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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編②
213/253

12 尋問されているみたいです




瘴気の魔物を浄化した私は、盛り上がりを見せた会場内をのらりくらりと誘導するアルヴァルト殿下に連れられて逃げ出した。

あのまま会場に留まっていたらきっと人が殺到していただろう。

そうなると聖女の代わりだということがばれてしまうのも時間の問題だ。

本当に助かったと、胸を撫でおろし安堵していたのだが、案内された別室で待っていたのはなにやら怖い顔をしたレルリラの兄であるラルク様と、どこか雰囲気がレルリラやラルク様に似ているおじさま。

そして眉を下げて、居心地悪そうにする聖女様だった。


「サラ・ハール、まずは依頼をやり遂げてくれたこと感謝しよう」


アルヴァルト殿下は背を向けたまま礼を伝えた。

私は声に乗る固い雰囲気を察して、「とんでもございません」と口にしながらも髪色を戻す。

いくら服装でわかるといっても、聖女様の前で聖女様の格好をし続ける度胸は私にはない。


「ずばり聞くが、君は聖女なのか?」


「え?」


唐突な質問に私は固まった。

聖女として召喚されたのはそこにいるヤマダ マコ様であるのに、なんでそんなことを言うのだろうと王子の思考回路がわからなかった。


「違います」


「嘘は_」


「違います!」


声を荒げるつもりはなかったのに、嘘だと決めつけられていることを察した私はアルヴァルト殿下の言葉を遮る形で否定してしまう。

ヤバいと口に手をあて、「申し訳ございません」と頭を下げると「それは聖女ではないと嘘をついたということに対する謝罪か?」と話された。


「私が謝罪したのは王子様の言葉を遮ってしまったことについてです。平民である私が王族の発言を遮ることをしてしまい、謝罪を口にしました」


「では、本当に聖女ではないと?」


「仰る通りです」


私が肯定するとアルヴァルト殿下だけではなく、部屋の中に沈黙が生まれた。

会場程ではないが、ある意味会場の時以上に突き刺さる視線が痛いと感じる。

これは、この場にいる全員が私が聖女ではないかと疑っているのではないかと、さすがに思った。


「…では、君はどのようにして瘴気の魔物を浄化して見せたのだ」


「聖水を作りました」


「聖水?」


「はい。レルリラ……ヴェルナス様より聖水の作り方を以前教えていただき、実際に試し成功しています」


というか、会場にいた時「ほらやっちゃえ」みたいな顔して私に浄化しろって命令したじゃない。

なんで今更そんなことをいうのか意味がわからない。

てか、レルリラだって私が聖水を作れること知っているんだから、レルリラの兄であり上司でもあるラルク様とラルク様の上司であるアルヴァルト殿下は当然のように知ってることでしょうが!

なんでこんなに問い詰められなければいけないのだろうかと、私が首を傾げるとアルヴァルト殿下が「ふむ」と口にしながらも尋ねる。


「聖水は簡単に作れるのか…?」


「はい。教えていただいたやり方さえ間違わなければ簡単に作れます」


「あの輝きは……初めて聖水を作った時からか?」


「はい。ヴェルナス様も聖水特有の輝きだと言っていました」


「……そうか。確かに君は王立学園の卒業生でもある。聖水の完成度が高くても当然、か」


アルヴァルト殿下はそういうと「すまなかった」と謝罪の言葉を口にした。

そして「場所を変えよう」と来たばかりなのに部屋を出る。


私は慌てた。

聖女様が一緒にいて、そして聖女ではない私がドレスを身に着けているところを他の人に見られてしまったらまずいのではないかと思ったのだ。

だけどそれは杞憂で、移動先は隣の部屋だった。

扉同士の位置も近く、誰かに見られる可能性も低い。

部屋へと入ると初対面の騎士の方数名と、パーティーに参加していた筈のレルリラがいた。


こいつ王女様のエスコートはどうしたと思う反面、王女の側ではなくこの場にいることが嬉しく感じる辺り私は悪い人間なのだと思う。


「待たせたな」


屋敷にある食堂に設置されているような大きなテーブルを囲むように椅子が置かれ、部屋の奥、つまりは入り口から遠い場所にアルヴァルト殿下が腰を下ろした。

そして続くようにおじさんが座り、その隣にレルリラのお兄さんと聖女様、そして向かい合う形で騎士団服を着た四人が腰を下ろす。

レルリラは私の手を引くと聖女様の隣に座らせ、その隣に座った。

そんなレルリラの行動に私の心臓が高鳴る。


あぁもう。

自分の気持ちに気付いたというのもあるけど、こういうところが可愛いんだ、レルリラは。


友達として好かれていることは凄くわかる。

初めて出来た友達の傍にいたいという気持ちでこういう行動をとっているのだろうけど、でも今の私にその行動はあまりして欲しくない。

でもそれを言えば理由を問われるから、敢えてやめてとか、考えてとか否定する言葉は言えないのだ。


(私が座って欲しいとか、思ってるわけじゃないんだから……)


パーティーが始まって全然時間が経っていないだろう、と思うだろう。

だが、私が瘴気を浄化するとぶるぶると震えた第二王子がこう言ったのだ。


『なんと!これほどまでに成長されていたとは心強い!陛下!これならば直ぐにでも特務隊と共に瘴気の魔物討伐へ行かれてもよろしいのでは!?

いや、これほどまでの力ならば瘴気の魔物の原因を突き止めるためにも魔国へ向かっても問題ないのではないでしょうか?!』


そのように話した第二王子に賛同するかのように、他の貴族からも声があがる。

中には魔国は流石に…といった聖女の身を案ずる声もあったが、殆どが第二王子に賛同していた。

そしてそんな声が多くなり、王様は渋々受け入れるしかなかった。

そもそも聖女様が召喚されて、かなりの年数がたっている。

本来ならばもっと早くに行動し、皆を安心させているだろう筈なのに、今まで聖女としての役割を放棄していると思われてしまい始めていたのだ。


(まぁそもそも勝手に召喚しておいて、役割とか意味がわからないんだけどね)


でもそんなことを考えている人間は少ないだろう。

私だって、夢で聖女様のことを知ることがなければ、早く瘴気の魔物を倒してほしいと他人事のように考えていたのだから。


そんな状況の中で暢気にパーティー会場に留まることも出来ず、魔国への調査派遣の話し合いが必要だとしてパーティーを抜け出したのだ。

浄化のことを尋ねようとした貴族たちの声を「これから魔国へ向かう準備をしなければなりませんので」とあしらう王子には誰も深く突っ込めない。

だからこそそそくさとパーティーから抜け出せた。





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