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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
学園編~一学年~
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7 足りないところ







青空が広がり、私達を容赦なく照らす太陽の元で、私達は汗を流しながら運動場を走らされていた。

勿論これも授業の一環だ。

魔法使いは魔法だけを使えればいいのではない。

体力の有無だって大きく関係する。


例えばだ。

肉体強化の魔法を全身にかけて走ったとする。

そうすると確かに筋肉量が上がり、駆けるスピードだって目を見張るものがあるが、体力自体はそのままだ。

つまり持久力がなければ魔法で肉体強化の魔法を使ったとしてもすぐにバテる。

様々な魔法を効率よく、そして効果的に発揮する為には体力作りも必要不可欠なのだ。


そういうわけで私達生徒は走らされているのである。


「ハッ、ハァ、ハァ、ッ…」


脇腹が痛い。

足がだるい。

もう休んでしまいたい。


そう思っていても私が足を止めないのは、私の前にヴェルナス・レルリラがいるからだった。

一方的にライバル意識を燃やしているだけなのだが、それでも私よりも余裕な表情で前を走るその姿を見て、足を止めるわけにはいかなかった。


「お、お前、辛いなら、休めよ、」


「い、嫌ッ、よ!」


レルリラほどの余裕はなさそうだが、少し前を走るキアが私に休憩を提案する。

何故なら先生の告げた目標は既に達成しているからだ。

といっても、女子と男子で設定されているランニングの目標達成は大きく違う。


女子は距離が決められているが、男子は設定された時間内をひたすら走らされる。

しかも女子より遅く走った者には、罰として更なる延長時間が設けられているのだ。


周りを見てみると、既に目標数を走り終えた女子たちが休んでいる。

どこから取り出したのかわからないような椅子にパラソルのようなものが広げられているが、とにかく優雅に休んでいた。

ちなみにランニングはドレス姿ではなく、きちんとしたスポーツウェアだ。

発汗効果を高めてくれるだけではなく、吸汗速乾性に優れ、そして有名なデザイナーが考案したとかなんとかで、つい最近爆発的に人気が出た商品とか何とかいわれているらしい。

お母さんに入寮する前に準備する物として、色々教えてもらったから女子達が来ているスポーツウェアについても覚えていた。

勿論私は長く着れればいいし、安ければそれに越したことはないと思って、少し大きめの学園支給である普通の運動服をお願いしたが。


<ピー!>


高く鳴り響く笛の音に、走り続けていた私と男子生徒は足を止める。

もうダメと地面に膝をつくと、今まで感じていた風がなくなったためか急に暑く感じた。

そして汗がだらだらと流れ、地面を濡らす。

今までひたすら勉強や魔法の特訓をしてきたけれど、体力づくりの為のトレーニングはしてこなかったために、自分の不足部分が見えてきた。


「じゃあ適当にストレッチして、教室戻れー」


支給された運動服の袖で汗を拭いつつ、軽く筋と関節を伸ばしてからマルコ達と共に教室に向かう。

「わッ!」とか「キャァ!」とか声があがっているが、数か月もここに通っていたら慣れてしまうから、いまだ上がる声に私は少しだけ呆れてしまった。


そりゃあ私だって最初はびっくりしたよ。

だって生徒が歩く場所に、魔物が大きな檻の中に閉じ込められて展示されているのだから。

しかも死んでいるのではなくて、ちゃんと生きている魔物。

更にいうと、生徒を驚かせるために動物系で大きめの魔物ばかりが選ばれている。

だから生徒が通るたびに、檻の格子を叩きつけ大きな音を出すわけだけど、これも数か月もすれば慣れた。


勿論これは実戦で初めて見る魔物にビビらない為という理由があって行われているらしい。

また動物系の魔物は基本人間のように魔法を使わない為、檻の中から被害をもたらすことはないということだ。


「ふぅ…、疲れたー…」


「あちー、水のみてー」


「ほんとだよなー、てかなんでお前男子と一緒に最後まで走ってんだよ」


パタパタと襟首部分を動かし、少しでも熱く火照った体を覚ましながら移動しているキアが人差し指を私に向けながら問う。

私はそれに対して笑って答えた。


「なに?私に負けるから途中でやめてほしかったの?」


「んなわけねーだろ!つーか俺は最後までお前の前走ってたわ!」


「そういえばそうだったね」


キアの言う通り、最後まで走り続けていた私はクラスの中で、勿論男子生徒が相手だが一番後ろだった。

確かに他の男子生徒に比べて私の体力は圧倒的に低いことがわかったが、自分の足りない部分を知るいい機会でもある。

これからは自主的に体力上げるために走り込みもするかと、内心思いながらキアにサー、そしてマルコと四人で談笑しながら教室に戻っていた私達に、先生は声を魔法で拡声させて、今思い出したといわんばかりに告げた。


『戻ったら魔法陣のテストするからなー!』


その先生の言葉に、のんびりとした足取りは速度を上げ、皆一様に教室を目指す。


魔法陣は無数にあり、どんな魔法の魔法陣が出題されるのか全く分からないのだ。

だから復習がてら、教材を見返すために少しでも早く教室に戻る。





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