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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
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43 再び王都へ






以前にも思ったけれど、フロンに乗れば景色もあっという間に高速に過ぎ去っていく。

それでも今回ばかりはぶっ倒れるわけにはいかないから、魔力に余裕がある段階でもこまめにポーションを飲みながら、私は王都へと向かっていた。


お母さんが作ってくれたサンドイッチを食べながら夜空を駆け抜ける。

流石に夜は冷え込むため、私は暖かいコートをちゃんと着込みながら二つ並ぶ満月の下を掛けていた。


『サラ、大丈夫?』


「大丈夫だよ。ポーションも飲んでいるからまだまだ平気!」


『そうじゃなくて、ううん。それもあるけど王都に着いたら試験があるんでしょ?ちゃんと寝た方がいいよ?』


フロンにも事情を説明しているため、私の体調を気遣ってくれるフロンに「ありがとう」と口にしながら私は目を細める。


「…実はね、ポーションを頻繁に飲んでいるからか眠気がこないんだよね……」


ポーションには味付けの為に果物や砂糖等の普通の食材しか入れていない筈なのに、どういうわけかいつもはくる眠気がやってこなかった。

組み合わせの問題?それとも摂取量とかある?


それでも寝ている間は魔力を回復させるポーションの摂取は出来ないから、私は眠れないことをプラスに考えてフロンにスピードを上げるように告げる。




そうして辿り着いた王都には三日で着いて、私はふらふらした足取りでギルド迄歩いていた。

途中途中地上へと降りて休憩時間を挟んではいたが、結局こまめにポーションを飲んでいたからか、眠いのに頭が拡声して眠れないという状態が続いた。つまり頭も体もふらふら状態。

ちなみに宿には泊まってない。

体もシャワーではなく洗浄魔法で済ませた。


王都に、そしてギルドに辿り着くことが大前提だと考えた私は、以前のように手前の町で一泊することはせずにやってきた。

だって手紙には一週間以内に来なかったら推薦試験の件はなかったことにすると書かれてあったのだもん。

無理してでもこないといけないって思うでしょう。


『サラ…』と不安げな眼差しで私を見つめ、体を大きくさせたフロンが私のふらふらした体を支えている。


「やっと着いたね…」


そしてマーオ町にあるギルドよりも大きい建物を私は半開きの目で見上げた。

ちょっと前にも来たことがあったけれど、あの時はどんなクエストがあるのかだけを見ただけで、ちゃんと見渡してはいなかった。


マーオ町では依頼主やクエストを受注する窓口、お金を引き出したり預けたりする窓口は並んで配置されていたが、ここ王都のギルドではそうではない。

ちゃんと目的ごとに独立して設置されていた。

しかも入口付近には地下へと降りる階段と二階に上る階段があり、ギルド内が人で溢れても利用しやすいように配慮されているようだ。

ちなみに二階部分には飲食スペースがあり、地下は訓練室があるらしい。


私はとりあえず、クエストを受注する窓口へと向かい、ランク昇格試験の話をする。


「はい、お話しは伺っております。サラ・ハール様ですね」


「あ、は、はい!」


既に窓口にも話は通っていて、用件を口にするとすぐに名前を確認される。

慣れない様付けに背中がむず痒く感じたが我慢した。


「お越しいただきありがとうございます。ですがサラ・ハール様を監督する冒険者の方がまだ見えておりませんので、試験開始まで数日を要してしまうことがありますが、支障ないでしょうか?」


私は窓口の人の言葉に何度も頷いた。

試験まで数日かかるかもしれないなんてなんという素晴らしい事。

無理して王都に、そしてギルドまで来たので、ゆっくり休みたかったのが本音だからだ。

寧ろこのコンディションでやれる気がしない。

……まぁ、魔力的な意味としては問題ないけど。


「ありがとうございます。試験前の注意事項として、私から数点説明させていただいてもよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


窓口の人は私が頷くと優し気にほほ笑んだ後話始める。


「まず、サラ・ハール様を監督する冒険者はAランクパーティーの方々となります。お題は監督側に全て任せておりますので、冒険者の方々がいらっしゃいましたら伺ってください。勿論期日とさせていただきました日までにはここギルド本部に戻る筈ですので、ご安心ください。

またサラ・ハール様の実力を測る為、契約している霊獣については当ギルドに預けていただくようお願いします」


「え、霊獣を預けるんですか?」


「はい。基本は契約者の意思で霊獣を呼び出しておりますが、稀に契約者の指示なく霊獣が現れる場合もあります。

ランク昇格試験はあくまでも冒険者自身の実力を測る為のもの……信じていないわけではありませんが、互いに信頼を築くためにご協力をお願いします」


「……わかりました。ただ預けるのはギリギリでも構いませんか?」


「はい。試験前に預けていただけるのでしたら問題ありません」


私はほっと安堵して隣に並ぶフロンを撫でる。

フロンを預けなければいけないという不安はあるが、今すぐ預けなくても問題ないといわれたからだ。


私は他に注意することがあるのかを確認してから、この近くに安い宿はあるかを尋ね、紹介してもらった宿へと向かうことにした。


紹介された宿は王都の中でも住宅街に位置していて、煌びやかな街中のお店に比べたらとても馴染み深い_主に金銭面で_宿だった。

空は暗く、街並みも街灯に照らされている以外はほとんど明りがない。

そんな中を私はフロンと共に歩いていた。

ふらふら状態の私をみたらたぶん酔っ払いなのではないかと勘違いするかもしれない。


(あ……)


と私はふと思い出す。

ギルドからの手紙がきて、ずっとバタバタとしていたけど、レルリラに伝えていなかったことを思い出したのだ。

ランク昇格試験を近々行ってもらえることを伝えておこう。


『サラ、あそこが教えてもらった宿かな?』


暗い街中、明りがつき存在を主張している建物を見てフロンが言う。

私は暗闇でよく見えず、魔法を使って建物の看板を確認すると、確かにギルドから勧められた宿の名前だった。

「アルベルゴ」という宿という意味を持つ言葉そのままに名づけられている為に、かなりわかりやすい。


私はやっと体を休めることが出来ると躊躇なく宿へと足を踏み入れた。

中に入るとまるで高そうな見た目のエントランスホールを、小さなシャンデリアが明るく照らしている。

流石に深夜ということもあり人の姿が見えなかったが、宿に入り扉が完全にしまったところで奥から人が現れた。


ギルドから紹介してもらったはいいが、いったいどれくらいの金額をするのか。

私はそわそわしながらも受付の人に利用数と、食事の有無を告げると金額を提示された。


「一泊で七千オーレとなります」


なんと激安だった。

いや、マーオ町ならこの半額といった金額となるからかなり安いという金額ではない。


それでも王都に立地して、この高級そうな見た目の建物と考えると激安だと思えてします。

だって隣町に泊った宿は一泊一万オーレしたんだから。

勿論朝食付きという違いはあるけど、それでも高い。


私が驚いていると、私のような反応は当たり前なのか、「ギルドとは提携しておりまして、冒険者の方には特別価格で提供させていただいているんですよ」と教えてくれた。


なるほど納得。

というかそういう割引とかあるならもっと早く知りたかったと思ってしまう程だ。


私は宿の方から鍵となるカードを受け取ると、部屋へと向かった。

実家の自室程の空間に、シャワーとトイレが設置されているような部屋だ。

寝泊り、ということを重要視しているのか実家にあるベッドよりも倍大きいサイズの為に、部屋の半分をベッドが占めていたために、机と椅子がこじんまりと置かれている印象を受ける。


「ふわぁ~…、流石に疲れた……」


『本当だよ。僕が寝てっていっても全然サラ寝なかったんだからね!』


ほら、もう寝て!シャワーは起きたら浴びればいいよ。と私をベッドに押しやったフロンが布団を口にくわえてふわりとかける。


「フロンも疲れたでしょ。聖域に戻って休んで」


『サラの魔力を使ってただけだから全然疲れてないよ。それより早く目を瞑って。人間はちゃんと休まないといけないんだからね』


まるでお母さんやお父さんの様だと、私はくすりと笑い目を閉じた。

ふかふかなベッドということもあるけど、町から王都までほぼ休みなく移動してきたことから、すぐにやってくる睡魔に意識を任せて、私は夢の世界へ旅立った。







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