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「____以上が私がわかったことよ」
私はレルリラに全てを話した。
夢の内容や瘴気の魔物に感じたこと。
そして先程私に起きたこと全てを話した。
すると意外……でもないけど、レルリラはあっさりと信じてくれた。
「ああ、そうか」的な感じに。
「……疑わないの?」
話しているうちに涙は収まり、滑らかに話せるようになった私は受け入れてくれたレルリラを不安げに見上げる。
現実的に考えて、私の話は信じられない部分が多いだろうと自分でも思うからだ。
『僕はサラの話を信じるよ!アレは変だった!魔物とは違うように思えたからサラになんらかの影響を与えたのは確かだ』
私とレルリラの間にフロンが入り、そういった。
そういえばフロンはあの子供のような姿をした魔物を魔物と言わなかった。それは一体どういうことなんだろうと問うとフロンも分からないようで首を傾げる。
「サラのことは信じているからな」
そんなことをあっさりいうレルリラに、(タラシってこういう人のことを言うんだな)と思った。
エステルに勧められて読んでいる恋愛小説だけど、無自覚に人を惚れさせる言動をする人をタラシって呼んでいたことを思い出した私はレルリラに当てはめる。
というか、あっさりと信じたレルリラに私は不安になった。
将来騙されて変な魔道具とか買わないよね?大丈夫だよね?
「……なんか変な事考えてるだろう?」
「別に考えてないよ」
本当、全然。変な事なんてこれっぽっちも考えてない。ただ心配しているだけだ。
私の表情をみて、フロンがレルリラにニヤニヤした顔を見せているからか、チクチク刺さる視線に私は言うもんかと口を閉ざす。
ジト目で見てくるレルリラに私は誤魔化すように話題を変えた。
「…というわけで!私、魔国に行きたい!」
「何故?」
「瘴気の魔物がただの魔物だってことを知ったから」
夢を通して、瘴気の魔物の正体は原因不明でも何でもなく、魔物の仕業だということがわかったのだ。
といってもやっぱり夢だからまだ私の仮説なだけで、本当にそうかと偉い人に言われれば言葉に詰まらせてしまう。
言わば証拠がないのである。
それでも夢を通じて、殺したいと思う程に男たちを憎んでいた聖女に触手を伸ばした魔物の姿を私は見た。
そして魔物はなんらかの形で聖女の力を奪ったのだと考えれば辻褄があう。
じゃないと魔物の中に捕らわれている聖女が私に訴えてきた理由が説明つかないのだ。
私はやるぞ!と気合を入れて拳を体の前で作っていると、レルリラは首を振る。
「だめだ。認めない」
「なんで!?」
「それが魔物の仕業だとわかったところでなんになるんだ。結局力をつけた魔物は瘴気を帯びて人間を襲っているだろう。魔国に行っている間の瘴気の魔物の対応は?魔国に行ったあとの行動は?」
レルリラに問われて私はうっと言葉を詰まらせた。
確かに魔物は瘴気の魔物となって脅威を振るっている。瘴気の魔物になる前の魔物を捕らえても意味がないかもしれない。
「で、でも_」
「それにその魔物の姿をお前は見たのか?黒い触手が見たってだけで本体を見てないんだろう。そんなはっきりしていない状態で行かせられるわけがないだろう。それにそれは最終段階だろう。脅威を取り除いた後の恒久対策だ。今じゃない」
「う……」
正論で返された私は口を閉ざす。
レルリラの言っていることは正しい、と思う。
脅威をほったらかしにして元凶を捕まえに行くだなんて順番が違う。
しかもその元凶である魔物の正体がわからないし、何匹潜んでいるのかすらわからないのだ。
それならば瘴気を纏わりつかせた魔物の対策の方が先だという考えを主張するレルリラの方が正しい。
でも
(そんなにはっきり否定しなくてもいいじゃんか)
と私はむくれた。
まるで子供のように口の中に空気を含み、頬を膨らませる。
するとレルリラは頬を摘まんで無理やり空気を抜かした。
「いひゃひゃひゃひゃ(いだだだだ)!」
「わかったか?」
「ふぁ、ふぁひゃっはっへ(わ、わかったって)!」
私が理解を示すとレルリラは頬から手を放す。
ジンジンと痛む頬を私は擦り、じろりとレルリラを睨んだ。
「サラがわからないのが悪い」
まるで自分は悪くないかのような態度だが、女の子の頬を抓る行為は結構悪い部類に入ると思うぞ。
レルリラは平然とした態度で私のジト目を流し、魔力を広げる。
周りに他に魔物がいないか確認しているのだろう。
そしてもう町の周りに危険がないことを確認したのかレルリラは戻ろうと口にした。
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