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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
181/253

38 実力確認




私は声を漏らしながら笑ってしまっていた。


(まったく、誰に言っているのか…)


この半年間、私は確かにランクを上げるために主に行動してきた。

机に向かってポーション作成の時間が多かった気がすると自分でも感じるほどに。

それでも私は学生の頃に日課となったトレーニングは欠かしていなかったし、なにより私の傍には魔法の大先生がいるのだ。

魔力が少ないといいながらも、効率よく色々な魔法を使いこなす私のお母さん。

お母さんの手が空いている隙間時間に、よく私は自分の魔法を見てもらっていた。

だから私は学生の頃に比べて、効率よく魔法を、結構色々出来るようになったつもりでいるのだ。


「レルリラ!その目見開いてよく見ておきなさい!」


ギルド長は剣の形を作り出した以外魔法は使っていなかったから、私はそんなギルド長に魔法で攻撃するのを躊躇していた。

だけどギルド長は魔法を使わなくても十分に強い。

私が勝てるかわからないくらい強いのだ。

そんなギルド長に魔法で戦うのを躊躇していただなんて……自分で自分を過信評価しすぎだった。


私はまた一歩踏み出したギルド長の足元に氷を生み出しながらも後退した。

それでギルド長が態勢を崩すとか考えていない。

少しの時間でもギルド長が攻撃するまでの間が欲しかっただけだ。


そしてやっぱりギルド長は足元に生み出した私の魔法に気付き、空中で体をひねると着地地点を変える。

普通の人なら出来ない動きをギルド長はしたが、私は驚かなかった。

だって剣士に勝てるということは、これくらい“普通”のことだと知っていたから。


私はギルド長が私に与えた少しの時間でギルド長の周りに氷を散りばめさせた。

ギルド長は立ち止まると自分を囲む氷を見て笑みを浮かべる。


「まさか、これくらいで俺を足止めさせようとか思ってねーだろうな?」


ニヤリと笑われながら告げられる言葉にゾクリとしながらも、私は「やってみないとわからないですよ」と答えた。

そして指を鳴らして生み出した氷たちをギルド長に向かって放つ。

ドドドドドと音がしたけど、それはギルド長に当たらずに地面に突き刺さった氷たちの音だ。

ギルド長に当たるはずだった私の氷はやっぱりギルド長の剣捌きに粉々に砕かれていた。

それでも私は諦めない。

大量の氷をギルド長に放ちながら魔法を使い続けていた。

砕かれた氷はキラキラと宙に舞い、地面に突き刺さった氷たちは土煙を上げる。

時間が経てば経つほど、ギルド長の姿は見えなくなっていく。

同時に展開していた探知魔法でギルド長が移動していない事は把握していた。


そして私は魔法をとめる。

私の魔法が“成功”したことを確信したからだ。


魔法を止めたことで、もくもくと上がっていた土煙はすぐに収まった。

そしてギルド長の体に巻き付いた氷の糸で身動きを封じられている姿がよくわかる。


「動けねぇ」


そう口にしたギルド長は手のひらを見せて、ひらひらと動かしていた。

その手にはもう剣は握られていない。


その瞬間ワァ!と声が上がった。


相手がギルド長であることから一瞬たりともギルド長から目を離さないでいたから、ギャラリーがこんなにも集まっているとは気付いていなかった私は慌ててアラさんの元に駆け寄った。


「あの、アラさんこれは…」


「あれだけ大きな音を立てていたら、皆気になって様子を見に来るに決まっているじゃない。

それよりお疲れ様」


私はアラさんに頭を撫でられた。

よしよしと、まるで子供を褒めるかのように扱われていたけど、でも相手がアラさんだからなのか嬉しい気持ちになる。

そして同時にギルド長に勝ったんだという実感がわいてくる。

とはいってもギルド長は魔法を使っていなく、明らかに手加減されていたけど、それでも憧れの人に近づけたという感覚が嬉しかった。


あの氷の糸はお母さんから教えてもらった魔法だ。

高密度で魔力を込めているために、ちょっとやそっとじゃ切れない。


「…これでサラはAランクに昇級が認められるのですか?」


レルリラが座っていた椅子から立ち上がりアラさんに尋ねた。

よく見ると椅子がない。あれ、どこやったんだ?

私がレルリラの背後に気をとられていると、アラさんは微笑みを崩さずにレルリラに答える。

それがまた衝撃的で、私もレルリラも固まってしまった。


「なりませんね」


「「え?」」


「ですから、昇級試験は別にありますのでランクは上がりません」


笑顔のアラさんに私はポカンとする。

レルリラも同様の反応を見せていた。


「ごめんね、サラちゃん。さっきのはギルド長が勝手に始めたことなだけで試験内容ではないの」


「え、と…じゃあさっきのはなんだったんですか?」


「私がサラちゃんのことを気にしていたから、ギルド長がサラちゃんの実力を皆に示すために勝手に始めたことよ。

でもお陰でサラちゃんがランクを上げても、この町にいる冒険者はサラちゃんを認めるしかなくなるわ。だってギルド長に勝ったんだから」


アラさんが花が咲くような笑みを浮かべなら私に話す。

そんな嬉しそうな表情をされたらなにも言えなくなってしまうけど、でもこれだけは言わせてほしい。


「もう!ちゃんと説明してくださいよ!!!」


そう叫んだ瞬間、「そろそろ解いてくれぇ」というギルド長の声が聞こえてきたけど、私は無視してアラさんと共にギルドに戻る。


ちなみにレルリラは自分も許可を取ってくるといって帰っていった。

……許可もらってなかったんかい!






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