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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編②
203/253

2 初めての指名依頼






町に戻った私たちは貴族に状況を伝えた後王都まで戻る。

結構濃い時間を過ごしたからか、王都に戻ってきたときには既に空は赤く染まり始めていた。


『サラの瞼の腫れを落ち着かせるために、時間がかかったもんね!』


「あ、そういうことは言っちゃだめよ」


フロンの言葉は私以外には伝わらないから誰に聞かれるわけでもないけど、念には念を入れて気を付けたい。

そうしてレルリラと共に王都に戻ってきたわけなのだが、わざわざ家まで送ってくれたレルリラにお礼をいって私達は別れた。

特務隊として報告でもするのだろう。

騎士団があると言われている王城がある方角へと向かったレルリラの後姿を私は見送った。


『サラ?どうしたの?家に入らないの?』


大きな門の目の前に立ったまま動かないでいる私をフロンは見上げる。

レルリラの後姿をじっとみつめ、最後まで見送るといった乙女心なんて私にはない。

私は口角を上げ、フロンの言葉に「その通り」と頷いた。


『どこに行くの?』


「ギルドよギルド!」


『ギルド?でもクエストはサラ一人じゃ受けられないんでしょ?』


私の横をトコトコと歩くフロンは不思議そうにしながら尋ねる。


「それは討伐とか町の外でのクエストの話だよ。町の中で出来るクエストはソロでも受けられる!…筈」


語尾に”筈”と付けたが、間違いないと私は思っている。

以前ギルドに行った時、ちらりとクエスト内容を確認したことがあったのだけど、町の中でも出来るクエストはソロでもいいと書いてあったからだ。

まぁ、そんなことをいっても本題は今回の活動内容を伝えに行くためだけど。

地方の町だけではなく王都にだって私よりも小さい子供たちが冒険者登録をして、お金を稼いでいたりしているのを知っている。

簡単に出来る仕事を奪うわけにはいかないってもんでしょう。


(まぁ、誰もやりたがらない仕事なら受けてもいいけどね)


そんな感じで私はギルドに辿り着いた。

屋敷からギルドまでの距離は考えられているのかあまりない。

数十分歩けばつくという距離だから二キロぐらい離れている感じかな。

意外と立地がいい場所の為、急いでいない限り私は歩くようにしている。


ギルドに着いた私はまず報告の為に受付へと並んだ。

これから混むのか、それともピークは過ぎたのかわからないけど、数人しか並んでおらずすぐに私の番になる。

私は昇級試験でもお世話になったラスティアさんに今日の報告をした。

ちなみに私が聖水を作れるということを一部ではあるが、王都のギルドにも伝わっている。

ラスティアさんにも伝わっているのかはわからないけど、私が騎士団の人と行動していることに疑問を向けられたことがないから、知っているかもしくは深く気にしない性分なんだろうと思っている。


「ご報告ありがとうございます。ですが騎士団からはまだ連絡がありませんので、報酬は後程振り込ませていただきますがよろしいでしょうか?」


「はい、確認がとれてからで問題ありません」


報告も終えたことだし戻ろうかとフロンと話すと、ラスティアさんに呼び止められる。

私は何だろうと振り返った。


「あ、あの…同姓同名の可能性もありますが、ハールさんに指名依頼が入っております。一度依頼内容を確認していただきますようお願いします」


ラスティアさんはそういって、まばらに貼られている掲示板から一枚のクエストを私にみせる。

まばらというのは今が夕方だから。

明日の朝になれば沢山のクエストが貼りだされている筈だ。


「はぁ……」


私はラスティアさんから手渡されたクエスト内容に目を通した。


依頼日は今から約半年も前の日付が書かれていることから、ラスティアさんがどうして同姓同名の可能性があると言ったのかを察した。

ランクが高くないと指名依頼は出来ない。だからこそ私は推薦という手段を使ってランクをあげたのだ。

指名依頼があった時の私のランクはまだ指名依頼を受けられるほどのランクではない。

でも冒険者としてギルドに登録しているわけだから名前くらいは確認が取れるはずなのに、そうしなかったのだろうかと疑問に思いながら私は読み進めた。


そして名前の他に外見的な特徴と年齢、そしてオーレ学園の卒業生ということまでも表記され、明らかに私の事だとわかる内容に私は眉間に皺を寄せた。


(個人情報駄々洩れじゃない…)


しかも依頼内容は顔を会わせてから説明するという事、更には依頼者についても伏せられていた。


怪しさ満点のクエスト内容に体を小さくさせたフロンが肩に上り、内容を読む。


『うっわ、怪しいクエスト!サラ、受けないほうがいいよ!』


「そうはいってもなぁ……。依頼主も伏せられているから事情はあるんだと思っても、ここまで私の事を特定されてるんじゃ逆に受けたほうがいいんじゃないかって思えるよね」


『…それは、確かに……』


私の考えていることをフロンにも伝わったのか、フロンは同意した。

ここまで私の事を調べているのなら、依頼を断ったらなにかあるのではないかと考えてしまう。

マーオ町出身ということは流石に書かれていないけど、オーレ学園を卒業したということも調べてわかっているのなら、マーオ町出身という事なんて簡単にわかるだろう。


私は不安そうに見上げるラスティアさんに、「受けます。依頼」と伝えてクエストの紙を返した。


「ありがとうございます!期日が近付いていた為、遣いの方なのか目深にフードを被った方が頻繁に確認しに来ていたんです。引き受けていただけて助かりました」


え、なにその情報。

口元が引き攣った感覚がしたが、余程嬉しかったのか普段あまりみないラスティアさんの表情を見たら何も言えなくなった。


「早速行かれますか?行かれるなら馬車を手配_」


「もうすぐ夜ですし明日行こうと思います」


私はラスティアさんの言葉を遮るように返し、差し出された住所が書かれた紙を受け取ってギルドを出たのだった。





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