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恋愛初心者の恋の行方  作者: あお
冒険者編①
166/253

22 期間限定のパーティーメンバー




【まず、突然だが今後の方針をいくつか決めさせてもらった。

一つ、実力に見合っていないクエストの受注は今後ギルド側の判断に基づき拒否できるものとする。

二つ、EFランクにおいては町の中でのみのクエスト受注とする。

三つ、パーティーメンバーは三人以上。

四つ、ソロ活動の禁止】


ギルドマスターの言葉にご飯を食べていた人たちは一斉に反論する。

中には御飯が喉につまり、近くにいた人に背中をさすってもらったりしていたが、それでもその目には戸惑いと混乱、そして反発の色が見えていた。

勿論私も反論する人達の中の一人だった。

四つ目にあげられていたソロ活動の禁止ということは、私の今後の冒険者活動に支障が出過ぎるというものだから。


【あーあー、話はまだ終わっていないが、どうしてこのようなことを決めたかを説明させてもらおう】


一斉にギルドマスターを囲んだ私達に、ギルドマスターは結界を張って距離を保つ。

それでもワーワーギャーギャー騒ぐ私達に何故このようなことを決めたのか、その説明をすると場を鎮めようとしていた。


ギルドマスターはすぅと息を吸って、更に結界の範囲を広げると話し出す。


【まず第一にスタンピート…とまではいかなかったが、それでも多数の魔物の襲撃がこのマーオ町にあった。討伐は済んだがいつまた同じようなことが起こるかわからないからこそ、ギルドでなんらかの対策が必要不可欠だと判断したことが前提だ】


ギルドマスターは一度そこで話を止める。

冒険者側は「それはわかるが…、だがだからといって制約を課すことは違うだろう」といった様子だ。

気持ちでは納得していても、頭では納得できない。

そんなところだろう。

私も、私達の安全を考えてくれるのはわかるけど、今後の活動に大きな影響が出るとなったら心から賛同できないもの。


【第二に、近頃黒い靄、いわゆる瘴気を纏った魔物が見られるという目撃情報が他地域から聞こえるようになったことは知っている者もいるだろう。

既に他の地域のギルドではソロ活動の禁止を冒険者に下しているところも多い。我がギルドでも同様の対策をとることで、冒険者の安全性を高めることにした】


続けて話されたギルドマスターの話にほとんどの人は首を傾げていた。

ほとんど、に当たる部分の人たちはマーオ町を拠点に活動している人達だ。

瘴気の魔物という言葉を口にし、不思議そうにしていることから学生時代の私と同様に、聖女の話はお伽話と思っているのだろう。

だけど瘴気の魔物の話を知っている人もこの場にはいて、不思議そうにしている者たちにどういう魔物かを説明していた。

説明の中には必ず、聖水がなければ決して倒せない魔物、という言葉が聞こえてくる。

「それは…確かにヤバいな…」「倒せないとなれば…ギルドマスターが決めたのもわかる気がしてきた…」「いやだが、」「お前は一人で倒せない魔物と遭遇したらどうするんだよ!」

渋る者、説得する者に別れ、時間が経つごとに説得する者が増えていく。

そして殆どの人たちがギルドマスターに賛同するようになった。

でも心から思ってはいないだろう。早く元の形に戻ってほしい、そう願う人が多くない筈だ。

私のようにね!










そして私は大きくため息をついた。

はぁぁぁぁああぁぁ、と盛大に。


マーオ町のギルドの方針として今後のソロ活動の禁止があげられたことで、マーオ町での私の冒険者活動はかなりお先真っ暗だ。

亜空間鞄が手に入った今すぐにでも出発してもいいが、せめて安全をこの目で確かめてから出発したいというものだ。

お父さんには色々いわれるかもしれないけど、でも子供として親の安全を確かめてから出発したいと思う気持ちは普通のことだと思う。

二、三日、いや一週間は様子を見たかった私としては、このギルドの方針はかなり困ったものだった。


そんな私の前に現れたのは二人の男性だ。


一人はくるくるとパーマをかけているのか、それとも自然にそうなってしまうのかわからないがピンク髪で少し軽薄そうな見た目の男性と、短く切り揃えられた金髪に切れ長な瞳を持つクールそうな男性。


「ねぇ、君もさっきの話を聞いて困っている感じ?」


「え……」


私は戸惑った。

急に話しかけられたこともそうだったが、知っている顔が多いマーオ町で初めて見る人達だからだ。


「ああ、いきなりごめんね。俺はアレグレン。ついさっきこの町に着いたばかりでさ、クエストを受けようかなと思っていたらさっきの話をしてて、どうしようかなって思っていたんだよ」


ピンク髪の男性、アレグレンさんはそう言って肩をすくめた。

私はアレグレンさんの少し後ろにいる男性に目を向けると、その人もコクリと頷く。


「ルファーだ。俺たちはCランクになった時から旅をして今はBランクだ。各町や村に訪問し、自分たちで決めた日数だけ滞在する。

だから冒険者の観光客とでも思ってくれたら助かる」


ルファーさんはそう言った切り口を閉ざした。

レルリラもリクスもそうだけど、クールキャラって意外と多いんだろうか。


「そうそう!でも滞在するって言っても稼ぎは必要でしょ?今晩の宿代を稼ごうとクエストを受けようと思ったら三人以上とかいっててさ、俺たち二人だからあと一人いないと稼ぎのいいクエストなんて受注すら出来ないって困っていたんだ。

そんな時に君の大きなため息が聞こえてきた!一時的にはなるけど俺たちと行動してくれないかなって思って声を掛けたんだ!」


ニコニコと愛嬌溢れる笑顔でそう言ったアレグレンさんに私は目を瞬いた。

信じてもいいのだろうか。と悩んでいると、私の肩に乗っているフロンが言う。


『大丈夫だよ』


「フロン?」


『嘘をつく時に見られる色をしていない。この人たちは真実を言っているんだってことだよ』


「フロン、あなた_」


嘘をついているかどうか見破ることができるのかと、尋ねようとしたところでそれはかき消された。


「え!?霊獣と契約してんの!?うわ!羨ましい!!」


キラキラさせた目をフロンに向けるアレグレンさんは私に「どこで出会ったの?」と尋ねる。

今のアレグレンさんの様子と、呆れたようなルファーさんの様子、そしてさっき話してくれたフロンの言葉を合わせて、私はアレグレンさんの提案に乗ってもいいかと考えた。


私は二人に手を伸ばした。


「私はサラ・ハールといいます。今までソロで稼働していて、アレグレンさんの言う通り突然の方針に困っていたところです。

お二人の滞在中という期間だけですが、組んでいただけると嬉しいです」


アレグレンさんはフロンに向けていたキラキラを一旦やめ、ルファーさんに顔を向ける。

ルファーさんが小さく微笑んだ後、「やったぁ!!!!」とまるで子供のように声を上げた。





私はこうして期間限定とはいえ、パーティーメンバーが出来ました。




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