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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
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37 ギルド③



ギルド長の言葉に私はフロンがレルリラに言った言葉を思い出す。


(なんだか嫌だ……)


レルリラが私を利用するわけがないと知っているから、レルリラにそんなことを尋ねるギルド長に私はなんともいえない気持ちになる。

これは、レルリラに申し訳ないって思ってるからだ。

それでも私のことを心配してくれるギルド長には有難いとも思っているから、口を挟まずただ眺めているだけだけど。

でもレルリラにそんなことを聞かないでほしいと思ってしまうのは止められない。


「利用するつもりはありません。私にとってサラは特別な人です」


「っ」


思わずレルリラを凝視してしまう。

こいつなんという小っ恥ずかしい事を言うんだと、レルリラをジト目で見ながらも口角が上がりそうになるのを抑えた。

ちなみにレルリラも恥ずかしいという自覚があるのか耳が赤い。

そんな私とレルリラをみたギルド長が呆れたように、でも口端を上げながら「はいはい」という。


「わかった。だが一つ条件がある。これは嫌がらせでもなんでもない。ただのルールだ」


「…その条件とは?」


「嬢ちゃんのランクだ」


「私の?」


私が首を傾げるとギルド長が頷く。


「お前さんの話を聞く限り、嬢ちゃんの受けたクエストだけに同行するわけではないだろう?嬢ちゃんを利用しないと口にしても、お前さんの所には瘴気の魔物の情報が集まる。そうなったら対応しに行かなければならない。聖水を作れる嬢ちゃんを同行させることによって、国に貢献している理由作りが出来るから、結局のところ嬢ちゃんを瘴気の魔物の元へ連れていくことになるだろう。そうした時、嬢ちゃんは冒険者として活動する為にクエストを受けるという前提が必要になる。じゃないとタダ働きだからな。

そん時はお前さんが嬢ちゃんを指名して依頼をするって形になるんだが、指名依頼はAランク冒険者以上でないと出来ないんだよ」


「え…」


「は?」


ギルド長の言葉に私もレルリラも口をぽかんと開けた。

初耳だからだ。


「だが嬢ちゃんの冒険者ランクはまだCランク。指名依頼は出来ないんだ」


ギルド長が続けていうと、私は隣から突き刺さるような視線を感じる。

でもそんな視線を向けないで欲しい。

私だって知らなかったんだから。


「あ、あのランクをすぐに上げる方法はないんですか?!」


私はたまらず尋ねた。

隣から突き刺さる視線を受けていたら誰だって尋ねたくなるというものだ。

ランク上げの条件には累積報酬額というものや設定されたクエスト数もあるだろうから、楽な道はきっとないとは思いながらも私はどうかあって欲しいと願いながらギルド長の返答を待つ。


そして


「あるぞ」


とあっけらかんとしたギルド長の返答に破顔した。


「本当ですか?!」と喜ぶ私に、元に戻ったアラさんがギルド長の首に手を掛ける。

手を掛けるといっても首を絞めているわけではなく、ギルド長の襟元をひねり上げるといった感じだ。

「ぐぇ、ぐるじい!」と声に出すギルド長にアラさんは目を血走らせる。


「私は!サラちゃんに!変な目に!合わせたく!ないのに!

なんでアナタはこう!勝手なことを!!」


本当に苦しいのか、ギルド長の顔色がどんどん悪くなってきた様子をみて私は思わず立ち上がった。

そしてギルド長の首元を締め上げるアラさんを必死で止める。

ちなみにこの時のレルリラは出された茶をのんびり飲んでいた。


そうして落ち着きを取り戻したアラさんは語った。


どうやら昔、お母さん以外にもエルフ族と人族のハーフの冒険者がいたらしく、ランクと合っていない幼く見える見た目から嫌がらせを受けていたのだとか。

そのハーフのエルフの件もあり、半年余りでCランクに異例のスピードでランクを上げた私が同じ目に合わないか気にかけていたとのことだ。

それなのにギルド長がいくら私本人からの頼みだとしても、正規の方法ではないランク上げの方法を教えようとしていたためにあのような暴挙に出たらしい。


……うん。アラさんの気持ちはうれしいけど私としては一刻も早くランクを上げたい。

アラさんだって前に私はAランク相当だっていっていたもの。


「……要は舐められなきゃいいんだろ?」


ギルド長の言葉にアラさんは同意した。

そしてすぐにギルド長の顔を見る。


「ちょ、まさかっ…」


アラさんの言葉を打ち消すかのように強い突風が部屋の中に沸き起こる。

私はレルリラの後に続く形で防御結界を張った。


部屋が殺風景なのは今この時のようにギルド長の魔法が発動しても、片付けに手間を掛けないためなのだろうと私は知る。


「…ったくもう!」


風が吹き上げる室内の中アラさんが粗々しく髪の毛をかきあげた。

そんなアラさんを見てなのか、ギルド長は言った。


「…俺と戦ったら誰にも舐められねーぞ」


にやりと口端を上げるギルド長。

アラさんは床に大きな魔法陣を描くと、私とレルリラ、そしてギルド長の四人を転移させた。






転移先はギルドの裏側。

私が幼少期によく遊んでいた場所だ。

広くて平らな平原は子供たちの格好の遊び場だったから。

そんな平原に私はギルド長と向かい合う。


「程々にしなさいよ!」


「おうよ!」


ギルド長に砕けた口調で話したアラさんにギルド長は手を挙げて答えた。

そして風の魔法で作ったと思われる半透明の剣を手にすると、一歩踏み込んだ。

だけどその一歩は力強く、草が生えていた場所は土が見えるほどに抉られ、二十メートルは離れていたはずのギルド長が目の前に迫っていた。


私は咄嗟に防御魔法を発動した。

ギルド長の剣は氷の壁に遮られ私まで届かなかったが、それでも氷にヒビが入っていることを確認した瞬間、後ろに飛び退いた。


(力強っ!)


私は身体強化の魔法を足にかけてギルド長から距離を取る。


「ちょっと!どういうことですか!?」


私とギルド長を離れた場所で見ているアラさんに私は問いかけた。

するとちゃっかりアラさんの隣にいたレルリラも見えて、私は一瞬自分の目を疑った。

だってレルリラは、いつの間にかローブを羽織っているし、どこから取り出したのか分からない椅子に腰掛け、まるで監督のように腕を組んでいるではないか。


「よそ見とは余裕だな!」


ギルド長の言葉に私は二人から視線を戻した。

先ほどと同じように氷の防御壁を発動してギルド長の剣を防ぐ。

ただ一撃ごとに氷の防御壁はヒビが入るために、何度も作り直す必要があった。

そしてギルド長の踏み込みは力強く、その場に踏みとどまろうとするが容易に押されてしまう。


(…やっぱり強い!)


私はふと思い出す。

以前アラさんが言っていた言葉。

リーダーは魔法を使わなくても剣士に勝っていた。というものだ。


リーダーとはギルド長のこと、そして剣士とは、騎士科の人のように剣の高みを目指して到達した者のことを言う言葉。


「サラ!」


そんな時、レルリラの張り上げる声が聞こえた。


「この半年間魔法使いとして衰えていたわけじゃないんだろう!?」




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