24 念願の食材②
「サラちゃん凄いよ!あんな魔法みたことない!!」
アレグレンさんは私に駆け寄ると興奮した様子でそういった。
余程興奮したのか距離感がおかしいアレグレンさんに、私は一歩二歩と後退していると、間にフロンが割り込んだ。
『サラにとってあれくらいは余裕だよ』
(余裕ではなかったけどね)
魔力的な感覚で言うと確かにフロンの言った通り余裕ではあったが、水刃の魔法陣を一つ一つ描くことは同時発動と同じ意味になるから、あれだけの量を発動するのは結構辛いものがある。
それじゃあなぜやったのかというと、棒立ちで戦っている二人を眺めているのが嫌だったからだ。
私だって冒険者だと、それを主張したいと思ってしまった。
悪く言えば目立ちたがり屋だけど、二人には私だって出来るんだぞということを知ってもらいたかったから良いのだ。
だって一時的とはいえパーティーメンバーなんだから。
そして私が凍らせたキラービーの巣を回収したルファーさんは「とりあえず俺が持っておく」といって鞄にしまう。
すぐに味見をしてみたかったけど、凍らせてしまっているからね。
しょうがない。
「それにしてもなんでサラがCランクなのかわからない」
ルファーさんが不思議そうに言った。
「確かにそうだね。見た目で言うとたぶん俺たちとそんな変わらないでしょ?
でもかなりの実力なんだからもっとランクが上がっていてもおかしくないのに」
ちなみに俺たちは十八だよ。と答えるアレグレンさんに、私の二つ上だったことを知った。
それでも二歳差なんだからもっと気軽に話してよというアレグレンさんの言葉に甘えて、私は敬語をとる。
「私、ついこの間まで学園に通っていて、半年前に冒険者登録したばかりなの」
「半年前!?てか半年でCランクになれるもんなの!?」
「うん。ポーションの買取って意外とお金になるから、それで累積報酬額を稼いだって感じかな?
あとはランク上げに必要なクエストを受けられればすぐに上がったよ」
私がそういうとアレグレンさんとルファーさんは「そんな手があったのか…」と驚いていた。
私もアラさんに教えてもらった方法だからね。
「それよりこれからどうするの?また上空から確認する?」
私がアレグレンさん達に今後の捜査方法を尋ねると、ルファーさんが少し考えた後「このまま地上を歩こう」と告げる。
「なんでだよ?空からなら早く終わるし、俺の視力ならよく見れるぞ?」
そういったアレグレンさんにルファーさんがため息をつく。
「霊獣に乗ってるからといって俺の魔力が消費していることを忘れるなよ。
それにさっき上から見て気付いたことなんだが、ここからずっと南に言った先に鳥の群れのようなものが見えた。
異変の捜査ならその場所を確認した方がいいと思う」
「ならまた空から確認すれば…」
「視力がいいって言っても近づかないとみれないだろうが。
それにもしその鳥が魔物で、遮蔽物も何もない場所から俺たちが見ていたことに気付かれたら、物凄い勢いで襲ってくるだろ。
流石に逃げ切る魔力なんて残らないぞ」
ルファーさんがそういって地上を歩くことを説得すると、私達は南へと向かう。
私の望遠魔法で確認するといったのだが、遠くからみただけでは数の詳細までわからないままだといわれてしまえばルファーさんの言う通りにするしかなかった。
王都から南の場所にあるマーオ町だけど、更に南には森を挟んだところに辺境の大きな町があるのだ。
いったことがないけど、とても大きな町だと聞いたことがある。
二百メートル程歩いたところで私はふと上を見上げた。
本当になんとなくだ。
理由なんてない。
もし無理やり理由をつけるとするならば、代り映えのない森の光景を一度空を見上げたくなったのだと思う。
だけど私の行動は寧ろよかったのかもしれない。
木の高い位置から黒い瞳で私達を見下ろすヴァルチャーという鳥の魔物がいたのだ。
「キェェェェエエェェェ!」
ガラガラとした声で鳴いたヴァルチャーは止まっていた木から飛び降りて、そのまま南下する。
流石というかなんというか、かなり速度が速い。
私は急いでフロンに跨りながら後を追うと、ルファーさんとアレグレンさんも付いてくる。
ぶつからない様に木を避けながらヴァルチャーの後を追う私に呼びかけるようにアレグレンさんの声が聞こえた。
振り返ると追いかけたばかりの頃よりも、かなり差が開いている。
私はすぐに速度を緩めてルファーさん達が乗っている霊獣の隣にフロンを付けた。
「どうしたんです!?」
「だめだ!これ以上はルファーの魔力が持たない!」
焦ったように話すアレグレンさんに私は少し考えた後、フロンから飛び降りた。
そして二人にフロンの背に乗るように促す。
ちなみに飛び降りる前にちゃんと強化魔法を体全体に駆けているから、怪我もなく、そして飛ぶフロンの横も容易に走って追いつけている。
「それじゃあサラちゃんが…!」
心配するアレグレンさんと、汗を流しながら必死で霊獣に魔力を送り込むルファーさんに私は告げる。
「私魔力も体力も多い方なんで。まだまだ平気なの」
二ッと笑ってそういうと「いったい何者なんだ?」と言われたけれど、普通にオーレ学園卒業生で普通の冒険者だ。今はまだ。
「早くフロンに乗って!このままだとヴァルチャーにドンドン差をつけられてしまう!」
私は二人に焦った口調でそういうと二人はフロンの体に飛び乗った。
二人が乗れるほどに体を大きくしていたこともあって、二人が地面に落ちることはなかったけどそれでも顔色が少しだけよくない。
「フロン、速度上げていいからね」
『うん!わかった!』
私がフロンに伝えると、フロンは乗っている二人に遠慮なく速度を速めた。




