑む。


『…やっぱりね』


「フロンはどうしてわかったの?」


冷や汗を流しながら私は少し前を歩くフロンに尋ねた。

フロンは特に魔法を使った様子がなかった筈。

それなのに何故、普通ならわからないずっと上に魔物が潜んでいるとどうしてわかったのだろうと疑問に思ったのだ。


『んー、…臭い、だね』


「臭い?」


『そう。僕は霊獣といっても動物タイプに分類されるから人よりもずっとずっと鼻がいいんだ。ここは臭いくらいに沢山の匂いが混じっている。にも関わらず目に見える範囲ではなにもみえない。おかしいよね?

なら臭いの元はこの周辺にいると考えたら、木の葉に隠れられる上しかありえない』






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